朝食にもぴったり♪豆乳で作る「半熟豆腐」のお手軽スープ【工藤詩織の「お豆腐」進化論 Vol.10】

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ヘルシー、節約……でも、それだけじゃない! 身近な食材「お豆腐」の魅力はまだまだあるんです。この連載では、豆腐マイスター・工藤詩織さんに、お豆腐をもっとおいしく楽しむための知られざるノウハウを伝授してもらいます。「そうだったんだ!」と思わず納得の意外な活用法を知れば、きっと試してみたくなるはず♪ あなたの食卓のお豆腐が“進化”すること間違いなしですよ!

お豆腐は、なぜ固まる?


今回は、お豆腐が固まる作用「凝固」のお話です。化学や専門用語が苦手な方も、この仕組みを知っておくとさまざまな料理に活用できるので、ぜひ読み進めてくださいね。

豆乳を固めるために加える「凝固剤」の代表といえば、「にがり」。海水から塩(塩化ナトリウム)を取り出した後に残る副産物で、主成分は「塩化マグネシウム」。漢字で「苦汁」と表すとおり、非常に苦い液体です。

加熱した豆乳ににがりを加えると、豆乳の「タンパク質」とにがりの「マグネシウムイオン」が化学反応を起こし、タンパク質同士がつなぎ合わさることでお豆腐が固まります。この作用を「塩(えん)凝固」と呼びます。

お豆腐を固めるのは「にがり」だけじゃない


日本のお豆腐の歴史をさかのぼると、「にがり」以外で固めたお豆腐が存在することはご存知でしょうか? その一例が「すまし粉」と呼ばれる「硫酸カルシウム」を使ったお豆腐です。

昭和初期の日本では、軍需の影響で豆腐用の「にがり」の使用が制約され、代用として「すまし粉」と呼ばれる石膏の粉でお豆腐を固める製法が広く普及しました。同じ「塩凝固」を起こす2つの凝固材ですが、大豆の甘みを強く感じる「にがり」のお豆腐に対し、保水力のある「すまし粉」のお豆腐は、みずみずしくツルっと仕上がるのが特徴です。

「にがり」が主流となった現代でも、「すまし粉」でお豆腐を作り続ける職人さんもいますし、「出汁」の食文化を持つ京都では、「すまし粉」の豆腐は湯豆腐との相性が良いとされ、長く支持され続けています。

また、日本でも人気の台湾・香港の豆腐スイーツ「豆花(トウファ)」も、「にがり」ではなく保水力のある「すまし粉」で豆乳を固めることで、飲み込めるほどなめらかに仕上げるのが特徴です。

お豆腐を「酢」で固める半熟豆腐のスープ!


さらに、お豆腐を「酸」で固める「酸凝固」という製法もあります。

台湾で朝食として古くから愛されてきた半熟豆腐のスープ「鹹豆漿(シェントウジャン)」も、この「酸凝固」を利用した料理です。「豆漿」は豆乳、「鹹」は塩を指し、豆乳に醤油や干しエビやザーサイなどで塩味を加えたスープを意味します。

「鹹豆漿」に必ず必要なのは、「」。あたためた豆乳に「酢」を入れると凝固反応が起こり、スープの中にふるふるっとした半熟状態のお豆腐が浮かび上がるのです。そこに、パクチーラー油などのトッピングをのせ、うま味たっぷりのスープに揚げパンを浸して食べるのが現地スタイルです。

台湾の有名店では早朝から大行列に並ぶ必要があるのですが、今回は皆さんのキッチンでも再現できるうれしいレシピをクックパッドからご紹介します。

レシピにもありますが、ポイントは、“無調整”の豆乳を使い、沸騰させないこと。酢を入れたら、全体をヘラでサッと混ぜて少し待機。混ぜ過ぎると固まりかけたお豆腐がボロボロしやすいので注意してくださいね。材料も工程もシンプルなので、忙しい朝にもオススメしたい朝食メニューです。

毎朝簡単に楽しめる♪


おうちで簡単やさしい豆漿(ドウジャン)

by エストニア料理屋さん

台湾の豆漿(ドウジャン)を毎朝簡単に作れる美味しいレシピです。



酢の代わりに、ポン酢もずく酢なども代用できます。豆乳を加熱せずに混ぜた場合、お豆腐のようには固まりませんが、ゆるやかな凝固反応が起こるのでとろみが出ますよ。

手軽でヘルシー!


即席☆市販もずく酢でとろとろ豆乳スープ

by miyuki12

手軽でヘルシーなスープ。もずく酢も豆乳効果でまろやかに〜♬さらりと頂けるので、食欲のない時にもお勧め☆



「酸凝固」を利用したラッシー風ドリンクも


最後は梅に含まれる「クエン酸」を凝固利用したドリンクです。梅シロップ梅ジャム梅酒などを混ぜると、飲むヨーグルトのような質感が出ます。

私も飲食店で働いていた時期にこのドリンクを提供していましたが、梅の酸味がマイルドになったラッシー感覚で楽しめて、カレーとも相性抜群! クエン酸とタンパク質で、夏バテ予防にも良さそうですね。

とろ〜り&あっさり美味


梅シロップde豆乳ラッシー♪

by のべチャン

そろそろ美味しい梅シロップが完成してませんか?私のイチオシです☆まるで不二家のネクターみたい♪



お豆腐の凝固反応を活用したアイデアを集めてみましたが、いかがでしたか? お子様がいるご家庭でも、身近な材料で化学実験ができそうですね。ふるふる食感の半熟豆腐トロトロ豆乳をぜひお試しください♪

工藤詩織(往来/豆腐マイスター)

幼少から豆中心の食生活を送り、豆腐がいつも暮らしの中心にある無類の豆腐好き。日本語教師を目指して勉強する過程で、食文化も一緒に伝えたいと「豆腐マイスター」を取得。国内にとどまらず海外でも、手作り豆腐ワークショップや食育イベントを実施して経験を積む。2018年より「往来(おうらい)」をテーマに本格的に活動を開始。豆腐関連のイベント企画・メディア出演などを通して、各地で豆腐文化の啓蒙活動を行っている。「マツコの知らない世界」(TBS系)、「ヒルナンデス」(日本テレビ系)、「ごごナマ」(NHK)等へ出演。

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