旅客機の安全運航のため、貨物はフライト毎に搭載位置を計算され、積み込まれる(写真出典:fer737ng/123RF)。

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2016年4月、「重量管理システム」の不具合で航空便が遅延、欠航するというトラブルがありました。航空機はバランスまで含め、重量を厳格に管理しているのです。が、乗客の体重測定は行いません。もし力士団体が搭乗した場合、問題はないのでしょうか。

「重さ」と「重心位置」の2大要素

 2016年4月1日(金)、JAL(日本航空)の「重量管理システム」に不具合が発生し、全国の空港で同社の航空便が遅延、欠航しました。

「重量管理システム」とは、その名のとおり、航空機の重さを計算するシステムです。「自重」といわれる機体やエンジン、機内外の装備といった“航空機そのもの”の重さに加え、便によって変動する乗客や預け手荷物、貨物、燃料などの重さをフライトごとに計算するもので、安全運航には欠かせません。

 そもそも航空機は、装備されたエンジンの性能や機体の構造などから、離陸できる最大の重量が決まっています。また、航空機が重ければ重いほど離陸滑走に時間を要するため、たとえば出発空港の滑走路が短い場合はさらに重量を抑えなければなりません。このほか天候や風、気温などの状況によっても重量の制限値が変わり、その範囲内に収まるよう調整する必要があります。その数値を細かく算出するのが、この「重量管理システム」なのです。

 また重量だけでなく、航空機が飛行するときの重心位置も算定しています。釣り合っている天秤のどちらかに重りを加えると一方が傾くように、旅客機も載せる荷物の重量が偏ったり、乗客の座席配置によってはバランスを失ってしまいます。ボーイング777などの大型機にもなると離陸時には300トンを超える機体もあるため、バランスを保つことは安全飛行のために大切な要素のひとつです。

 この「重さ」と「重心位置」は航空会社がフライトの前に必ず確認しなければならないことで、「ウェイト・アンド・バランス」とも呼ばれています。

あえて重くして離陸する場合も

 旅客機の運航はパイロットや客室乗務員、空港の地上係員や整備士など、乗客の目に見える場所で働く人たちのほか、裏舞台で支える人たちがいて初めて成り立ちます。

 そのうち「ロードコントロール」と呼ばれる業務では、乗客の預け手荷物や貨物などを客室床下にある貨物室へどのように搭載するか計画し、航空機が地上を走行するときも、上空を飛行するときも安定性を保てるように、その重量や重心位置が制限の範囲内に収まるよう調整します。

 重心位置は、おもに貨物の積載場所を調整することでコントロールしていますが、貨物の配置だけで調整しきれない場合には「バラスト」と呼ばれる鉛の重りを積んで、最終的に均衡を保つようにしています。

 そして航空機が出発する前に、乗客の人数や座席配置、手荷物の個数、貨物の重量や重心位置などの最終的な情報が機長へ知らされます。機長はこのデータを確認しなければ、出発できないことになっているのです。

搭乗時に行わない体重測定 乗客が力士の団体でも大丈夫?

 航空機全体の重量を算定するにあたり、貨物の重さや燃料の搭載量は厳密に測られています。またチェックイン時には、乗客が預けた手荷物の重さも計測されます。

 手荷物を預けたとき、一定の重さを超えた場合には超過料金を徴収されることがありますが、これは航空機の総重量に制限があるため。乗客の荷物が機体の重量に影響しないよう、ひとりあたりの預け手荷物の重量を制御する目的があるのです。

 一方で、乗客の体重が測定されていないことにお気づきでしょうか。人間の重さは、たとえば、大人はひとりあたり65キログラム、機内に持ち込む手荷物はひとつ10キログラムというように、平均値で算出しています。特に男性は65キログラム以上ある人も少なくないかもしれませんが、女性や子供の重量で、たいていは上手い具合にバランスがとれるようになっています。

 しかし、力士や身体の大きなスポーツ選手などが搭乗する場合は、その限りではありません。大人の標準体重の2〜3倍にもなると計算に狂いが生じる可能性があるため、事前に体重のデータを提出してもらうといった特別な対応が取られています。

 このように、旅客機を運航するにあたって出発前には重量や重心位置が綿密に計算され、コントロールされています。また、機内での座席移動が重心位置に影響する可能性も。乗客にとって身近なことが、意外かもしれませんが航空機の安全運航に関係しているのです。