学生の窓口編集部

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チグリス川とユーフラテス川によって育まれた「メソポタミア文明」は世界最古の文明といわれています。メソポタミア文明は今から5,500年ぐらいも前にシュメール人によって築かれましたが、都市、文字、法など現在に通じる文化がありました。そしてすでに現在と同じような「職業」もあったのです。

■くさび形文字のおかげでくわしくわかる!

教科書で習ったようにメソポタミア文明には「くさび形文字」という独特の文字がありました。今から何千年も前の文明について私たちが知ることができるのは、くさび形文字で記述された粘土板が多数出土するからです。その粘土板には実にさまざまな貴重な記録が残されています。今回紹介する「職業リスト」もその一つです。

■「職業一覧」が残されている! 「サル回し」もいたよ!

メソポタミア文明ではすでに都市生活者がいました。今から4,500年近くも前なのにです。都市に暮らす人たちは、自分の食い扶持を得るためにそれぞれに職業を持たないといけませんね。

そのころすでに分化された職業があったことが分かっています。その「職業名表」が出土しているのです。

「初期王朝期表E」には、行政府の官職名に始まって220の職業名が記載されているそうです。小林登志子先生の『文明の誕生 -メソポタミア、ローマ、そして日本へ』(中公新書)から引用してみましょう。

1.エンシ

2.サンガ職

4.監督官

6.ヌバンダ職

7.将軍

8.小姓

9.大スッカル職

11.通訳

13.料理人

16.外科医

17.ニムルギ職

18.大工

19.銅工

22.革なめし

24.印章彫師

25.宝石細工師

26.鍛冶屋

27.歌手

28.蛇使い

32.縮充(縮絨)工

33.漂白人

34.藺草(いぐさ)のマットづくり

40.陶工

45.漁師

48.理髪師

49.執事

53.女奴隷

54.男奴隷

86.船乗り

87.商人

91.校長

117.祓魔師(ふつまし)

132.庭師

(『文明の誕生 -メソポタミア、ローマ、そして日本へ』P.36より引用)

*……番号は研究者が便宜的に付けたもの。また、本では番号は漢数字表記であるのを筆者がアラビア数字に直しています。

1の「エンシ」は王様のことで、王様からずらっと220の職業が並んでいるのです(上記はその中からのピックアップです)。小林先生によれば、

2.サンガ職 ⇒ 神殿の最高行政官

6.ヌバンダ職 ⇒ 組織運営の実際の責任者

スッカル職 ⇒ 高位だと「宰相」、下位だと「従者」

117.祓魔師(ふつまし) ⇒ 「エクソシスト」のこと

だそうです。

また、バビロニアには「サル回し」がいたことも分かっています。これは、紀元前2000年前のものとされるテラコッタの像が出土していることからも分かります。肩に一匹、もう一匹を足元に連れたサル回しの姿を描いていて、足元のサルは笛を吹いています。

こうして並べてみますと、現在の職業はすでに4,000年以上も前にあったものがあるということが分かります。必要となる職業は何千年たっても変わらないのですね。「エクソシスト」はもうないだろと思うかもしれませんが、いえいえ、実はまだあります。2014年に「国際エクソシスト協会」がバチカンによって承認されているのですから。

今回引用させていただいた小林先生の『文明の誕生 -メソポタミア、ローマ、そして日本へ 』には、メソポタミア文明がいかに発達した素晴らしいものであったのか、日本人のよく知らないことが詳細に書かれています。

なにせビルを造るときに行う「定礎」のセレモニーも実はメソポタミア文明が発祥なのです! もし興味を持ったらぜひ読んでみてください。

⇒小林登志子『文明の誕生 -メソポタミア、ローマ、そして日本へ 』(中公新書)

http://urx.nu/n4b9

(高橋モータース@dcp)