バッテリーは最大624kWh スカニアが開発中の電動トレーラー ノルウェーで試乗 後編
驚くほど簡単に発進できる電動のスカニア
今回、ノルウェーで試乗したのは、バッテリー・エレクトリック・トラック(BET)。スカニアが開発を進める中距離用のトレーラーヘッドだ。
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1990年代のクルマで青春時代を過ごした筆者にとって、プラスティック製のボタンとノブがダッシュボードに整列する様子は心が安らぐ。殆どの機能を網羅した、巨大なタッチモニターやタッチセンサーは存在しない。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド
これで良いと思う。うっかりすれば家をなぎ倒すほどの重量物を運搬する、トラックドライバーの気を散らすような装備は必要ない。主要な操作系は至ってシンプル。一般的な乗用車と大きな違いはない。
「通常はハンドブレーキが備わりますが、このモデルの場合は自動で効きます。まず、ミラーの角度が正しいか確認してください。ステアリングコラムのシフトセレクターをDに倒せば、発進準備は終了です」。スタッフのデニス氏が丁寧に教えてくれる。
これほど簡単だとは想像していなかった。エア圧で動作するブレーキの「プシャッ」というノイズとともに、巨大なスカニアは進み始める。
運転しているのは、2列並ぶリアアクスルの前側だけ、後1軸駆動のトラックで、スタッドレスタイヤを履いていてもトラクションが充分ではない。発進時には太いトルクが余ってしまう。5km/h程度になると、安定性が一気に高まる。
ディーゼルエンジンより遥かに運転しやすい
アクセルペダルのレスポンスは、想像通り極めておおらか。トラクションコントロールが備わっていて、圧雪路面でも問題なく走れる。
運転しているトレーラートラック全体の重量は、20tもある。滑りやすい路面では、僅かな速度超過でも大きな結果を導いてしまう。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッドを運転する筆者
曲がりのきついカーブでは、ライン選びが非常に重要。トレーラーの最後尾のタイヤが、内輪差で内側に巻き込まれていく。これを巧みに操るのは、ちょっとした曲芸だろう。
下り坂のカーブでは、アンダーステアでトレーラーヘッドが外側へ膨らむ。タイヤへ展開されるパワーとのバランスが悪くても、狙った通りのラインを走ることが難しくなる。
車線の幅に関係なく、運転中はミラーも頻繁に確認しなくてはならない。通常のトラック以上に。前方を確認することと同じくらい、後方の確認も重要だと体感する。
トリプルモーターのパワートレインは、ディーゼル・ターボエンジンより遥かに運転しやすい。太いトルクが、必要に応じて滑らかに生み出される。トランスミッションは、従来より遥かに段数が少ない6速オートマティックだ。
V8エンジンに14速ATを搭載したトラックにも試乗させてもらったが、変速が繰り返されることで、前進すら簡単には思えなかった。細かく加速が途切れるような印象だ。BETは、それを感じさせずに速度を高めていく。
能力に優れる電動トラック 普及への課題は多い
筆者へ許された試乗時間は、1度に15分間。2度目もトライして、スカニアのトレーラーヘッドとお別れした。
除雪でできた雪の壁へは、最後まで突っ込むことはなかった。速度域は低かったものの、驚くほど自信を持って操ることができた。難解なバックでの駐車は試していないが。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド
正直なところ、筆者はBETの普及に対して余り楽観視はしていない。スカニアの担当技術者が説明するように、600Lの軽油タンクを積んだ従来のモデルと同様の航続距離を、BETも実現できるかもしれない。だが、それだけではない。
そのBETを走らせるには、欧州全土のトラックストップなどに、強力なメガワット級の急速充電器を何基も設置する必要がある。ところが、BEV用の急速充電器ですら設置に手間取っているというのが現状だ。必要とされる電力量も桁違いに大きい。
加えて長距離トラックの場合は特に、稼働時間が収益へ直結する。45分の充電で320km程度の航続距離は、充分とはいえないだろう。車両コストも重要になる。スカニアのBETは、同等のディーゼルエンジン・モデルの2倍以上の価格になるという。
一方で、世界は着実に電動化への準備を進めていることも実際ではある。スカニアは、未来を見据えた次世代トラックの準備へ取り組んでいる。少なくとも、優れた能力を得るであろうことは、今回の試乗で確かめられたといえる。
