大災害時にはスプーン1本が強い味方になる
東日本大震災の記憶もまだ生々しいなか、私たち日本人は次の巨大地震に備えなければならない。
今後30年以内に60%の確率で発生するともいわれる南海トラフ地震は、最大でマグニチュード9クラスの“超巨大地震”。国の有識者会議が発表した被害想定は、最悪で死者32万3000人という衝撃的な数字だ。
このような巨大地震が引き起こす建物崩壊、津波、大規模火災などを生き残るには、“運”が一番大きなかもしれない。それでも、その運をたぐり寄せ、少しでも生存確率を高めるために、いまのうちから個人レベルでサバイバル能力を高めておくことが大切だ。
こういった事態では、身近な道具が思いのほか役に立つ。例えば、1本のスプーンだ。
人が生まれてから最初に使う道具が、スプーンといわれている。しかし、役立つのは赤ちゃんのときだけではない。実は人間にとって、スプーンほど万能の工具はないのだ。
地震などの際は、大工仕事に使うような工具類はガレキに埋まるなどして取り出せないことが多い。非常事態のなかで、ゆっくり探している時間などないだろう。
そんなときは、見当たらない工具の代わりに、身近なもので代用する知恵が必要になる。そして、スプーンこそが、最も身近な万能工具になり得るアイテムだ。
食事以外にも、ネジを外すマイナスドライバー、テコの原理を使ってクギ抜きや栓抜き、さらにガラス割りやスコップ、包丁の代わりとしても使うことができる。缶の角を狙えば缶切りにもなる。
ただし、すぐにフニャフニャ曲がってしまうような安物はダメ。丈夫で頼りになるのは、硬いステンレス製のカレースプーンだ。裏に「SUS304」「18‐8 STAINLESS」などの品質表示があるか確かめよう。
このカレースプーンをカバンに1本、机の引き出しに1本、枕もとに1本、そして玄関の下駄箱に1本入れておくだけで、いざというとき強い味方となってくれるはず。ちょっとした備えで“生存率”はグンとアップするのだ。
(取材・文・撮影/近兼拓史)
■週刊プレイボーイ53号「オレたちを襲う巨大地震、凶悪犯罪、貧困を生き延びる 都市サバイバル実践テクニック」より