100万ドルの輝き アストン マーティンDB5 メルセデス・ベンツ300SL フェラーリ275GTB 3台を乗り比べ 後編
同社唯一のトランスアクスル・レイアウト
フェラーリ275GTBに備わる2脚のシートは、横方向にも身体を支えてくれるバケットタイプ。黄色いベースに黒い跳ね馬が描かれたセンターボスで彩られた、ウッドリムのステアリングホイールも握りやすい。前方には長いボンネットが広がる。
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後ろを振り返ると、控えめなパーセルシェルフが用意されている。ボディ後方の荷室は、スペアタイヤとツールキットで大部分が埋まっている。

フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)
外からは見えない部分こそ、275GTB最大の魅力。独立懸架式のリア・サスペンションを採用したフェラーリ初の量産モデルで、3.3L V型12気筒エンジンの重量バランスを改善するため、トランスアクスル・レイアウトを採用した同社唯一のモデルでもある。
エンジンは、3基のウェーバー・キャブレターによって燃料が送られ、最高出力は280psを発揮する。だが、アストン マーティンDB5の286psには僅かに届かない。最大トルクでも、メルセデス・ベンツ300SLを超えてはいない。
動力性能を向上させるため、フェラーリは1966年にアップデート版の275GTB/4を投入。ダブル・オーバーヘッド・カムを採用し、ウェーバー・キャブレターを6基に増やし、20psを上乗せした。
今回のシングル・オーバーヘッド・カムでも、印象は素晴らしい。シンフォニックなサウンドが心を震わせ、特別なモデルであることを強く訴えかけてくる。
最高峰のサウンドトラックに包まれる
クラシカルなオープンゲートから伸びるシフトレバーはやや重く、大きなフェラーリを運転している実感が湧く。ペダルレイアウトは完璧で、ヒール&トウしやすい。エンジンは粘り強く扱いやすい。
必要に応じて、低回転域でも構わずボディを進めてくれる。それでも、イタリアン・サラブレッドとして、熱意的に扱われることを好むようだ。

フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)
アクセルペダルを蹴飛ばせば、自動車として最高峰のサウンドに一帯が包まれる。そのさなか、レッドライン目掛けてパワーはひたすらに高まっていく。
ステアリングのレシオは、予想に反してスロー。ステアリングホイールをそのぶん回せば、意欲的に、驚くほど正確に向きを変えていく。
独立懸架式のリア・サスペンションと、当時のパターンを継承するミシュランXWXタイヤが、サーキットのアスファルトを確実に捉える。280psを不安感なく展開でき、自信を持って本域に迫れる。
一般道を走っている限り、DB5と275GTBの印象に明確な違いはなかった。英国かイタリアの一般道を、他車よりハイスピードで駆け抜けるために開発されている。
ところがサーキットへ足を踏み入れると、コーナリングでは275GTBが遥かに優れていると実感する。200kg以上軽い車重と、高回転域まで許容するエンジンが、扱いやすさを大幅に高めているようだ。
ただし、安心感が高い反面、軽快感は今ひとつ。身のこなしにも、どこか鈍いような印象が残ったことは事実だ。
最も強い光を放つスリーポインテッド・スター
超が付くほど高価なクラシックカー、3台を乗り比べた今回。もし100万ドル(約1億3000万円)を自由に使えるカーマニアだとしたら、どの1台を選ぶだろうか。
アストン マーティンDB5は、英国の高速道路が整う前に誕生したグランドツアラーだ。グレートブリテン島に広がる片側1車線の一般道を、高速で走るために開発されている。うねるような道は、動的能力を高めるのに最適な場所といえた。

手前からメルセデス・ベンツ300SL、アストン マーティンDB5、フェラーリ275GTB
フェラーリ275GTBは、よりパワフルで野性味に溢れる。サーキットとの相性は良好だが、公道でも積極的な走りが自ずと求められる。
メルセデス・ベンツ300SLがサーキットで有能なことは、レーシングカーとして誕生したことを考えれば不思議ではない。それでいて10年ほど後に生まれた2台と、一般道でも見事に肩を並べている。
新車当時、自動車雑誌のロード&トラック誌は、「これが未来のスポーツカー」だと表現した。現在でも、その強い個性は変わらない。300SLは、今も昔も完璧といえるかもしれない。
これ以上に妖艶なスタイリングを持つモデルを、筆者は想像できない。ひとたびステアリングホイールを握れば、視覚的な感動以上の、劇場的な体験でドライバーを満たしてくれる。ある程度の技術は求められるけれど。
3台とも、輝かしいクラシックカーではある。それでも最も強い光を放つのは、ドイツの スリーポインテッド・スターだと感じた。
撮影:Luuk van Kaathoven(ルーク・ヴァン・カートーベン)/Onno Blaauw(オンノ・ブラウ)
アストン マーティンDB5 メルセデス・ベンツ300SL フェラーリ275GTB 3台のスペックアストン マーティンDB5(1963〜1965年/英国仕様)
英国価格:4048ポンド(新車時)/100万ポンド(約1億6000万円)以下(現在)
販売台数:1059台(コンバーチブル123台を含む)
全長:4570mm
全幅:1676mm
全高:1346mm
最高速度:228km/h
0-97km/h加速:8.1秒
燃費:5.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1468kg
パワートレイン:直列6気筒3995cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:286ps/5500rpm
最大トルク:38.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル
メルセデス・ベンツ300SL(1954〜1957年/欧州仕様)
英国価格:4393ポンド(新車時)/150万ポンド(約2億4000万円)以下(現在)
販売台数:1400台
全長:4572mm
全幅:1791mm
全高:1302mm
最高速度:247km/h
0-97km/h加速:8.8秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1295kg
パワートレイン:直列6気筒2996cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:240ps/6100rpm
最大トルク:29.9kg-m/4800rpm
ギアボックス:4速マニュアル
フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)

フェラーリ275GTB(1964〜1968年/欧州仕様)
英国価格:5590ポンド(新車時)/200万ポンド(約3億2000万円)以下(現在)
販売台数:約450台
全長:4325mm
全幅:1725mm
全高:1245mm
最高速度:257km/h
0-97km/h加速:6.0秒
燃費:4.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:1240kg
パワートレイン:V型12気筒3285cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/7600rpm
最大トルク:29.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル
