Jリーグ選手・審判へのSNS誹謗中傷 投稿者への法的責任は? 専門家が解説「数百万円請求」の可能性も
Jリーグ選手らに向けられるSNSでの誹謗中傷 法的責任、サッカー界への影響とは
SNS上における誹謗中傷被害はサッカー界でも問題化し、今季のJリーグでは選手だけでなく、その矛先は審判にも向けられた。
相手の社会的評価を低下させる悪質性の高い投稿が見られた場合、刑事上、または民事上の責任を問われる可能性もある。近年続出しているSNS上での誹謗中傷問題に関する法的責任、また、サッカー界への悪影響とは何かを法律の専門家に聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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ピッチ上のプレーや判定を巡って、SNS上では試合後、さまざまな議論が交わされるなかで近年、問題視されているのが選手に対し心ない投稿や度を超えた批判を送りつけられたケースだ。今シーズンで言えば、9月11日のJ1リーグ第29節・横浜F・マリノス対アビスパ福岡の一戦後、福岡DF奈良竜樹へ寄せられた誹謗中傷が最たるものだろう。
この試合の前半、横浜FMのFW西村拓真を負傷交代させるほどの危険タックルを見舞ったことが議論の的に。クラブ側は「意図的ではなかったものの、危険や誤解を生みかねないプレーであり、今後改めてフェアプレーとルール遵守に努めてまいります」と言及するとともに、選手およびその家族に対する誹謗中傷、侮蔑的な投稿が散見されたため、法的措置などを視野に入れ、対処する旨を明かした。
こうした悪質なSNS投稿の矛先は、試合の判定を裁く審判にも向けられている。今年6月に行われたJ1リーグ第17節・柏レイソル対ヴィッセル神戸における試合中のジャッジが議論に発展。佐藤隆治主審に対して、SNSでファン・サポーターが中傷する投稿が確認されている。
そもそも、誹謗中傷とは何か。スポーツにおける法的問題やSNS上の誹謗中傷問題に取り組む山本健太弁護士は、「基本的に、相手の名誉を傷つけたり、侮辱したりすることであり、法的に言えば、例えば、名誉毀損が該当します」と指摘。名誉毀損に当たるかどうかは、一般閲覧者から見て、その投稿が相手の社会的評価を低下させたかどうかが基準になるといい、ネット上などの不確かな情報に流されたうえでの安易な投稿は特に注意が必要だと、山本弁護士は警鐘を鳴らす。
「表現の自由との調整の観点から、相手の社会的評価を低下させれば直ちに法的責任を問われるわけではありません。ただ、よくあることとして、ネット上のデマに流されて、相手の名誉を毀損する投稿をしてしまうことがあり、その場合は、法的責任が認められる可能性は高くなりますので、投稿する際に自分の投稿が、一般閲覧者からみて、相手の社会的評価を低下させるか、また、どのような根拠に基づくものかなどをよく吟味してから、投稿しなければなりません」
SNS上で飛び交った悪質な投稿のうち、内容、頻度、周囲に与える影響などを考慮し、看過できないものに対しては被害者が実際に法的責任を問うための手続きを進める可能性が高い。そして、その投稿が名誉毀損に該当した場合は、刑事上、または民事上の責任を問われる可能性があり「具体的には、名誉棄損罪(刑法230条1項)に該当する場合は、『3年以下の懲役、もしくは禁錮または50万円以下の罰金』に処される可能性があり、また、民事上の損害賠償請求としては、場合によっては数百万円程度の請求を受ける可能性もあります」と、山本弁護士は言う。
誹謗中傷をしてしまう“3タイプ”&SNS投稿による怖さ
山本弁護士によれば、SNS上で誹謗中傷をしてしまう人は、大きく分けて3つに別れるという。「1つは『自分の投稿は正義だ!』という、正義感で書き込んでしまうタイプ。2つ目が怒りに任せて感情のままに書き込んでしまうタイプ。そしてもう1つがこれらの投稿を見て、便乗、野次馬的に書き込んでしまうタイプになります。また、最近ではコロナ禍により、自宅でできるSNSなどが娯楽となる割合が増えたことや、無意識かもしれませんが、自己肯定感を上げる手段として相手のことを誹謗中傷するというケースもあるのではないかと考えられています」
また、SNS投稿による特性として挙げられるのが拡散スピードの速さ、拡散範囲の広さだ。投稿内容は瞬く間に拡散され、また、普段からサッカーに親しんでいる人のみならず、そうでない人からの投稿まで一気に寄せられる。こうした拡散力は、SNSにおける誹謗中傷の怖さの1つ。さらに、ネット上から削除されない限り半永久的に残ってしまい、被害者はいつでもそれらを閲覧できてしまう。これらの理由から、「誹謗中傷を受けた当事者の方は、とても大きな心身のダメージや、恐怖心を抱えることになります」と、山本弁護士は侵害状態の大きさや継続してしまう点への怖さも指摘した。
近年続出しているSNS上での誹謗中傷問題に関して、Jリーグや各クラブは撲滅に力を入れるが安易に解決できるものではない。一方で、選手、スタッフ、さらには関係者への悪質性の高いSNS投稿が目立ってしまうと、サッカー界へのマイナスイメージが拡大しかねない。誹謗中傷が起きる、起きやすい環境にあるという認識が根付いてしまうと、「サッカーの競技者、ファン、さらにはスポンサーなどが、サッカー界から離れていく可能性があり、そうなれば、サッカー界の発展が阻害される可能性もあります」と、山本弁護士は見解を示した。
サッカー界のみならず、スポーツ界全体を見回しても、SNSによる誹謗中傷問題とは切り離せない状態にある。スポーツの本質的価値は、スポーツに関わる人全員が「楽しい」と感じられる点にあること。サッカー界をはじめ、スポーツ界全体が今後、誹謗中傷問題と長く付き合っていくなかで求められることとして、山本弁護士は「自分の行為が、サッカーの価値を下げていないか、サッカーをつまらないと感じさせるものにしていないかという意識をみんなで持つことが大切だと思います。また、チーム、Jリーグ、日本サッカー協会としても、そのための取り組みをより一層進めていただくことが必要なのかもしれません」と説いていた。(FOOTBALL ZONE編集部)
