男性の精子は人間が子どもを作る上で必要不可欠ですが、近年は精液に含まれる精子の数が減少していることが知られています。新たに、世界53カ国で1973年〜2018年に収集された精液データを統合・分析したメタアナリシスから、全世界で男性の精子数が過去40年間に半減したことが判明しました。

Temporal trends in sperm count: a systematic review and meta-regression analysis of samples collected globally in the 20th and 21st centuries | Human Reproduction Update | Oxford Academic

https://doi.org/10.1093/humupd/dmac035

Sperm count is declining at accelerating rate worldwide: study

https://www.france24.com/en/live-news/20221115-sperm-count-is-declining-at-accelerating-rate-worldwide-study

2017年、イスラエル・ヘブライ大学の公衆衛生医であるHagai Levine氏らの研究チームは、北アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリア・ニュージーランドで暮らす男性の精液の濃度が、約40年間で大幅に減少していたという研究結果を発表しました。この研究は、1973年〜2011年に収集された185件の研究データを分析したものでしたが、南アメリカ・中央アメリカ・アジア・アフリカ諸国のデータが少なかったため、これらの地域でも同様の傾向があると推定することはできませんでした。

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そこでLevine氏は、2014年〜2019年に発表された論文について全体的なレビューを行い、男性の精子数に関するデータを含むものを抽出し、以前の研究に用いたデータと統合して新たなメタアナリシスを実施しました。

今回のメタアナリシスに使用された合計288件のデータは、1973年〜2018年にかけて5万7168人の男性が提供した精液サンプルに基づいています。全データのうち199件が北アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアの男性から収集したもので、89件が南アメリカ・中央アメリカ・アジア・アフリカの男性から収集したものだったとのこと。

分析の結果、不妊でないとされている男性の精子数は、1973年〜2018年にかけて精液1ミリリットルあたり1億120万個から4900万個まで51%以上減少しており、年間の減少ペースは約1.1%であることが判明。また、世界的な精子数の減少ペースは21世紀に入って加速していると研究チームは報告しています。

なお、精子の数だけが生殖能力に影響を及ぼすわけではなく、精子の運動能力も生殖能力を左右する要因だと海外メディアのAFP通信は指摘しています。また、精液1ミリリットルあたり4900万個という数値は、世界保健機関(WHO)が「正常」と見なす下限基準値の精液1ミリリットルあたり1600万個を上回っています。

今回の研究に関与していないスコットランドのダンディー大学の不妊専門医であるサラ・マーティンズ・ダ・シルバ氏は、男性の精子数の減少ペースは2000年以降に2倍となったことが示されたものの、その理由については明らかになっていないと指摘。「汚染物質・プラスチック・喫煙・薬物・肥満・貧しい食生活などの生活習慣が要因であることが示唆されていますが、その影響は十分に理解されておらず、定義も曖昧です」と述べています。

一方、同じく研究に関与しなかったイングランドのシェフィールド大学の男性病学教授であるアラン・ペイシー氏は、「非常にエレガントなメタアナリシス」と研究を称賛しつつも、古いデータの質が低い可能性があるという懸念を示しています。この懸念に対してダ・シルバ氏は、「数字と一貫した結果を無視するのは難しいでしょう」と反論しました。