自民党議員らに対する捜査の裏側で、ヤメ検弁護士たちが暗躍し…大御所議員たちの保身のために歪められた「裏金問題の深層」
裏金事件はなぜ単なる「収支報告書のミス」で片付けられたのか……。東京地検のストーリーに合わせた後付けの証拠作り、その決定的な文書を手に入れた!
【前編を読む】自民党清和会「裏金事件」に新たな大問題が!巨大犯罪を矮小化するために作られた決定的証拠文書を入手
ヤメ検弁護士が検察に加担して……
東京地検特捜部が清和会の裏金議員らの有罪を立証するためには「清和研からのキックバックは、X議員のYという政治団体に宛てた寄付だった」などとカネの趣旨や流れをはっきりさせる必要があった。ここで登場するのが「確認書」だ。
筆者は、清和研の裏金議員が提出したすべての確認書を入手した。書式はいずれも共通で、本文に〈甲(清和研)と乙(議員側)とは、下記のとおり、甲が乙に寄附し、乙がこれを受領したことを確認した〉と書かれている(丸かっこ内は引用者)。また捜査対象の5年間('18〜'22年)のキックバック(寄付)の金額が1年ごとに明記されていた。
そのうえで、清和研の会計責任者(前出の事務局長が兼任)と、議員側の政治団体の会計責任者がその内容を確認して押印していた。
このような書類を議員側が提出したらどうなるか。「キックバックは裏金ではなく、寄付だった」と認めることになり、収支報告書に記載するべき寄付の不記載が明白になる。同時に、議員や事務所関係者の供述だけでは特定できなかった、寄付の帰属先の政治団体もはっきりすることになる。
本誌が独自に入手したメールなどの記録から、議員側が、確認書への押印を求められたのは'24年1月上旬だったことがわかっている。
「これは、自供調書になる」
このとき捜査は大詰めを迎えており、検察が事後的に証拠を作るような動きに反発した一部議員のあいだでは、このような声も上がったという。
ただ、議員側に確認書を送ってきたのは検察ではなく、あくまで清和研である。清和研が、所属議員の立件につながるような不可解な動きをしていたのだ。その背後には次のような事実があった。
「確認書の提出を渋る議員のもとを、清和研の意向を汲んだ弁護士たちが訪ねてきて、説得にあたっていた。その弁護士たちはいずれも検察OBのヤメ検弁護士でした」(清和研に所属していた議員)
つまり、裏金事件の立件をめぐって攻防を繰り広げている議員と検察とのあいだで、ヤメ検たちが、検察に加担していたのだ。
捜査に関わったヤメ検は多数いた。なかでも「安倍派5人衆」と呼ばれた清和研の中枢メンバーのうち、萩生田光一幹事長代行を除く4人は、'23年末に捜査が始まった当初から、個別にヤメ検から助言を受けていたという。
筆者の取材によると、西村康稔選対委員長には貞弘賢太郎氏、松野博一元官房長官には熊田彰英氏、世耕弘成元経産相には平尾覚氏、高木毅元国対委員長には名取俊也氏というヤメ検が対応していた。
「裏金の実態を知る立場にあった西村氏たちは、ヤメ検を通して検察側となんらかのやりとりをしていたのではないか。派閥の意向に従う立場の議員からは、彼らだけが抜け駆けしているように見えた」(清和研関係者)
「裏仕事」を遂行した弁護士
検察は、前述したように確認書によって寄付の金額などを特定した。そして立件後に、清和研と各議員の収支報告書を訂正させている。その作業の中心を担ったとみられるのが、松田綜合法律事務所のヤメ検、片岡敏晃弁護士や岩月泰頼弁護士らだった。
「片岡弁護士たちは、収支報告書の訂正作業が本格化した'24年1月になると、東京・平河町にあった清和研の事務所に出入りするようになり、事務局長らと対応にあたった。各議員の事務所に、確認書を送付する作業にも関わっていたと考えられます」(同前)
こうした「裏仕事」の対価なのか、清和研の'24年の収支報告書によると、同法律事務所に対して、弁護料の名目で、12件で合計約3310万円が支払われていたことが確認できる(同法律事務所は「個別業務の内容については、守秘義務等の観点から回答を差し控える」などと答えた)。
また、確認書提出などの実務に関して、各議員事務所の相談に乗っていたのが、衆院側では名取弁護士、参院側では貞弘弁護士だった。
「議員側の相談に応じたヤメ検がこだわったのが『キックバックを受けとっていた政治団体はどこか』を明らかにすることでした。ヤメ検が行っていたことは、まさに検察捜査の側面支援だったと言える」(前出の議員)
これまでに指摘した事実関係について各弁護士に確認すると、貞弘弁護士は「守秘義務の対象であるため、お答えできない」などと回答。熊田弁護士の事務所は質問状の受けとりを拒否した。平尾弁護士は「今回は対応が難しい」などとした。名取弁護士からは期限内に回答はなかった。
事件は「振り出しに戻る」かもしれない
複数の国政選挙を経たこともあり、自民党を揺るがせた裏金事件はいま、政局の後景に退いている。しかし裏金事件には、明らかになっていない暗部があったのだ。
それは、「裏金」を寄付と見なすことで、「収支報告書への記載ミス」に罪を矮小化した検察の判断だった。また、確認書のようなつじつま合わせの文書を作成するという、検察の捜査手法にも疑問が浮かぶ。
大野氏らの判決公判では、一連の裏金事件では初めて、政治家に対して正式な裁判を踏まえた司法の判断が下る。
裁判の争点の一つに「キックバックは寄付か否か」が含まれている。この争点に対する裁判所の判断が、裏金議員が有罪か無罪か、検察の捜査が妥当だったかどうかを決めるポイントになる。
「検察側は、有罪立証のため、寄付の帰属先の政治団体を特定しなければいけないのに、その証拠がないので、確認書という証拠を事後的に作りあげようとした。しかし確認書の存在によって、寄付がどの団体の収入かもともと決まっていなかったことが、逆説的に示されたのではないでしょうか」(前出・郷原氏)
検察の捜査の欠陥が指摘され、裏金事件の解明が振り出しに戻る――間近に迫った判決言い渡しの法廷で、そのような結末が訪れてもおかしくはない。
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「週刊現代」2026年6月22日号より
