鈴村健一、声優としての自負。「表現メディアのなかで最もハードルの高い仕事かもしれない」
鈴村健一には、いつも驚かされる。名立たる声優を集め、90分の即興芝居を繰り広げる『AD-LIVE』や、富士山を借景するステージで行う野外ライブ『満天LIVE』など、その発想はつねにクリエイティヴで新しい。そんな彼が、昭和の名作『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクシリーズで、主人公・古代 進を支える堅実な航海士・島 大介を演じているというのも、また興味深い。あらゆる表現メディアに精通している鈴村の視点から、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の世界観やキャラクターの魅力、さらには声優という職業に対する思いなど、たっぷりと語ってもらった。

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.



収録スタジオがヤマト艦内に見えてくる瞬間が…!?



──『宇宙戦艦ヤマト』をリメイクして、劇場上映からテレビ放映まで展開された前作『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編となる今作『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』ですが、第一章のシナリオを読まれて、どのように感じられましたか?

前作は「本当に地球が滅亡する」というところまできていた状況を打破するために、ヤマトに乗ってイスカンダルへ行き、地球に戻ってきたんですよね。「イスカンダルに行けば、かならず地球は救えるだろう」というモチベーションがあって、彼らは行ったはずなんですけど…。



──今作は、そこから3年経った設定です。

そうですね。3年後の現状をみると、「イスカンダルへの旅が、はたして地球にとって正しかったのか?」というと……わからない、といった物語になっていて、冒頭からいきなり重たいというか。でも、そこがヤマトらしくて、とてもリアリティのある展開だなあと思いました。

──“ヤマトらしい”というのは、具体的にはどういうことでしょうか?

オリジナルのヤマトが放映されていた当時、子供向けのアニメーションは、「あいつを倒せば、あそこにたどり着けば、すべてクリアでハッピーエンド」っていうのがほとんどでしたが、ヤマトはそうではなかった。特に続編は…共感できるというか、我々のいまの生活や環境、状況にも通じるものがあって、リアルですよね。複雑な情勢があるということが、ちゃんと描かれているんです。



──鈴村さん演じる島 大介は2話から登場しますが、特に複雑な胸中のようで…。

第一章ではヤマトのクルーは解体されていますが、ヤマトというタイトルがついている以上、いつかまた乗るだろう、と。そのなかで、島がヤマトに乗るのか乗らないのか、実はいま、まだわからない状況で……今回、大胆なリメイクを施す可能性もゼロではないので、どうか「乗らない」という選択肢だけはしないようにしてもらいたいなと(笑)、個人的には思っています。

──今作では、ヤマトのクルーを演じたキャストのみなさんが再び集まって収録されていますが、前作と比べて、現場の空気に違いなどは感じられましたか?

まだ一章しか録っていませんが、僕は「何も変わっていない」と感じましたね。みんなスッとお芝居に入っていて、「ああ、あのときの雰囲気だなあ」と思えました。前作の収録って、すごい情熱的だったんですよね。

──「地球を救うために、イスカンダルへ向かう」という使命を持ったキャラクターたちを演じる、という意味で?

そうですね。みんな本当にヤマトに乗っているような気分で。収録していたのが、ちょうど暗いスタジオで……ヤマトの艦内に見えてくるような瞬間があって(笑)。そういった重い使命を持って立ち向かって、勝ち抜いた人たちが、3年後に脱力しているところから今作は始まるわけですが、その感じすらも再現されているアフレコ現場かなと思いました。

──2話で元クルーたちが集まるシーンは特に印象的ですね。

スタジオでもみんな、「また集まったね」っていう雰囲気で、いまのドラマにぴったりの空気感のままアフレコできているかなあと思います。前作を引き継いでいるからこそ、いま起きている脱力だったり、地球の現状に対する虚無感みたいなものが出やすいんでしょうね。そういった意味でも、とても良い現場だなあと思いますね。



──新たな敵のような存在も出てきて、今作もまたワクワクさせられますね。

ワクワクしますねえ。シナリオがワクワクするように作られていて…虚無感もありつつ、「君たちは、それを抱え込んだままじゃないだろう」ってことをちゃんと描いているので、いまの状況をこれからどう打開していくか。いまはまだヤマトに乗るみんなの心がひとつになっていないなか、それをどう打破していこうか、それぞれがモヤモヤしている状況なんですよね。

