ある時、坊主姿になってピッチに立ったベッカム(左)。その背景にはファーガソンの指示があったようだ。 (C) Getty Images

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 約19年前頃、ここ日本でも巻き起こったあるブームがあった。“ベッカムヘアー”である。

 それは、当時、マンチェスター・ユナイテッドに所属していたイングランド代表MFデイビッド・ベッカムが見せていたあらゆるヘアースタイルの総称だ。2002年に開催された日韓ワールドカップでは、イングランド代表の一員だった彼のモヒカンが流行し、サッカー界屈指の貴公子の真似をする若者が続出。日本でもちょっとした社会現象となった。

 ただ、そんな風潮を快く思っていなかった人物がいる。ベッカムの恩師である元マンチェスター・ユナイテッドの指揮官アレックス・ファーガソンだ。

 選手が発信する独自メディア『OTRO』で、ベッカムはファーガソンから髪の毛を剃るように怒られた過去があったことを明かした。

 甘いマスクの持ち主であることからピッチ外でモデル業にも勤しんでいたベッカムが“御大”の逆鱗に触れたのは、2000年8月に開催されたチェルシーとのコミュニティーシールドを前にしたドレッシングルームでのことだった。

「その時の僕は、モホーク風のモヒカン(中央にのみ髪の毛があるスタイル)をやっていたんだけど、彼(ファーガソン)に頭を見せちゃいけないと思っていたからビーニー帽をかぶっていたんだ。ビーニーをかぶって試合前日のトレーニングを受けたし、ホテルでもビーニーをかぶって夕食と朝食をとった。そして、ウェンブリー(試合会場)に向かう時もビーニーを着けていたんだ」
 
 そして、試合直前になってようやくビーニー帽を取ったベッカムは、「行ける」と思ったようだが、ファーガソンはそれを許さなかった。当時59歳だったスコットランド人指揮官は、「今すぐに剃ってこい!」と言い放ったという。

 ベッカムはその時の様子をこう振り返っている。

「僕は思わず笑ったよ。『冗談でしょ?』って。でも、彼は言ったんだ。『いや、私は真剣だ。今すぐに剃ってこい』ってね。それで僕は、すぐにバリカンを探しに行って、ウェンブリーで髪を剃り落としたよ。監督は絶対だからね」

 それから19年の時が流れ、サッカー界では様々な髪型が見られるようになった。ベッカムは、そうした風潮について次のように語っている。

「僕と監督がぶつかったようなことは現代サッカーでは起こり得ないと思う。僕がやっていたモヒカンなんて、近頃のタトゥーや派手なスパイクに比べたら普通だからね。監督(ファーガソン)は、僕らが赤とか白のスパイクを履いただけでピッチに立たせてくれなかったけど、時代は変わったんだ」

 SNSなどの発展によって、選手たちがより見た目を意識する時代となった現代。ファーガソンのような何よりも規律を重んじ、選手を強烈に縛り付けるような監督は、もはや“絶滅危惧種”と言えるのかもしれない。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部