Synology WiFiルーター「RT2600ac」を使ってみたら予想以上の多能さに驚いた
Wi-Fiルーターと言えば、バッファローやNEC(現NECプラットフォームズ)のAterm、エレコム、アイ・オー・データの日本メーカーから選べば大丈夫という風潮できました。ところが、最近はASUSやTP-Linkといった台湾や中国メーカーからハイエンド系を中心に投入。どれも攻撃的なデザインと洗練された設定(OS)周り、性能的にも申し分のない魅力的なルーターが次々登場してきました。そしてこの夏、NASメーカーとして世界的に知られるSynologyからハイエンドルーター「RT2600ac」が発売。台湾や中国メーカーの躍進が止まりません。
▲Synologyの「RT2600ac」。サイズは280(W)×169(D)×77(H)mm、重さは700g。
CPUはクアルコムのIPQ8065(1.7GHz/デュアルコア)を採用。メモリーも512MB搭載しており、かなりパワフルな使い方をしても余裕な仕様。外観もパワフルさをアピールするかのように、4本のアンテナがそびえ立ち、ギガビットのWANポート+LANポート×4、WPSボタンやUSB3.0×1、USB2.0×1、SDカードリーダーなどを備えています。
▲アンテナは着脱式で、垂直に立てるようにマニュアルには記載されている。
▲SDカードスロットは、ちょっと入れにくい位置だが、ファイルサーバーとして活用できる。
▲本体左側にUSB3.0ポートが備わっている。
▲本体右側にはWPSボタンとWi-Fiのオン/オフボタンがある。
WANはLANポートの1つを利用した2GbpsデュアルWAN統合帯域にも対応。ISPへの接続がどちらか途絶えたときに、接続を切り替えるフェイルオーバーや、両ポートにそれぞれ使用率を設定してトラフィックを分散させるロードバランス機能を使うことができます。
▲背面にもUSB2.0ポートを備える。LANポートの1つをWANポートとしてデュアルWANにも対応。
最大の特徴は、NASで培った専用OS「DSM(DiskStation Manager)」をベースに、ルーター用に開発された「SRM(Synology Router Manager)」を搭載したこと。Webブラウザーでアクセスすると、DSMと同様の仮想デスクトップ画面が表示され、各種設定やアプリの追加などがかんたんに行なえます。
iOSやAndroid向けのアプリ「DS router」も用意されているものの、こちらは簡略化されたビジュアルと設定画面を優先した設計であるため、より細かな設定操作が必要ならWebブラウザー版をおすすめします。
▲SRMの画面。仮想デスクトップのようにマウスでサクサクと操作できる。▲「DS router」アプリの画面。非常にシンプルで図式化されていて、初心者にはわかりやすい。設定はSRMより簡易なもののみ。▲WPSボタンをアプリからできるのは、いちいちルーターのところまで行かずにすむのでラク。
そして、NASメーカーならではなのが、ファイルサーバー機能がかなり本格的なこと。USBポートにストレージを差したり、SDカードリーダーにSDカードを差すことで、NASとして利用ができる。機能的にはDiskStationさながらで、WindowsやMacのファイルサービスのほか、FTPやWebDAVといったファイルプロトコルに対応。外部からのアクセスやファイル共有機能も用意され、SRM上のファイル管理アプリ「File Station」でファイル操作できます。
▲「File Station」によって、SRM上でファイル操作も可能。これだけ見るとルーターの設定画面には思えない。
実際に設置してみました。筆者宅はNTT東日本のフレッツ光ネクストで、ひかり電話を利用している関係で、ルーターをアクセスポイントとして利用する必要があります。今回もそのように接続し電源をオン。まずは、Wi-FiでSSID「SynologyRouter」を探し、マニュアルに記されているパスワードで接続します。
▲まずはWi-Fiでルーターへアクセス。SSIDを見つけてパスワードを入力する。
Wi-Fi接続したら、WebブラウザーのURL欄に「http://router.synology.com/」と入力すると、ルーターが見つかるので、まずは設定から開始します。
▲「http://router.synology.com/」でアクセスすると、ルーターの設定画面になる。
