韓国のMBCテレビの関係者と、話をする機会があった。Jリーグの理念から始まり、ACLでの浦和の決勝進出やダゾーンの参入による影響など、話題は多岐にわたった。彼らは驚くほど日本のサッカーに詳しく、サッカー中継の未来図も明確に描いていた。

 せっかくの機会だ。こちらにも聞きたいことがあった。

 韓国代表はどうしたのか? ロシアW杯の出場権こそ獲得したものの、首位のイランだけでなく中国やカタールにも敗れたチームに、何が起こっているのか。

 韓国のスポーツ全般を取材しているというMBCテレビの関係者は、困ったような表情を浮かべた。

「ここ数年は、Kリーグもあまり盛り上がっていないんですよね」
 
 質問の答えになっていないが、かえってそれが示唆に富んでいると感じられた。「ふううう」と大きなため息をついて、相手はまた続けた。

ヒディンクの子どもたちがいなくなったから勝てなくなったんじゃないか、っていう話もあるんですよ」

 フース・ヒディンクが韓国代表の監督を務めたのは、2001年から02年のワールドカップ終了後までである。このオランダ人が稼働したのはわずか1年半に過ぎず、彼の子どもたち──ヒディンクの薫陶を受けた選手のほとんどは、現役を退いて久しい。現代表では38歳のイ・ドングクが、ヒディングのチームを知る最後の選手である。その彼も、02年の日韓W杯には出場していない。

 ヒディンク以降の代表チームでは、10人以上の監督が采配をふるってきた。ホン・ミョンボのようなレジェンドも代表を率いたが、ヒディンクの記憶は色褪せていないという。彼の再登板を望む声が根強いことも、MBCテレビの関係者は否定しなかった。

 7月から采配をふるうシン・テヨン監督は、10月の欧州遠征で3バックをテストした。しかし、ロシアとモロッコに連敗し、チームの再建はなかなか前進していない。そうしたことも加味されての、ヒディンク待望論なのだろう。

 MBCテレビの関係者は、「日本はうまくいっているようですね」と笑顔をむけてきた。自分たちの代表チームに思いを馳せると、今度は僕が困ったような表情を浮かべることになった。

 ロシアW杯の出場権はつかんだ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、最終予選を戦いながら世代交代を進めるという難題をクリアした。ロンドン世代の大迫勇也や原口元気が存在感を高め、久保裕也、浅野拓磨、井手口陽介らのリオ世代も台頭してきた。

 ただ、ロシア後の日本代表はどうなるのだろう? ハリルホジッチ監督との契約が、更新されるとは考えにくい。ならば今度もまた、外国人監督を招へいするのか? Jリーグで経験を積んできた日本人監督が、日本代表を率いるチャンスは訪れないのか?

 ワールドカップのたびに監督を交代させることが、悪いとは言わない。一方で、長期政権の監督のもとで結果を残している国もある。たとえばドイツであり、ウルグアイであり、近いところではイランだ。
 
 11年4月にカルロス・ケイロスと2年半の契約を結んだイランは、14年のブラジルW杯後にさらに契約を延長した。ロシアW杯最終予選で韓国を圧倒して首位通過した背景には、ポルトガル人指揮官のもとで継続性を担保してきたことと無関係でないだはずだ。
 
 ロシア後の日本は、どうするのだろう。気が早いのは承知しているものの、思わず考えて混んでしまうのだ。