──観ている側も「どうなっちゃうんだろう?」という不安を抱えながら、「でも彼らならば、なんとかしてくれるだろう」と期待感も高まる第一章になっています。

そうですね。シナリオを読むかぎり、彼らはなにかしらの統一感によって牽引されていって、現状を打破していくだろうという期待感に溢れています。フィルム自体もそういう雰囲気がよく出ていて、ものすごく良い一章だなあと思います。艦隊戦が行われたり、ハードなアクションシーンが展開されるかというと…前作の最終章とかに比べると、まだ地ならしの部分ですが、とてもワクワクする内容になっているのは見事だなあと思いますね。



熱血漢の古代と参謀役の島 2人で1つの名コンビ



──2話では、小野大輔さん演じる主人公・古代 進と島との距離が、前作よりも離れている印象でした。アフレコ現場での小野さんとのやりとりについて、意識された部分などはありましたか?

古代と気持ちをぶつけ合うシーンがあるんですけど…最初、島を演じる僕のほうは、わりと淡々とお芝居したんです。それに乗ってくれたのか、古代役の小野くんも淡々とお芝居して、テストではふたりで静かに言い合うシーンになったんですが…「そうじゃない」と。

──羽原(信義)監督からの指示ですか?

そうですね。やっぱりここは、お互いに思いがぶつかり合うシーンにしたいと監督から言われて。それで、演出的にはぶつかり合うような表現になったんですけど。それでも…古代との温度差という点で言えば、古代ほど乗っていかない感じのお芝居を、僕のほうからはやらせていただきました。

──乗っていかない?

古代は言うなれば熱血漢で、思ったことを実現させるために、行動で表現していくタイプですが、島はどちらかというと…参謀的な立ち位置で、古代をなだめるようなことも過去ずっとやってきたんで。そういう意味で、古代が来れば来るほど、島は「まあ落ち着けよ」と(笑)。

──ぶつかりながらも、島のほうが冷静な印象ですね。

今回の2話に関しては、その関係性が面白く描けているなあと思いましたね。古代の根拠のない…情熱的な(笑)、「とにかく行くしかないんだよ!」っていう姿勢に対して、「いや、現実も見なさいよ」って理論的に説き伏せていく島…。

──それぞれの持ち味が出ているシーンになっています。

そのふたりが今後、どうやって同調していくのかも楽しみですよね。おそらく、古代はあのまま突き進んでいく…だからこそ主人公だし、前作で沖田艦長が発揮していた“打破する力、打開していく力”、これはヤマトのひとつのキーワードになっていると思うんですが、それを古代は確実に受け継ぐはずなので。



──その古代を島がコントロールしていく…。

そうですね。古代はときに無茶だと思うことをやるんですが、きっと島はそれを上手に、まさに“舵取り”しながら、航海長として、そして古代の操縦桿として(笑)、うまくやっていくのかなあと感じられる、ふたりのシーンになったかなあと思いますね。

──ちなみに鈴村さんご自身は、古代と島、どちらのタイプでしょうか?

どっちタイプかぁ…僕は全部持ち合わせていたいなと、いつも思うんですよね。古代のような切り開く力と、島のような冷静に分析する力の、両方ある人間でいたいと思います。そういう意味では、ヤマトにおいて古代と島っていうのは、名コンビとして描かれてはいますが…ふたりでひとつというか(笑)、理想的な人間像は、あのふたりが混ざった人間なのかなあと思うんですよね。

──おっしゃる通り、古代と島は、ふたりいることでバランスが保たれている部分があると思います。

そうなんです。島の言っていることはものすごく共感できるし、でも、古代の言っていることも、僕はすごく素敵だなあっていつも思います。どちらも共感できる。だからこそドラマが生まれるし、物語が牽引されていくんでしょうね。だから、こうやって改めて分析しながらしゃべっていくと、とてもよくできたキャラクターたちだなあと思いますよね(笑)。