管理者設定で、ユーザー名とパスワードを設定。続いてWi-Fi接続用のSSIDとパスワード、その後接続モード(今回はアクセスポイント)とIPアドレスの設定(今回は自動設定)をしたあと、再起動がかかるのでしばらく待ちます。そして再びアクセスできるようになると、先ほど設定したSSIDとパスワードでWi-Fi接続し、再度「http://router.synology.com/」でルーターを見つけ、管理者としてログインすると、SRMのデスクトップが表れます。
▲まずは管理者の設定。ユーザー名とパスワードを設定する。
▲続いてSSIDとセキュリティパスワードを設定。
▲ルーターのモードを指定。今回はアクセスポイントモードにした。
▲ルーターのIPアドレスをどうするか設定。今回は自動とした。
▲あとは再起動がかかって基本設定が完了する。
▲再び「http://router.synology.com/」にアクセスすると、筆者は別にSynologyのNASも使っていたので、ルーターと選択する画面が表示された。
画面の構成はDSMと同じですが、利用できる機能・設定はルーター用になっています。Wi-Fiの設定やインターネットの設定は、「ネットワーク センター」で設定できます。初期設定では、1つのSSIDで5GHz帯と2.4GHz帯のどちらか良好な接続になる「スマート接続」になっており、使用する機器がどちらに対応しているかどうか考えずに利用できます。
▲サインインの画面。時間とか表示されてちょっとおしゃれ。
▲最初は各アイコンの説明が表示され、ある程度機能がわかるようになっている。
スマート接続のいい点は、たとえば最初は5GHz帯で接続し高速で通信していたが、離れて行ったときに電波が弱くなり、2.4GHzのほうが速いと自動的に接続が切り替わってくれるところ。5GHz帯より2.4GHz帯のほうが電波は遠くまで届きやすいので、1階と2階、3階と広い家に向いています。
▲「ネットワーク センター」の画面。初期設定はスマート接続になっている。
もちろん、設定で別々のSSIDにし、明確に周波数帯を分けることも可能。また、ゲスト用SSIDも用意されていて、こちらは5GHz帯と2.4GHz帯と分けて設定します。ローカルネットワークへアクセスできるか否かも設定でき、期限も1時間、3時間、8時間、1日、1週間、無制限の中から選択できるので、期限を設けておけばうっかりゲストSSIDを開放しっぱなしということはなくなります。
▲「ワイヤレス」の設定で、スマート接続ではなく各周波数帯で個別接続が可能。
最初の設定では、ルーターかアクセスポイントかのどちらかしか設定できませんでしたが、ネットワーク センターの「操作モード」で「ワイヤレス リピーター」、いわゆる中継モードが選択できます。
▲ルーターとアクセスポイント以外にも、中継モードが設定可能。
ルーターの場合1点注意が必要なのが、MTU値。初期値は1492になっており、たとえばフレッツ光では1454のため、設定を変更する必要がある。最近日本メーカーのルーターでは、なかなかMTU値を変更することはなくなりましたが、このあたりはルーターとして日本初参入ということもあり、今後改善されていくかもしれません。
▲MTUについての紙が同梱されていた。ルーターで使う場合は回線の推奨設定にしよう。
「コントロールパネル」では、アクセスできるユーザーの登録やストレージ、システムなどの設定が行えます。「通知」でシステムの状態が変わったりエラーが発生したりした場合、メールアドレスを登録しておくと、メールで通知してくれます。また、ペアリングしたモバイルデバイスへ通知したり、SMSを使ったりと、このあたりはNASと似た仕様になっています。
「システム」では、バージョンアップなどの更新とシステムの基本設定が行えます。「地域オプション」を見ると、時刻のタイムゾーンが+8時間の「Irkutsk(イルツーツク)」になっていました。+9時間の「Tokyo,Osaka,Sapporo」に変更しておきましょう。時刻はタイムサーバーと同期を取れるので正確です。また、言語関係も初期値では「English」になっているので、「日本語」にしておきましょう。
▲タイムゾーンが日本になっていなかったので変更。
通常のルーターと大きく違うのが、先述のとおりファイルサーバー機能です。USBポートが付いているルーターには、機能的に備わっているルーターも多いのですが、そこはNASメーカー。簡易的なものではなくガッツリとファイル共有ができます。試しにUSB3.0へバス駆動可能なHDDを接続してみたところ、特にフォーマットする必要なく認識してくれ、Windowsファイルサーバーをオンにするだけで、Windowsマシンから見えるようになります。どのフォルダーを共有するかや、ゴミ箱の有無、ユーザーのアクセス権なども設定できます。
