ヤングなでしこGKスタンボー華、“憧れの師匠”海堀あゆみに誓う「恩返しの飛躍」
2011年の女子W杯優勝を支えた守護神に憧れ、ガムシャラに背中を追い続けてきた日々
なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)1部INAC神戸レオネッサのGKスタンボー華は、大会初優勝を飾ったU-20女子ワールドカップ(W杯)の激闘を終え、8月30日にチームに合流した。
太陽がギラギラと照りつけるなか、練習場の脇から19歳の新ヒロインを見守る人物の姿――。INACのOGで、日本が世界一に輝いた2011年女子W杯時の守護神、海堀あゆみ(現・熊本ルネサンスFW兼コーチ)だ。スタンボーにとって“憧れの先輩”がいたからこそ、フランスの地での快進撃があった。
2011年、日本女子代表はドイツで開催されたW杯で見事に大会初優勝。最後まで諦めずに戦う姿は人々の感動を呼び、「なでしこジャパン」の愛称はサッカーファン以外にも広く知られるようになった。当時、12歳だったスタンボーは最後方でチームを支えるGK海堀に釘付けとなった。
「海さん(海堀)は味方を動かすコーチングが素晴らしい印象を受けました。どんな事態にもいろいろな予測をしているから、自分自身に余裕があって、難しいボールを止めることもできる。私は自分のことで精一杯になってからの指示でしたから(苦笑)。真似したいけど、相当時間がかかるだろうなと思っていました」(スタンボー)
INAC所属という共通項を持つ二人だが、海堀は2015年を最後に一時現役を引退、スタンボーは2017年入団のため、チームメイトになることはなかった。それでも、スタンボーがJFAアカデミー福島時代に練習参加でINACへやって来た際、「テレビの中の存在だった」海堀と邂逅。わずか1週間ほどの短い時間だったが、海堀もスタンボーの天真爛漫なキャラクターに魅了され、後輩として可愛がったという。
「スタンボーの人懐っこくて明るい人柄が大好きでした。彼女が一人いるだけで、チームも明るくなる。技術とはまた違う要素ですけど、GKとしては才能の一つです。練習にも真面目に取り組んでいたと思います」(海堀)
「本当の評価は、これからINACでどれだけ活躍できるか」
2018年、スタンボーはINACの先輩GK武仲麗依、元なでしこジャパンの福元美穂という二人の大きな壁を乗り越えられず、公式戦出場を果たせぬまま、U-20W杯の大舞台に挑んだ。それでもグループリーグ第2戦のスペイン戦を除き、全6試合中5試合にスタメン出場。ヤングなでしこの正守護神として、好セーブを連発して世界一への快進撃を支えたのは記憶に新しい。海堀は後輩の目覚ましい活躍をこのように分析する。
「GKはポジションが一つだけ。試合に出る時も出てない時も、自分のできることをやるしかありません。常に練習して、日々の積み重ねしかない。こうやって世界という大舞台で結果を残せたのは、INACという素晴らしい環境で、良い監督、良いコーチ、良い仲間に恵まれたからだと思います。素晴らしいGKが二人いて、代表クラスの選手もたくさんいる。たとえ試合に出られなかったとしても、得るものは多かったはずです」
ただし、スタンボーの活躍に顔をほころばせる海堀も「ここからが大事」と話す。
「今大会で得ただけで終わるのではなく、それを還元していかないとダメ。本当の評価は、これからINACでどれだけ活躍できるかだと思います。成功するもしないも自分次第。次は、私を見てきてくれたという彼女が他の人のお手本になる番です。活躍することで若い子たちの憧れになって、女子サッカーがまた盛り上がってほしいし、スタンボーにはなでしこジャパンへ上がってもらいたいと思います」
「海さんは私の師匠。スタンボーが弟子で良かった、と思ってもらえる選手になりたい」
そんな大先輩からの“金言”を聞いていたかのように、スタンボーも9月8日に再開するなでしこリーグ1部後半戦に照準を合わせている。
「私もU-20W杯で優勝したからOKとは微塵も思っていません。今大会も自分に納得できない部分はたくさんあったし、何かできたという思いはあまりないので。まだスタートラインにも立てていないかな、と。これからですよ!
海さんは私の師匠。長い間サッカーを続けてきてくれたからこそ出会うことができました。今度は私が恩返しじゃないけど、『スタンボーが弟子で良かった』と思ってもらえる人間、選手になりたい。学ぶことが多すぎて何とは言えないんですけど(苦笑)、これから少しずつ自分の中に落とし込んでいくつもりです」
海堀は全体練習終了後、スタンボーの元に足を運び、自らキッカーとして居残り練習の相手を務めた。「自分はボールを蹴っただけです」と謙遜した海堀だが、こうした何気ないひと時もなでしこの伝統が受け継がれてきた所以だろう。先輩から後輩へ、そしてさらなる若いつぼみが花開くように――。U-20女子W杯優勝を糧に、スタンボーがINACのレギュラー、そしてなでしこジャパンに上り詰められるか、目が離せない。
(小田智史(Football ZONE web編集部) / Tomofumi Oda)
