長年の不妊治療を経て2人の子の養親に。

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「コロナ禍にあっても、実親さんからの相談はあとを絶ちません。この10年を振り返ってみて、実親さんの赤ちゃんが生まれなかった月は一度もないですから」

そう語るのは、今年設立10周年を迎えた「特定非営利活動法人NPO Babyぽけっと」の会長を務める岡田卓子さん。特別養子縁組をあっせんする民間団体で、子どもを産んでも育てられない親と、望みながらも子どもを授かれない親との橋渡しを行っている。

「特別養子縁組でお子さんを迎えたいという場合、方法は2つ。都道府県が設置する児童相談所に登録するか、うちのような民間事業者に仲介してもらうか。また、その両方に登録することもできます。児童相談所と民間との違いは、子どもの年齢です。当会があっせんするお子さんは、新生児や0歳児がほとんど。それに対し、児童相談所は原則として15歳未満の子どもを対象にしているため、たとえば10歳の養子を受託する場合もあるということです」

【特別養子縁組と普通養子縁組の違い】

普通養子縁組は家の跡継ぎのためが多く、戸籍は「養子」となり実親との縁は切れない。養親と実親、2組の親が存在することになり、扶養や相続関係も二重になる。一方、特別養子縁組は裁判を通して親権は実親から養親に移り、戸籍も「養子」ではなく「子」に移る。

〈目的〉

・特別養子縁組
実親が子どもを育てることが著しく困難な場合に、子どもの福祉を守るため

・普通養子縁組
「家」の存続など、おもに当事者の都合により子どもを迎え入れるため

〈成立〉

・特別養子縁組
裁判所に申し立てを行い、審判の結果、認められた場合

・普通養子縁組
基本的に当事者と親権者間による契約

〈養子の年齢〉

・特別養子縁組
原則、裁判所申し立て時点で15歳未満

・普通養子縁組
制限なし

〈養親の年齢〉

・特別養子縁組
婚姻している夫婦で、一方が25歳以上

・普通養子縁組
成年または婚姻している未成年。成年の場合は未婚でも可

〈実親との関係〉

・特別養子縁組
養親だけが親子の関係となる。養子は養親の姓を名乗る

・普通養子縁組
実親と養親の2組の親を持つ。養子は養親の姓を名乗る

〈戸籍上の続柄〉

・特別養子縁組
養親のみ記載される。書面には「長男」「長女」と記載

・普通養子縁組
実親と養親の両方の名前を記載。書面には「養子」「養女」と記載

〈相続〉

・特別養子縁組
養親のみの扶養義務、相続権を持つ

・普通養子縁組
実親と養親の2組の扶養義務、相続権を持つ

〈離縁〉

・特別養子縁組
原則として離縁はできない。ただし、養親の虐待などがあれば、養子、実親、検査官の請求により離縁できる

・普通養子縁組
養父母または15歳以上の養子の協議でいつでも可能

〈養育試験期間〉

・特別養子縁組
6カ月以上

・普通養子縁組
特になし

〈親権〉

・特別養子縁組
養親に変わる。法律上、実親との縁は切れる

・普通養子縁組
実親のまま

〈身分事項欄〉

・特別養子縁組
養子縁組の記載なし。民法817条の2と記載される

・普通養子縁組
縁組事項について記載

現在、Babyぽけっとのような養子縁組あっせん事業者(養子縁組あっせん事業許可証があるもの)は、全国に20団体(2020年10月1日現在、厚生労働省調査)。ここ数年は、年間500〜600件前後の縁組が成立しているという。

「当会は年間約50件、これまでには約490人のお子さんの縁組を仲介しました。これも、実親さんの産前産後をサポートする母子寮があること、また、特別養子縁組にご理解くださる病院が年々増えつつあることが要因だと思います」

そうしたBabyぽけっとの実績を知り、駆け込み寺のように養親登録をする夫婦も増えている。

「私たちは、妻の病気で子どもが持てなくなってしまいました。特別養子縁組制度のことは医師から聞いて知りましたが、制度を学ぶ過程で、普通養子縁組とは違って、自分たちの戸籍に実子として迎えられるのがいちばんの魅力だと感じました」(夫、妻ともに35歳の夫婦)

また、つらい不妊治療の末に、養子縁組を選択した夫婦もいる。

「3年半ほど不妊治療を続けるなかで、子どもが流れちゃったりとか、精神的にも金銭的にもゴールが見えない状態で、いったん不妊治療をやめてみようと。それからですね、親による虐待のニュースを見るたび、『私たちだったら、こういう子たちを幸せにしてあげられるんじゃないか』と思い始めて。養子縁組に向けて一歩を踏み出してみると、もっと早く始めていればよかったなと思います」(夫39歳、妻42歳の夫婦)

「女性自身」2020年11月10日号 掲載