認知症に特化の保険が登場。不安な人は加入すべき?

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厚生労働省の調査によると、団塊の世代が75歳以上になる2025年の認知症の高齢者数は約700万人。65歳以上の5人に1人が認知症になる勘定だ。

高齢期の介護費用は、同じ介護度でも認知症があるかどうかで異なるというデータもある。たとえば公的介護保険の「要介護1」の場合、1カ月の介護費用の平均は、認知症がなければ2.1万円だが、認知症が重度になると5.7万円。認知症の有無によって、2倍以上の差が出る(家計経済研究所「認知症の状態別にみた費用」より)。

こうした社会的背景をもとに、今年になって相次いで発売されたのが認知症の保障に特化した保険だ。

まず、2月に発売されたのが太陽生命の「ひまわり認知症治療保険」だ。アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症など脳組織の変化による「器質性認知症」で、時間、場所、人物のいずれかの認識ができなくなり、その状態が180日間継続すると、一時金300万円が支払われる。

ただし、この保険は加入条件が緩やかな「引き受け基準緩和型」のため、持病のある人でも加入できる可能性が高くなるものの、健康な人には保険料が割高になる(後述)。また、加入から1年以内は、保障額が半額に減額されることも覚えておきたい。

次いで、4月に取り扱いを始めたのが朝日生命の「あんしん介護 認知症保険」だ。こちらは、公的な介護保険の「要介護1」以上と認定され、かつ認知症を判断する特定基準を満たすと、年金60万円または一時金300万円が支払われるというもの。保険金の支払いを、公的介護保険に連動させたわかりやすさに加えて、認知症になった後の保険料は免除されるのが特徴だ。

ただし、一時金300万円(保険期間終身、50歳で加入)の場合の月払保険料は、太陽生命が男性4897円、女性7276円。朝日生命は、男性2010円、女性2388円。太陽生命のものには、認知症以外に七大疾病や骨折などの保障もセットになっているが、認知症にならなければその部分の給付金は受け取れず、保険料は掛け捨てになる。

認知症が発症し、認知症高齢者グループホームに入居するなら、月額費用のほか、数百万円の入居金が必要になることもある。認知症保険の加入を検討する場合は、保険加入の優先順位とともに、認知症になる確率や家族がどれだけ介護に時間・労力・コストを割けるかなど、総合的に現状を整理して判断したい。

今年3月1日に認知症の高齢者による列車事故の最高裁判決が出たことも、認知症に特化した保険が注目される要因となっている。今回の判決では、家族の監督責任と損害賠償(約360万円)は問われなかったが、適切なケアを怠れば賠償請求される可能性も示唆する判決内容となった。

万一、列車事故などで損害賠償請求が認められると莫大な賠償額になることもある。実際、1992年の列車とダンプカーの衝突事故では、1億円を超える賠償額の請求があった。高額な損害賠償をカバーするには、認知症保険よりも損害保険会社の個人賠償責任保険が向いている。誤って他人をケガさせたり、物を壊したりしたときに賠償金などを支払うためのもので、最近、損保大手などが補償対象を拡大。離れて暮らす親の補償もカバーできる商品もある。

不安の正体は何なのか。よく見極めて、適切な保険を選ぶようにしたい。

(ファイナンシャルプランナー 黒田尚子 構成=早川幸子)