“お手玉”を演じた森下翔太(阪神の公式サイトより)

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 阪神・森下翔太が、まるで漫画のような“お手玉”を演じた。

 5月30日のロッテ戦の6回、友杉篤輝の左中間への飛球をグラブで弾くと、そこから4度にわたってボールを取り損ねた。慌てる姿も含めて、ファンの間では「今年の珍プレー大賞候補やろ」と話題になった。【久保田龍雄/ライター】

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ヘディング三塁打

 打球を捕り損ねれば、失点に直結することも多い外野守備。過去にも、外野手たちはさまざまな珍プレーを演じてきた。

 ヘディングといえば、中日時代の宇野勝が有名だが、その元祖的存在が、広島・山本浩二だ。

 1981年4月19日の巨人戦、1対4とリードされた7回2死。中畑清が左中間の一番深いところに飛球を打ち上げた。

“お手玉”を演じた森下翔太(阪神の公式サイトより)

 センターを守っていた山本は背走して打球に追いつき、捕球態勢に入った。ところが、一度はグラブの先に収めたボールが跳ね、おでこをゴツーンと直撃してしまう。

 ボールを見失っている間に中畑は三塁に到達。その後、広島は致命的な2点を失った。

 結果的に“ヘディング三塁打”を献上した山本は、中畑がカウント3-0から打つわけがないと油断し、慌てて打球を追いかけたという。振り向いた瞬間、「ボールが3つぐらいに見えた」状態だったそうだ。

 不幸中の幸いと言うべきか、“ミスター赤ヘル”の称号も形なしの大チョンボは、それから約4カ月後、8月26日の巨人戦で起きた宇野の“ヘディング事件”の強烈なインパクトの前に、すっかり霞んでしまった。

 後年、山本氏は「あれで元祖? わしの方は全く話題から消えてくれて助かった。宇野には本当にありがとうと言いたいよ」(2025年5月27日付スポーツ報知)と回想している。

膝でリフティングして見事キャッチ

 同じように、巨人時代の松井秀喜も外野で“ヘディング”を演じている。

 1998年5月6日の横浜戦、4対0とリードの2回2死。駒田徳広の中飛をダイレクトキャッチしようと試みた松井は目測を誤り、打球をオデコにゴツーンと当ててしまう。

 ボールがフェンス際を転々とする間に駒田は一挙三塁を陥れ、横浜は次打者・井上純の右前タイムリーで1点を返した。

 この珍プレーをきっかけに“マシンガン打線”が目を覚ます。巨人投手陣は2本の3ランを被弾し、6対7の逆転負け。結果的にヘディングの代償は高くついた。

 顔面に打球を当てながら、最後は曲芸のように捕球した例もある。巨人・長野久義のプレーだ。

 2018年4月22日の阪神戦、1点ビハインドの2回1死。梅野隆太郎のあわや本塁打という大飛球がセンターを襲う。

 長野はフェンス手前まで追いかけ、捕球態勢に入った。しかし、ボールはグラブの土手に当たったあと、顔面を直撃する。

 それでも長野は、お手玉しながら膝でリフティングして見事キャッチ。体を張ったパフォーマンスで間一髪アウトに仕留めると、「落球しないで良かった」という安堵感からか、苦笑いを見せた。

 これには、長打を確信してほくそ笑みかけた阪神・金本知憲監督も、「まさか……」と言わんばかりに唖然とした表情になった。

 このプレーで流れを引き寄せた巨人は、4回に岡本和真の勝ち越しタイムリーなど5長短打で4対1と一気に逆転。長野自身も7回に9点目のタイムリーを放ち、敵地・甲子園で阪神に3タテを食らわせた。

悪夢のような出来事

 次も阪神絡みの話である。

 1988年5月28日の大洋戦、8対2とリードした6回。先発・山本和行が無死二、三塁のピンチを招き、次打者・石橋貢にもレフトに本塁打性の大飛球を打たれてしまう。

 それでも、レフト・金森永時(1985年から1992年までの登録名。本名は金森栄治)はあきらめずに追いかけた。最後はラッキーゾーンによじ登って捕球を試みる。

 しかし、打球は無情にもスタンドへ。金森も勢い余って、頭からラッキーゾーンへ落ちていった。

 実況アナが思わず「ホームラン! 金森も一緒に入ったあ!」と叫んだシーンは、今でもコアなファンの間で記憶されているはずだ。

 外野飛球をキャッチしたところまでは良かったが、アウトカウントを間違えたことから、まさかの珍事が起きた例もある。2003年5月21日の巨人対ヤクルトだ。

 0対1の6回、ヤクルトは1死一、二塁で5番・鈴木健がレフトに大飛球を打ち上げた。

 ヤンキース時代にバーニー・ウイリアムスの守備固めで鳴らしたレフト・レイサムは、背走の末、フェンス際で好捕。これで2死となった。

 ところが、レイサムはスリーアウトになったと勘違いしていた。センター・斉藤宜之が三塁に送球するよう指差していたにもかかわらず、ボールを下手投げでスタンドにポイと投げ入れてしまった。

 ピンチを救った好守備の直後、マウンドでグラブを叩いて喜んだ高橋尚成も驚きの表情で「あーっ!」と叫んだが、もうどうにもならない。

 いったん帰塁した二塁走者・宮本慎也と一塁走者・ラミレスも、慌てて走りだした。

 審判団の協議の結果、カメラマン席にボールが入ったときと同じルール、つまりテイク・ツーベースが適用され、宮本が同点のホームを踏んだ。

 悪夢のような出来事に、ベンチの原辰徳監督もショックのあまり、へなへなと座り込んでしまった。

「何と説明していいのか。頭に血が上った状態になった。ちょっと考えられないね」(原監督)。

 騒然としたスタンドの反応で自らの大ポカに気づいたレイサムは「私の野球人生の中で一番恥ずかしいことをしてしまった。ファンにはいいことをしたが、チームにはひどいことをした」と平謝りするしかなかった。

 その裏、高橋由伸の決勝ソロが飛び出し、巨人が2対1で勝利したことが、せめてもの救いだった。

 冒頭で紹介した森下も、この試合で2本塁打を放ってチームの勝利に貢献した。藤川球児監督も「最後にチームが勝つことができれば」とフォローしている。

 森下のようにミスをしても、勝利に貢献すれば、笑い話として残る。外野守備の珍プレーには、野球の怖さと面白さが同居している。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部