▲HDDをUSB3.0ポートへ接続。横の緑色のLEDは正常に接続された印。外すときにこのボタンを押すとオレンジ色に変わるので、HDDを安全に外せる。これはかなり便利。
▲特にフォーマットすることなくすぐにファイルサーバーとして使える。
▲WindowsやMacから見えるようにするために、ファイルサービスをオンにする必要がある。
NASと同様、Snologyにメールアドレスを登録しQuickConnectの設定をすると、Webブラウザー経由で外部からもアクセスできるようにできます。FTPにも対応していますので、FTP経由でアクセスもできます。
▲NASと同様QuickConnectを利用して、外部からでもアクセスできる。
▲CrystalDiskMark 5.2.2 x64(UWP)を使って有線接続したPCからファイルサーバーのベンチを実行。結果は、上がルーターへ接続したときの値、下はPCに直接USB3.0へ接続して計測したときの結果。
もう1つ他のルーターと違うのが、アプリをインストールして機能を追加できること。NASと同様「パッケージセンター」があり、用意されているのは「VPN Plus Server」や「DNS Server」、ファイルを同期する「Cloud Station Server」などが用意されている。VPNはかなり強力で、WebVPNやSSL VPN、SSTP、OpenVPN、L2TP/IPSec、PPTPなどのサービスをサポートしています。また、NASでも利用できる「Dawnload Station」や「メディアサーバー」も用意されており、USB接続のストレージやSDカードをNASに見立てて、ストレージサービスなどからダウンロードしたり、楽曲ファイルや動画ファイルを置いておいてテレビで見たり聞いたりできます。
▲さすがにNASよりはアプリ数が少ないものの、今後増えていく可能性はある。
ルーター機能以外の面に目が行きがちですが、もちろん速度も計測してみました。筆者の環境だとリンク速度の最大は866Mbpsなので、ルーター本来の性能をフルには発揮できませんが、iPhone 7 PlusとVAIO S11で仕事部屋であるルーターから直線距離で5mほどの場所で計測しました。ちなみに、軽量鉄骨住宅なので、木造住宅よりは電波が届きにくくなっています。
Speedtest.netによる計測なので、時間帯やサーバーの混み具合によってかなり差が出ますが、比較的空いている夜中だと、iPhoneで概ね下りも上りも350Mbps前後、良いときだと400Mbpsを超え、上りは最大515Mbpsを記録。筆者宅ではこれまでで最高レベルの値にちょっとビックリ。もう少し離れて、直線距離9mほどの寝室でも(扉は閉めた状態)300Mbpsオーバーを記録したので、かなり興奮しました。逆に近づいて計測してみましたが、仕事部屋とはあまり変わらなかったので、かなり広い範囲で最大値が得られるという印象です。VAIO S11も同じ場所で上りも下りも300Mbps台から400Mbps弱ぐらいをコンスタントに記録しました。ちなみに、有線で計測するといいときで650Mbps前後なので、かなりいい値と言えるでしょう。
▲上が5mほど離れた仕事場での値、下が9mほど離れた寝室での値。いずれもiPhone 7 Plus。
▲仕事部屋で初めて500Mbpsオーバーの値を見た! iPhone 7 Plusでの結果。
▲VAIO S11では、仕事部屋でコンスタントに300Mbps台を記録。
実売価格は3万1000円前後。デザイン的に据え置き型なので、置く場所を考えなければなりませんが、一応壁掛けフックは底面に付いています。ただ、脚が取れないのでどのようにフックを設置すべきなのかの謎が残ります。それはさておき、Wi-Fi性能面でも機能面でも大満足だったので、ハイエンド機種でそれなりのお値段はしますが、ルーターなんてそうそう買い換えるものでもないので数年後を見据えて導入する価値は高いでしょう。筆者的にはSRMに慣れてしまうと、ほかの設定インターフェースでは煩わしさすら感じてしまいます。NASを導入せずとも、手持ちのHDDをぶら下げてNAS同等の使い方ができるし、同時にプリンターもぶら下げられるので、Wi-Fiルーター以上の価値も生み出せる製品だと思いました。
