背景に「ライブインフラ」の圧倒的格差 K-POP公演が“本場”韓国より日本で多いワケ

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K-POPの本場が韓国であることは、改めて言うまでもない。だが、K-POPコンサートが多く開催されているのは、実は日本である。

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韓国から発信された音楽でありながら、トップアイドルの大規模な公演となると、本国よりも日本のほうが開催回数も動員規模も大きくなるケースが目立つという。

韓国のSBSは最近、トップクラスのK-POPアイドルグループによる公演が、韓国よりも日本のほうで多く行われていると報じた。

報道の中で事例として取り上げられたのは、人気ガールズグループのaespaである。aespaが先頃終えたワールドツアーでは、韓国での公演が3回にとどまったのに対し、日本では地方都市を巡りながら15回ものステージに臨んだという。動員された観客の数も、日本のほうが10倍以上多かったそうだ。

これは、aespaに限った特殊な事例ではない。K-POPは韓国で誕生したが、それを巨大なライブビジネスとして受け止めるための器は、日本のほうが大きいのである。

aespa(写真提供=OSEN)
日韓で明暗を分ける会場インフラの格差

最大の要因は、会場インフラにおける格差だ。

日本には全国の主要都市ごとに収容人数1万人前後のアリーナクラスの会場が存在する。さらに、東京ドーム、京セラドーム大阪、バンテリンドームナゴヤ、みずほPayPayドーム福岡、札幌ドームといったドーム級の会場も数多くある。

K-POPアーティストにとって、日本は「東京だけで1回やる」ような市場ではない。複数の都市を巡回し、公演を重ねることで、数十万人規模の動員を十分に狙える市場なのである。

その一方で、韓国の事情は異なる。

日本には4万人以上を収容可能なドーム球場が5カ所存在するが、韓国には同規模の常設会場が一つも存在しない。電力供給や音響、舞台設備などの基礎が整った公演場は、首都圏であっても数えるほどしかないのが現状だ。

K-POPの演出は年を追うごとに大規模化している。巨大なLED、昇降リフト、特殊効果、バンドセット、複雑なステージ転換、映像演出といった公演を安全かつ安定して運営するためには、単に客席の数が多いだけでは不十分である。

音響や電力、搬入経路、控室の確保、周辺の交通機関、宿泊施設、さらには観客の誘導に至るまでを考慮すると、K-POPの大型ライブを網羅できる会場は極めて限られる。

すなわち韓国には、K-POPの旺盛な需要を受け止めるインフラが不足しているのだ。

BLACKPINKのコンサートが行われた高陽スタジアム(写真提供=OSEN)

K-POPの本場でありながら、そのパフォーマンスを大規模に体感できる機会が乏しい。そこに、現在の韓国ライブ市場が直面している皮肉な構図がある。

会場の有無だけでなく、観客層の広がりにおいても格差が見られるという。

SBSの報道によると、日本では幅広い世代が一体となってK-POPのライブを楽しむのに対し、韓国では観客層が20代から30代、線引きとして女性に偏っているとされている。

当然、韓国にも熱狂的なK-POPファンは多数存在する。ファンダムが持つ熱量という側面において、韓国はきわめて強力な市場だ。しかし、大規模なツアーを何度も成立させるためには、コアなファンだけでなく、より広範な観客層を巻き込むことが不可欠となる。

日本においては、長年にわたりライブを楽しむ文化が全国的に定着している。K-POPのファンのみならず、家族連れやライト層、複数のグループを応援する音楽ファンなど、観客の裾野が非常に広い。

ここに、K-POPにおける逆転現象が浮かび上がる。

本国のファンが現地でのコンサート開催を待ち望む一方で、日本のファンは自国にいながら何度もK-POPのステージを鑑賞できる。そればかりか、日本のファンの中には、さらに韓国まで足を運んで公演を観たいと考える人まで存在する。

K-POPは韓国で生まれたものの、ライブビジネスの市場としては日本のほうが運営しやすい。これが冷徹な現実である。

国家規模で動き出した韓国の公演場建設構想

韓国側も、この課題をただ傍観しているわけではない。

K-POP公演による経済効果が拡大する中で、韓国国内では大型公演会場の必要性が何度も叫ばれてきた。5万人を収容する「国家象徴公演場」の建設プランや、K-アリーナ特別法をめぐる議論も浮上している。

李在明(イ・ジェミョン)大統領は5月20日に開催された国務会議兼非常経済点検会議において、現在建設が進められている2万〜3万席規模の公演場に関し、「それは少し小さい。国家象徴公演場が必要だ」と指摘した。

5万席前後の大型公演場を、国家的なランドマークとして確保すべきであるという構想だ。

文化体育観光部も、5万席規模の大型公演型アリーナを首都圏に建設し、2034年の完成を目指してプロジェクトを進める計画を明かしていると報じられている。

その背景に存在するのは、韓国におけるライブ市場の成長である。韓国内の興行市場は過去最大の規模へと拡大しているが、需要に対して供給が追いついていないのが実情だ。ソウル市内の大型公演場はすでに飽和しており、専用のエンターテインメント施設ではなく体育施設をレンタルして代替するケースも目立つ。

その結果、音響や演出の面で限界が生じたり、会場の争奪戦が発生したりしている。K-POPが世界に誇る産業へと躍進したにもかかわらず、その本拠地である韓国が、世界トップレベルのライブを満足に受け入れる施設を持てていないという矛盾が生じているのだ。

持続可能なグローバル産業へ向けたインフラの課題

会場不足に伴う問題は、単に「公演数が少ない」という事態にとどまらない。開催できる会場が限られれば、当然ながらチケットは熾烈な争奪戦となる。需要が一極に集中することで、不正転売の市場も拡大してしまう。

過去の事例では、定価19万8000ウォン(約2万円)のVIP席が、ネット上で800万ウォン(約80万円)という40倍を超える価格で取引されたケースも報告されている。このような転売問題の根底にも、需要に対して公演回数や提供される座席数が圧倒的に不足しているという構造的な問題が存在する。

K-POPが真のグローバル文化産業として今後さらに飛躍を遂げるためには、アーティストの人気や楽曲のクオリティに留まらず、会場や交通アクセス、宿泊施設、チケット制度、転売防止策までを包括したライブインフラの整備が不可欠となる。

日本でK-POPのコンサートが頻繁に開催されるのは、全国各地に大型の会場が存在し、地方都市を網羅できるツアーのネットワークが構築されており、幅広い観客層に支えられて公演を重ねてもビジネスが成立する土壌があるからである。

それに対する韓国は、K-POPの発信源でありながら、その巨大化したコンテンツを国内で十全に受け止めるための器が未だに不足している。

K-POPという存在が大きくなりすぎたがゆえに、韓国国内の興行インフラがその成長スピードに追いつけなくなっている現状があるのだ。

2022年にBTSのライブが行われた釜山アジアド主競技場(写真提供=OSEN)

SBSが報じた「韓国より日本でK-POP公演が多い」という現象は、K-POP人気が国際的な広がりを見せる一方で、その発祥の地が抱えるアキレス腱をも浮き彫りにした。

K-POPを産んだのは韓国である。しかし、それを巨大なライブエンターテインメント産業として受け止める会場の環境は、日本のほうが整備されている。

この歪んだ逆転現象を、どのようにして解消していくのだろうか。

K-POPが次なるステージへ進むためには、世界を魅了するクオリティの高い音楽だけでなく、その熱狂をしっかりと受け止められる場所を韓国国内に構築できるかどうかが問われているのである。

(記事提供=スポーツソウル日本版)