三井不動産とNTTコムが進めるVR活用戦略 名古屋・久屋大通公園でデジタル新空間創出
「『Hisaya-odori Park』は民間の力を使った再開発として日本最大級のものとなり、多くの方々にご来園いただけた。そのハード面の整備は終わったが、民間の力を使って、さらにご来園いただく方法を考えていた」と話すのは、三井不動産商業施設本部アーバン事業部事業推進グループ主事の鈴木達也氏。
2021年6月3日、三井不動産はNTTコミュニケーションズと連携して、愛知県名古屋市の久屋大通公園の北エリア・テレビ塔エリア「Hisaya-odoriPark」で共同実験を開始した。
久屋大通公園は名古屋を知る人であれば誰もが知る場所だが、以前は「使われない公園になっていた」(鈴木氏)。イベントがある時はいいが、それ以外はただの通行導線としての存在。木々が鬱蒼と茂っており、夜は暗がりの多い場所でもあった。
それを三井不動産は広場空間や店舗を設けることで、通るだけでなく「そこに行きたい」と思える場所にすべく再開発した。
両社は久屋大通公園の再開発段階から、この公園でICTを活用した新しい取り組みができないかを検討、複数の実証実験を進めてきた。
そこに襲ったのがコロナ禍。リアルでなかなか人が集まりにくくなったが「その中で、デジタルを活用して多くの人に知ってもらうことを考えた」(鈴木氏)。
今回の実験では、デジタル空間上にコンピュータグラフィックスのVR(Virtual Reality=仮想現実)で、全長約900㍍に及ぶHisaya-odori Parkを再現した「Hisaya Digital Park」を構築している。
そこには8店舗がバーチャル店舗を出店。実際の店舗を高精度のカメラでパノラマ撮影しており店の雰囲気を楽しめる他、ネットショッピングや、動画視聴などができる。
この仕組みを提案したのがNTTコミュニケーションズ。「元々NTTグループにはICTを活用してデータを収集し、利活用して社会課題を解決するという構想があった。その中にデジタルを活用して顧客体験を豊かにする『Smart Customer Experienc(SmartCX)』という事業があるが、これを課題解決に活用できないか? ということでご提案した」(同社ビジネスソリューション本部西日本営業本部東海支店営業推進グループ担当課長の山澤雄氏)。
この提案を受け、三井不動産としては「新たな商業のあり方をつくることができるのではないか? 」と考えたが、不動産会社としては「リアルの重要性、楽しみを知ってもらいたい」という思いが強かった。
ただ、久屋大通公園が再開発された事実は知られていても、訪れたことがある人は限定的。そこでデジタル空間上でも公園の素晴らしさを知ってもらうことが、リアルへの送客にもつながると考えた。
三井不動産は公園の再開発にあたり、この場所に商業施設「RAYARD Hisaya-odori Park」を開業、約35店舗が軒を連ねている。今回、オンラインで出店したのは、そのうちの8店舗。
例えばアウトドア製品メーカーである「スノーピーク」は、実際に公園で商品を体験できることに強みを持つ。また「天狼院書店」や「Fab Café」は店舗でワークショップを行うことで顧客コミュニティを築いている。「皆さん、自らの強みを打ち出すことができるチャネルが増えるということで反応がよく、ご参加いただけた」(鈴木氏)
前述のように、デジタル空間で買い物ができるようになっているが、今後は「リアルな空間との融合がカギになる」と鈴木氏。リアルとオンライン上で同時にイベントを開催し、相互に送客したり、リアル店舗の店員と顧客がデジタル空間でコミュニケーションをとる、リアルに公園を訪れた時にデジタルを活用して買い物をするなど、「リアルとデジタルが、どちら側からも近くなるようなコンテンツづくりに取り組んでいる」(同)