▲背面に壁掛けフックがあるのだが、脚があるので柱など脚がじゃまにならない所なら設置できるということか。
【ギャラリー】Synology「RT2600ac」 (40枚)
「RT2600ac」は、IEEE 802.11a /b /g /n /ac に対応し、4×4アンテナ搭載。最大速度は5GHz帯域で理論値1733Mbps、2.4GHz帯域で理論値800Mbps。ビームフォーミングはもちろん、MU-MIMOや160MHzや80MHz+80MHzへのチャンネル拡大といった第2世代の11ac wave 2規格にも対応したハイエンドルーターです。▲Synologyの「RT2600ac」。サイズは280(W)×169(D)×77(H)mm、重さは700g。
CPUはクアルコムのIPQ8065(1.7GHz/デュアルコア)を採用。メモリーも512MB搭載しており、かなりパワフルな使い方をしても余裕な仕様。外観もパワフルさをアピールするかのように、4本のアンテナがそびえ立ち、ギガビットのWANポート+LANポート×4、WPSボタンやUSB3.0×1、USB2.0×1、SDカードリーダーなどを備えています。
▲アンテナは着脱式で、垂直に立てるようにマニュアルには記載されている。
▲SDカードスロットは、ちょっと入れにくい位置だが、ファイルサーバーとして活用できる。
▲本体左側にUSB3.0ポートが備わっている。
▲本体右側にはWPSボタンとWi-Fiのオン/オフボタンがある。
WANはLANポートの1つを利用した2GbpsデュアルWAN統合帯域にも対応。ISPへの接続がどちらか途絶えたときに、接続を切り替えるフェイルオーバーや、両ポートにそれぞれ使用率を設定してトラフィックを分散させるロードバランス機能を使うことができます。
▲背面にもUSB2.0ポートを備える。LANポートの1つをWANポートとしてデュアルWANにも対応。
最大の特徴は、NASで培った専用OS「DSM(DiskStation Manager)」をベースに、ルーター用に開発された「SRM(Synology Router Manager)」を搭載したこと。Webブラウザーでアクセスすると、DSMと同様の仮想デスクトップ画面が表示され、各種設定やアプリの追加などがかんたんに行なえます。
iOSやAndroid向けのアプリ「DS router」も用意されているものの、こちらは簡略化されたビジュアルと設定画面を優先した設計であるため、より細かな設定操作が必要ならWebブラウザー版をおすすめします。
▲SRMの画面。仮想デスクトップのようにマウスでサクサクと操作できる。▲「DS router」アプリの画面。非常にシンプルで図式化されていて、初心者にはわかりやすい。設定はSRMより簡易なもののみ。▲WPSボタンをアプリからできるのは、いちいちルーターのところまで行かずにすむのでラク。
そして、NASメーカーならではなのが、ファイルサーバー機能がかなり本格的なこと。USBポートにストレージを差したり、SDカードリーダーにSDカードを差すことで、NASとして利用ができる。機能的にはDiskStationさながらで、WindowsやMacのファイルサービスのほか、FTPやWebDAVといったファイルプロトコルに対応。外部からのアクセスやファイル共有機能も用意され、SRM上のファイル管理アプリ「File Station」でファイル操作できます。
▲「File Station」によって、SRM上でファイル操作も可能。これだけ見るとルーターの設定画面には思えない。
実際に設置してみました。筆者宅はNTT東日本のフレッツ光ネクストで、ひかり電話を利用している関係で、ルーターをアクセスポイントとして利用する必要があります。今回もそのように接続し電源をオン。まずは、Wi-FiでSSID「SynologyRouter」を探し、マニュアルに記されているパスワードで接続します。
▲まずはWi-Fiでルーターへアクセス。SSIDを見つけてパスワードを入力する。
Wi-Fi接続したら、WebブラウザーのURL欄に「http://router.synology.com/」と入力すると、ルーターが見つかるので、まずは設定から開始します。
▲「http://router.synology.com/」でアクセスすると、ルーターの設定画面になる。
