日本製の商品は売ったり買ったりしないようにしよう、と呼びかけるソウル市内の小売店(2019年7月5日撮影。写真:YONHAP NEWS/アフロ)


 7月1日、日本は3品目の半導体材料に対する韓国への輸出規制を発動し、韓国経済の急所を狙い撃ちした。突如、強烈な一撃を食らった韓国では「反日」の嵐が巻き起こり、日本製品に対する不買運動が始まっている。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

レクサスのタイヤにピンが

「知り合いがレクサスに乗っていますが、今朝、前の両輪に押しピンが刺さっているのを見つけたそうです。私も日本のことは嫌いですが、日本車のオーナーも韓国人なのに、どうして他人の財産に害を及ぼすのか分かりません。みなさんも気を付けてください」

「日本車へのテロについていろんな話がありますが、私もマンションの駐車場を利用しているので不安です。しかし、(もしテロに遭ったら)私はじっとしていないつもりです。地獄まで追い掛けます。だから皆さんも大胆に考えてください」

 最近、不買運動の主要ターゲットになっている日本車オーナーたちが集まるインターネット同好会の掲示板には、「テロ」を心配するこのような書き込みが頻繁になされている。

 実際にテロに遭ったという書き込みも掲載されている。前輪の空気が抜けたトヨタ C-HRが牽引車に積まれている写真と共に、「タイヤの横側をやられて修理できないと言われた。駐車場には6台の車が駐車されていたが、日本車である私の車だけがテロにあった」という説明が付けられていた。

 キムチテロに遭ったという書き込みもあった。車の後方がキムチの赤い汁で汚れている白いレクサスの写真がアップれた。レクサスの車主は、「マンションの地下駐車場に停めていた車の後ろに誰かがキムチの汁をぶっかけた。駐車場の監視カメラで犯人を突き止められたら、刑事処罰が可能か」と、助言を求めていた。

「マンション1階の駐車場と地下駐車場で日本車の駐車を全面禁止する」という管理事務所の張り紙の写真も掲載された。ただし、掲示を許可する管理事務所のハンコがないことから、「偽物ではないか」という声も上がっている。

 このほかにも「ソニー・ピクチャーズの新作映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は日本と関連があるのか?」「セブンイレブンはアメリカの会社なのか? 日本の会社なのか?」「ジョージアコーヒーも日本製なのか?」という有様で、不買運動のターゲット選定のための「質疑応答」がネットで盛り上がっているのだ。

 韓国メディアも日本製品に対する不買運動を大々的に伝え、韓国人の愛国心を刺激している。「日本より嫌なイルパ(日本が大好きな人)」「反省のない日本、マートの日本製不買運動」「日本製品は売らない・・・第2の抗日運動」「韓国で1兆ウォン以上稼いだのに寄付はスズメの涙、不買運動に火をつけた日本」「安倍が始めた貿易報復、韓国は国民が出て不売運動で報復」

 このように、韓国メディアとネットで過熱する日本製品の不買運動。果たして実生活にはどれほどの影響が出るのだろうか。

韓国内のユニクロを訪れてみると・・・

 7月7日の日曜日、韓国人の若者でにぎわう汝矣島(ヨイド)にあるショッピングモールを訪れてみた。「夏の最後のバーゲンセール」が行われているユニクロの店内は、ショッピングモール内の他の売り場と比べて客が少ないという印象はまるでなかった。店内には数十人の客が賑やかに品を選んでいて、2階の女性服フロアでは6つもあるフィッティングルームの前に10人ほどの列が出来ていた。カウンターにも12〜13人ほどの客が並んでいる。ただ、店員によれば、「普段の週末と比べると少ないほう」という。「やはり不買運動の影響がある」との説明だった。

 同じ階にある「無印良品」にも足を運んでみた。ユニクロに比べてゆったりした空間だが、客は多くなかった。ユニクロの袋を手にもって文具を見ていた若いカップルに、不買運動の話を聞いてみた。

「不買運動をすれば、韓国の日系企業で働いている韓国人や日本のコンビニチェーンの店主にも被害が及ぶんじゃないでしょうか。最近、景気が悪いというニュースを耳が痛くなるほど聞いていますが、不買運動をすることでむしろ韓国経済が悪くなると思います」

 低迷に陥った韓国経済の唯一の支えである半導体産業を狙った日本の「ピンポイント攻撃」は、韓国人と韓国メディアを憤らせ、韓国は一枚岩になって日本に対する敵対心を露にしている。まるで昨春、貿易戦争の開始とともに、米国に一撃にあった中国人が「奉陪到底」(最後までつき合ってやる)を叫んだ時と同じ心境だろう。

「心配なのは経済制裁の範囲が広がること」

 一方、サムスンやSK、LGなど、日本の規制措置で直接的な影響を受ける羽目になった韓国企業は、発言を控えている。「取材に一応じるなという上部からの指示があった」とし、社名を明かさない条件でインタービューに応じてくれた韓国の半導体企業関係者から話を聞いてみた。

――社内の雰囲気はどうか。

「毎日が対策会議の連続だが、これといった対策が見つからない」

――今回の輸出制裁を受けた3品目の在庫量はどれくらいあるか? 韓国メディアでは3〜4カ月までは持ちこたえることができると言っているが。

「1カ月で使い切るかもしれないし、2カ月になるかもしれない。今持っている在庫で今後どれほど持ちこたえるか断言できない。それよりも最も困っているのは、取引先がひどく動揺していることだ。今の状況が続けば、取引先を米国のマイクロンなどに奪われるのではないかという懸念が社内で広まっている」

――どのような対策が検討されているのか? 韓国メディアでは輸入先の多角化や半導体核心部品の国産化などを提案しているが。

「あまりにも現実を知らない話だ。日本製品のシェアが全体マーケットのほぼ90%を占めているのに、一体どこから代替品を買えるということか。それに国産化はすぐにできることではない。数十年かかるかもしれない。現在の私たちにできることは、せいぜい取引のある日本企業を通じて日本政府を説得してもらうことだが、それも大きな期待はできない。

 さらに心配なのは、日本の経済制裁の範囲が広がることだ。もしそうなれば、それこそ生存が危うくなる状況になる。今回の問題は企業レベルで解決できる問題ではない。韓国政府が国家レベルで政治で解決しなければならない」

 企業の焦りにもかかわらず、韓国大統領府や外交部関係者に、問題を政治で解決しようとする意志は、現在のところ全く見えない。

 8日、日本の対韓輸出規制について一週間ぶりにようやく口を開いた文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は「韓国企業に被害が実際的に発生する場合、韓国政府としても必要な対応をせざるを得ない」とし、「日本側に措置の撤回と両国間の誠意のある協議を促す」と述べた。

 この日の発言に対し、韓国の主なメディアは、「文大統領が日本に対抗を警告した」と、一斉に報じた。

「韓国企業の被害時は必要な対応・・・日本への警告」(ハンギョレ新聞) 

「文氏、日本経済報復に警告『韓国企業被害時の対応は不可避』」(中央日報) 

「文大統領 『韓国企業の被害が発生すれば対応』・・・日本へ措置撤回を促す」(聯合ニュース)

「文大統領、韓國企業の被害発生なら対応するしかない。日本へ輸出規制撤回を促す」(朝鮮日報)

 今すぐ使えるカードがない状況でも反日感情を煽る文在寅政権。韓国の関連企業はますます窮地に追い込まれそうだ。

筆者:李 正宣