■レーザーマシン1台に1億円弱かかる

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角膜にレーザーを当てて視力回復を期待する角膜屈折矯正手術、いわゆるレーシック手術は、角膜に直接コンタクトレンズのカーブをつけるようなものだ。

個人差はあれど、成功すれば一定の視力回復が期待される半面、機械が悪かったり、施術者の技術が稚拙であると、網膜に穴が開いて網膜剥離などの合併症が生じることもある。思ったように視力が回復しなかったり、手術後日光に耐えられないほどの痛みを生じたりと、様々な後遺症報告もネット上には上がっている。

そうした影響からか、一時は「奇跡の手術」ともてはやされ、雨後のタケノコのようにレーシックを行うクリニックができたものの、その後急速に失速している。

「私は医者ではないので、医学的にレーシックを判断することはできません。ただ、単純にビジネスとして儲けが出るかどうかという観点から見ていくと、これが結構難しそうだということが見えてきました」(公認会計士・税理士の柴山政行氏)

1回の手術で高額費用を請求できるレーシック手術だが、一番の問題は最初の設備投資が半端なくかかるという点だ。

「歯科医師が開業する際も同様に初期設備投資がかかるのですが、レーシックはそれ以上に高額。レーザーマシン1台に1億円弱かかるんです。どんな商売もそうですが、高額な設備投資は費用回収に時間がかかります。1億円の設備ならおよそ5年から8年で回収しなくてはなりませんが、5年で計算した場合、1年に2000万円は利益を出さなくては儲けが出ない。これはかなり高いハードルです」(同)

レーシック手術費用は様々だが、仮に両目施術で20万円だとしても、1カ月で50件は施術しないと採算が取れないことになる。

■レーシックビジネスには致命的な欠陥がある

もう1つ、レーシックビジネスには致命的な欠陥がある。それはリピーターが出ないことだ。

「そりゃそうですよね、一回の手術で視力が回復するんですから、基本2度目はありません。それが歯医者とは根本的に違うところで、私が新規ビジネスとしてお勧めしない点です。リピーターを期待できないというのは、マーケティングでは決定的な欠陥ですから」

そのうえで、なお「私からアドバイスすることがあれば」と公認会計士・税理士の柴山政行氏はこう続けた。

「レーシック一本のクリニックは早晩立ち行かなくなりますが、一般的な眼科として通常の治療、定期的なメンテナンスでリピーターを確実に確保しつつ、プラスαとしてレーシックで集客することはありでしょう」

そもそも10万円を超える高額商品は、購入の意思決定に時間がかかり、信頼性や知名度を高めるマーケティングにも費用がかかる。その点、すでに地域の信頼を得ていればそのコストも節約できそうだ。

「ただ、最初の話に戻りますが、メガネがここまでファッション性の高いものになった以上、そもそも裸眼にこだわる人も少なくなっているのではないでしょうか。だとすれば、レーシック最大のライバルは、JINSやZoff、あるいはハズキルーペなのかもしれません」

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柴山政行
1965年生まれ。埼玉大学経済学部卒業。税務、コンサルティングの業務に携わりながら、会計教育を行う。『半分売れ残るケーキ屋がなぜ儲かるのか』『サバイバル会計学』など著書多数。
 

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三浦 愛美(みうら・まなみ)
フリーランスライター
1977年、埼玉県生まれ。武蔵大学大学院人文科学研究科欧米文化専攻修士課程修了。構成を手がけた本に『まっくらな中での対話』(茂木健一郎ほか著)などがある。
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(フリーランスライター 三浦 愛美 撮影=横溝浩孝 写真=Getty Images)