管理者設定で、ユーザー名とパスワードを設定。続いてWi-Fi接続用のSSIDとパスワード、その後接続モード(今回はアクセスポイント)とIPアドレスの設定(今回は自動設定)をしたあと、再起動がかかるのでしばらく待ちます。そして再びアクセスできるようになると、先ほど設定したSSIDとパスワードでWi-Fi接続し、再度「http://router.synology.com/」でルーターを見つけ、管理者としてログインすると、SRMのデスクトップが表れます。
▲まずは管理者の設定。ユーザー名とパスワードを設定する。
▲続いてSSIDとセキュリティパスワードを設定。
▲ルーターのモードを指定。今回はアクセスポイントモードにした。
▲ルーターのIPアドレスをどうするか設定。今回は自動とした。
▲あとは再起動がかかって基本設定が完了する。
▲再び「http://router.synology.com/」にアクセスすると、筆者は別にSynologyのNASも使っていたので、ルーターと選択する画面が表示された。
画面の構成はDSMと同じですが、利用できる機能・設定はルーター用になっています。Wi-Fiの設定やインターネットの設定は、「ネットワーク センター」で設定できます。初期設定では、1つのSSIDで5GHz帯と2.4GHz帯のどちらか良好な接続になる「スマート接続」になっており、使用する機器がどちらに対応しているかどうか考えずに利用できます。
▲サインインの画面。時間とか表示されてちょっとおしゃれ。
▲最初は各アイコンの説明が表示され、ある程度機能がわかるようになっている。
スマート接続のいい点は、たとえば最初は5GHz帯で接続し高速で通信していたが、離れて行ったときに電波が弱くなり、2.4GHzのほうが速いと自動的に接続が切り替わってくれるところ。5GHz帯より2.4GHz帯のほうが電波は遠くまで届きやすいので、1階と2階、3階と広い家に向いています。
▲「ネットワーク センター」の画面。初期設定はスマート接続になっている。
もちろん、設定で別々のSSIDにし、明確に周波数帯を分けることも可能。また、ゲスト用SSIDも用意されていて、こちらは5GHz帯と2.4GHz帯と分けて設定します。ローカルネットワークへアクセスできるか否かも設定でき、期限も1時間、3時間、8時間、1日、1週間、無制限の中から選択できるので、期限を設けておけばうっかりゲストSSIDを開放しっぱなしということはなくなります。
▲「ワイヤレス」の設定で、スマート接続ではなく各周波数帯で個別接続が可能。
最初の設定では、ルーターかアクセスポイントかのどちらかしか設定できませんでしたが、ネットワーク センターの「操作モード」で「ワイヤレス リピーター」、いわゆる中継モードが選択できます。
▲ルーターとアクセスポイント以外にも、中継モードが設定可能。
ルーターの場合1点注意が必要なのが、MTU値。初期値は1492になっており、たとえばフレッツ光では1454のため、設定を変更する必要がある。最近日本メーカーのルーターでは、なかなかMTU値を変更することはなくなりましたが、このあたりはルーターとして日本初参入ということもあり、今後改善されていくかもしれません。
▲MTUについての紙が同梱されていた。ルーターで使う場合は回線の推奨設定にしよう。
「コントロールパネル」では、アクセスできるユーザーの登録やストレージ、システムなどの設定が行えます。「通知」でシステムの状態が変わったりエラーが発生したりした場合、メールアドレスを登録しておくと、メールで通知してくれます。また、ペアリングしたモバイルデバイスへ通知したり、SMSを使ったりと、このあたりはNASと似た仕様になっています。
「システム」では、バージョンアップなどの更新とシステムの基本設定が行えます。「地域オプション」を見ると、時刻のタイムゾーンが+8時間の「Irkutsk(イルツーツク)」になっていました。+9時間の「Tokyo,Osaka,Sapporo」に変更しておきましょう。時刻はタイムサーバーと同期を取れるので正確です。また、言語関係も初期値では「English」になっているので、「日本語」にしておきましょう。
▲タイムゾーンが日本になっていなかったので変更。
通常のルーターと大きく違うのが、先述のとおりファイルサーバー機能です。USBポートが付いているルーターには、機能的に備わっているルーターも多いのですが、そこはNASメーカー。簡易的なものではなくガッツリとファイル共有ができます。試しにUSB3.0へバス駆動可能なHDDを接続してみたところ、特にフォーマットする必要なく認識してくれ、Windowsファイルサーバーをオンにするだけで、Windowsマシンから見えるようになります。どのフォルダーを共有するかや、ゴミ箱の有無、ユーザーのアクセス権なども設定できます。
