郵政民営化 公金投入で曲がり角を迎えた
2007年の郵政民営化から約20年を経て、公共性の高い郵便事業が慢性的な赤字体質に陥っている。
政府が新たに公金を投入することになり、民営化は曲がり角を迎えた。グループ全体の経営改革を迫られよう。
全国2万4000に上る郵便局網を維持するために、交付金制度を創設することを盛り込んだ改正郵政民営化法などが成立した。
自民党が中心になり議員立法として推進した法律だ。持ち株会社である日本郵政が国に支払う株式の配当金などを原資に、郵便事業に年650億円規模を支援する。実質的な公金の投入となる。
14年ぶりの本格改正で異例の措置を取ったのは、デジタル化の進展で郵便・物流事業が23年度から3年連続で営業赤字となり、苦境から抜け出せないためだ。このままでは全国の郵便局網を維持できない恐れがあった。
他方で、過疎地が広がる中、郵便局は、郵便や金融、公共サービスの窓口など、地域インフラとしての役割が高まっている。
郵便局の公的な役割を再確認すべき転換点にある、ということだろう。改正法で、自治体からの受託業務を日本郵便の「本来業務」に追加したのは妥当だ。
小泉元首相が推進した民営化は、「官から民へ」をキャッチフレーズに、莫大(ばくだい)な資金を集めていた郵便貯金や簡易保険を郵便事業から切り離して民営化し、効率化を図ることを狙いとしていた。
12年の法改正で、「できる限り早期に」全株を売却することとし、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式割合は5割弱に低下した。
だが、今回の改正法では、日本郵政が2社の株式を3分の1超保有する仕組みを当分の間維持することを義務づけた。民営化路線の後退ではあるが、郵便事業が金融2社への依存度を高めている実情を無視するわけにもいくまい。
ただし、公金を投入し、民営化路線を見直す以上、企業体質の変革や収益の向上策が不可欠だ。
19年にかんぽ生命による不正な保険販売が発覚した。25年には日本郵便が配達時の酒気点検などを怠り、運送車両の大規模な使用停止処分を受けた。官業体質を引きずる内部統制の甘さは深刻だ。
物流効率化など課題は多い。サービス水準が低下しないよう配慮しながら、集配拠点の集約化や人員削減を進めることは必須だ。顧客本位の改革を徹底しなければ国民の理解は得られない。
