なぜあの人はいつもトラブルを起こすのか
■「こんなに頑張っているのに、認められない」
なぜ、職場でトラブルを起こす人は、またトラブルを起こしてしまうのでしょうか。その人が抱える「心のトラブル」が、人間関係を通じて表れているからです。
職場の人間関係について考えてみましょう。うまくいっている人間関係とは、自分がやりたいことと、他人からの期待が合致している関係です。例えば、リーダーシップの持ち主だと自任する人が、周囲からも「あの人にはリーダーシップがあるから、それを発揮してほしい」と期待されている場合は、非常にうまくいっている職場だと言えるでしょう。
反対に、自分は「リーダーシップを見せたい」と考えていながら、周りからは「リーダーではない」と思われている場合は厄介です。誰にも求められていないのに、一生懸命になってしまい、あまつさえ「自分はこんなに頑張っているのに、認められない」と怒りを感じてしまう。このような「自分の能力」を勘違いした人間が、えてしてトラブルを起こしてしまうのです。
人と人とを繋げる能力のあるタイプもいれば、最後のツメの仕事で集中力を発揮するタイプもいます。そのように自分の適性を社会に適合できれば、問題は起こらないのに、情緒的未熟さゆえに自分の価値を見誤っている人が、トラブル・メーカーになってしまうのです。もちろん、その人は能力がないわけではなく、むしろ有能でさえあるかもしれません。しかし、社会の中で、まだ自らの心理として自分がどうすれば生きるのかが、わかっていない。心の内側が成熟していないのです。
社会心理学者のエーリッヒ・フロムは「神経症的非利己主義」という言葉を用いています。「非利己主義」つまり自分のためではなく、他人のために行動をしている。一見するとそのような利他性は好ましいように見えますが、「神経症的非利己主義」の人間は、相手のことを理解できない、望むものがわからないのに、闇雲に一生懸命に「他人のため」に行動してしまっている。
■下手に付き合うと、こちらが疲れるだけ
なぜそうなってしまうかと言えば、「他人が自分をどう思っているか」でしか、自分を評価できないからです。ですから、自分自身を省みることなく、他人の本当の思いを考えることなく、自らが「認められたい」という理由で突き進んでしまう。結果、コミュニケーションをうまく取れず、揉め事を起こしてしまう。自分で自分を支えられない、「心の未成熟」を持ったままなので、どこの職場でも、どんな人間関係でも自分の心の葛藤を自分の内面ではなく、他人を巻き込む安易なやり方で解消しようとするので、トラブルが起きてしまうわけです。
そのような人とどう付き合えばいいのか。彼、彼女が成長し、心が成熟しない限り、トラブルを起こし続けるでしょうが、その人たちは無意識にトラブルを抱えています。「この人はそういう人なんだ」と、割り切って付き合うしかない。下手に付き合うとこちらが疲れるだけです。
あなた自身も強い内なる力を持って、トラブル・メーカーとは距離を取るようにしましょう。
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早稲田大学名誉教授、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員
『人生を後悔することになる人・ならない人』など著書多数。
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(早稲田大学名誉教授 加藤 諦三 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)