▲HDDをUSB3.0ポートへ接続。横の緑色のLEDは正常に接続された印。外すときにこのボタンを押すとオレンジ色に変わるので、HDDを安全に外せる。これはかなり便利。
▲特にフォーマットすることなくすぐにファイルサーバーとして使える。
▲WindowsやMacから見えるようにするために、ファイルサービスをオンにする必要がある。
NASと同様、Snologyにメールアドレスを登録しQuickConnectの設定をすると、Webブラウザー経由で外部からもアクセスできるようにできます。FTPにも対応していますので、FTP経由でアクセスもできます。
▲NASと同様QuickConnectを利用して、外部からでもアクセスできる。
▲CrystalDiskMark 5.2.2 x64(UWP)を使って有線接続したPCからファイルサーバーのベンチを実行。結果は、上がルーターへ接続したときの値、下はPCに直接USB3.0へ接続して計測したときの結果。
もう1つ他のルーターと違うのが、アプリをインストールして機能を追加できること。NASと同様「パッケージセンター」があり、用意されているのは「VPN Plus Server」や「DNS Server」、ファイルを同期する「Cloud Station Server」などが用意されている。VPNはかなり強力で、WebVPNやSSL VPN、SSTP、OpenVPN、L2TP/IPSec、PPTPなどのサービスをサポートしています。また、NASでも利用できる「Dawnload Station」や「メディアサーバー」も用意されており、USB接続のストレージやSDカードをNASに見立てて、ストレージサービスなどからダウンロードしたり、楽曲ファイルや動画ファイルを置いておいてテレビで見たり聞いたりできます。
▲さすがにNASよりはアプリ数が少ないものの、今後増えていく可能性はある。
ルーター機能以外の面に目が行きがちですが、もちろん速度も計測してみました。筆者の環境だとリンク速度の最大は866Mbpsなので、ルーター本来の性能をフルには発揮できませんが、iPhone 7 PlusとVAIO S11で仕事部屋であるルーターから直線距離で5mほどの場所で計測しました。ちなみに、軽量鉄骨住宅なので、木造住宅よりは電波が届きにくくなっています。
Speedtest.netによる計測なので、時間帯やサーバーの混み具合によってかなり差が出ますが、比較的空いている夜中だと、iPhoneで概ね下りも上りも350Mbps前後、良いときだと400Mbpsを超え、上りは最大515Mbpsを記録。筆者宅ではこれまでで最高レベルの値にちょっとビックリ。もう少し離れて、直線距離9mほどの寝室でも(扉は閉めた状態)300Mbpsオーバーを記録したので、かなり興奮しました。逆に近づいて計測してみましたが、仕事部屋とはあまり変わらなかったので、かなり広い範囲で最大値が得られるという印象です。VAIO S11も同じ場所で上りも下りも300Mbps台から400Mbps弱ぐらいをコンスタントに記録しました。ちなみに、有線で計測するといいときで650Mbps前後なので、かなりいい値と言えるでしょう。
▲上が5mほど離れた仕事場での値、下が9mほど離れた寝室での値。いずれもiPhone 7 Plus。
▲仕事部屋で初めて500Mbpsオーバーの値を見た! iPhone 7 Plusでの結果。
▲VAIO S11では、仕事部屋でコンスタントに300Mbps台を記録。
実売価格は3万1000円前後。デザイン的に据え置き型なので、置く場所を考えなければなりませんが、一応壁掛けフックは底面に付いています。ただ、脚が取れないのでどのようにフックを設置すべきなのかの謎が残ります。それはさておき、Wi-Fi性能面でも機能面でも大満足だったので、ハイエンド機種でそれなりのお値段はしますが、ルーターなんてそうそう買い換えるものでもないので数年後を見据えて導入する価値は高いでしょう。筆者的にはSRMに慣れてしまうと、ほかの設定インターフェースでは煩わしさすら感じてしまいます。NASを導入せずとも、手持ちのHDDをぶら下げてNAS同等の使い方ができるし、同時にプリンターもぶら下げられるので、Wi-Fiルーター以上の価値も生み出せる製品だと思いました。
▲背面に壁掛けフックがあるのだが、脚があるので柱など脚がじゃまにならない所なら設置できるということか。