マウスウォッシュは口内環境に悪影響? イギリスの研究チームが報告
虫歯や口臭の予防には、歯磨きやデンタルフロスでのケアに加えて、マウスウォッシュが一般的。しかし実は、マウスウォッシュを使うことで、口内環境にダメージを与えるリスクが高まることが、3月に発表された研究で明らかとなりました。マウスウォッシュを使うことで、口のなかで一体どんな変化が起きているのでしょうか?
英プリマス大学健康学部の研究チームは、マウスウォッシュを使うことで口内の環境にどんな変化があるか実験を行いました。36人の健康な人が、まずはプラセボのマウスウォッシュ(つまり純粋な水)で1日2度、1分間口をゆすぐことを7日間継続。8日目以降はクロルヘキシジンを使ったマウスウォッシュを使って同様の作業を同じ期間行い、唾液の細菌やpHなどの口内環境の変化を観察しました。クロルヘキシジン入りのマウスウォッシュは、市販されているマウスウォッシュでも一般的なものです。
その結果、クロルヘキシジンを使ったマウスウォッシュの使用によって、フィルミクテス門(ファーミキューテス)やプロテオバクテリア門といった細菌の量が増え、TM7やフソバクテリウム属などのバクテロイデス門の細菌量が減少したことがわかりました。この細菌の種類の変化は、唾液のpHを下げ酸性に傾くことにつながります。つまり、クロルヘキシジン系マウスウォッシュを使うと口内の細菌叢を変化させ、酸性寄りにさせるということがわかったのです。
以前は、口のなかに存在する細菌は悪いもので病気を引き起こすものだと考えられていました。しかし、腸内細菌や皮膚の常在細菌と同じように、細菌のなかには良い細菌と悪い細菌があり、その多くが人の健康を維持するために必要であることがわかってきています。そのため、マウスウォッシュを使うことで、口内にいる細菌の種類のバランスが変化することでどんな影響があるか、さらなる研究が必要であると、この研究チームは考えています。
ただ、ひとつ言えるのは、マウスウォッシュを使うと唾液のpHが酸性に傾きがちになり、それによって歯や粘膜へのダメージを引き起こしかねないということ。本来、私たちが食べ物を食べたり飲み物を飲んだりすると、口のなかのpHは変化。それを一定に維持するために唾液が働きます。だから唾液自体のpHが変化することは、歯へのダメージリスクが生じている可能性があると言えるのです。
マウスウォッシュを使うと、虫歯菌や歯周病菌以外に、良い働きをする細菌も一緒に減らしてしまう可能性があると指摘している歯科医もいます。マウスウォッシュを使うことで歯へのリスクが生じるとわかった、今回の研究報告。さらなる研究と調査が必要と言われていますが、マウスウォッシュの使用頻度やどんなマウスウォッシュを選ぶべきか、今後は専門家の意見にもっと注目していくべきなのかもしれません。