東大と大日本印刷が開発した人の肌に貼りつけるスキンディスプレイは、どんな未来を作り出すのか

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東京大学大日本印刷の研究チームはスリムで伸縮自在な「スキンディスプレイ」の製造に成功。
スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発した。

今回の研究成果は2018年2月17日(米国時間)に開催される、アメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science; AAAS)年次大会で発表される予定だ。

■皮膚に直接貼れるディスプレイ
ディスプレイと言えば、スマートフォンやタブレット、ノートPCなどで、いつもお世話になっている、画面表示装置だ。

折り曲げ可能なディスプレイ(フレキシブルディスプレイ)はすでに商品化されている。
しかし、伸び縮みしたり、皮膚に貼れたりするディスプレイは、試作品が数件報告されているだけだ。

今回発表されたスキンディスプレイは、16×24 個(画素数384)のマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)が薄いゴムシートに等間隔で埋め込まれている。
・厚みは約1mm
・マイクロLED の大きさは1mm×0.5mm
・発光波長は630nm(ナノメートル)の赤色
・駆動電圧は2V

繰り返し45%伸縮させても電気的・機械的な特性が損なわれない。
薄型・軽量で伸縮自在なため、皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げることがない。
このため装着時の負担が大幅に低減されるメリットがある。




■伸ばしても壊れない
最大の特長は、マイクロLED のような硬い電子部品と伸縮性のある配線を混載しているゴムシートを伸ばしても壊れないところだ。

従来の方法では、硬い電子素材と柔らかい電子素材を混載させるため、ゴムシートを伸ばすとすぐに故障してしまう。これは硬い素材と柔らかい素材の接合部分に大きな応力が集中するためだ。

今回、独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術で、この応力の集中を避ける構造を採用し、機械的な耐久性を格段に向上させることができた。




■在宅医療への応用に期待
スキンディスプレイは直接皮膚に貼り付けられる。
皮膚呼吸できるナノメッシュ電極と無線モジュールを組み合わせたスキンセンサーで計測した心電波形の動画をスキンディスプレイに表示することができる。

応用例としては、病院と自宅をスムーズにつなぐ在宅ヘルスケアが考えられる。
たとえば、心臓疾患のある高齢者が自宅にいながらにして、ナノメッシュ電極で医療レベルの計測を行い、心電波形を医療クラウドに伝送する。
担当医は経時変化を含めて患者の状況を確認し、問題がなければ「いいね」マークを、自宅のベッドで寝ている高齢者の手に貼り付けたスキンディスプレイに表示するというものだ。

作業現場などであれば、手の甲にマニュアルを表示させることで、作業効率を高められる。
またスポーツへの応用も考えられる。ランニング中にコースを確認したり、心拍数をチェックしたりできるからだ。

大日本印刷では今後、
・伸縮性を有するデバイスの構造の最適化で信頼性の向上
・製造プロセスの開発による高集積化、大面積化といった技術課題の解決
こうした目標をクリアすることで、3 年以内の実用化を目指すとしている。




スキンディスプレイが日常に入り込めば、情報へのアクセシビリティは大幅に向上する。
子供から高齢者に至るまで、全世代の生活の質がより高まると期待される。


ITライフハック 関口哲司