オランダ戦で左膝を負傷した久保。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 オランダ戦で左膝を痛めた久保建英の全治は、現時点でも明かされていない。現地では「なぜ広報は状態を公表しないのか」という声も聞かれたが、日本代表にとってそれは極めて自然な対応と言える。

 なぜなら、ワールドカップでは情報そのものが武器になるからだ。

 主力選手のコンディションや出場可否は、対戦相手にとって重要な分析材料となる。久保が出るのか出ないのか。それだけで相手は準備すべき戦術やマッチアップを変えなければならない。

 逆に言えば、日本が情報を伏せることで相手は複数のプランを準備せざるを得なくなる。情報を与えないこと自体がアドバンテージになるのだ。

 その姿勢はチュニジア戦前日の会見でも見て取れた。
 
 森保一監督は「オランダ戦からどれだけメンバーを入れ替えるのか」「前回の試合で見えた課題をどう改善するのか」といった質問に対し、回答を控えた。

「皆さんが知りたいことはできるだけ話していきたいと思っていますが、日本人の皆さん、記者の皆さんも日本代表チーム、日本サッカーチームの一員です。出た情報が相手にどれだけ安心を与えるかという点も踏まえて考えていただければと思います」

 この一言に、森保監督の考え方が凝縮されている。

 会見はメディアやファンのための場である一方で、対戦相手も当然チェックしている。勝利につながる可能性がある情報なら守る。それもまた指揮官の重要な仕事だ。

 選手たちも徹底している。

 オランダ戦前、堂安律は対戦相手に関する質問への言及を避けた。また、U-19日本代表とのトレーニングマッチでの収穫と課題について問われた冨安健洋も、「それは僕が話すことじゃないので、森保さんに聞いてください」と詳細を明かさなかった。

 決して不親切なのではない。チームとして情報管理を徹底しているのである。

 かつては積極的な情報発信が重視された時代もあった。しかし、分析技術が飛躍的に進歩した現代サッカーでは、練習内容の断片、選手の発言、負傷者の状態といった些細な情報さえも、相手にとっては価値のあるデータになる。

 だからこそ、日本代表はピッチの中だけでなく、ピッチの外でも戦っている。

 何を語り、何を語らないのか。その線引きは偶然ではない。久保の状態を伏せる判断も、森保監督が会見で言葉を選ぶ姿勢も、すべては勝利の確率を少しでも高めるためだ。

 ワールドカップでの戦いは、キックオフの瞬間から始まるわけではない。森保ジャパンの“情報戦”は、すでに始まっている。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長/現地特派)
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