身長の低さにコンプレックスを持っている男性は筋トレをしたり身長を伸ばす手術を検討したりする可能性が高い

自分の体形や体重に対する不満を抱えている人は多く、こうした不満を解消しようとダイエットや筋トレに励む人もいます。オーストラリアカトリック大学の心理学講師であるダニエル・タルボット氏らが行った研究では、自分の身長にコンプレックスを抱く人も、それを補おうとしてさまざまな行動に出ることがわかりました。
Full article: Compensating for Shortcomings?: Height and Its Behavioral Compensation Strategies
New research reveals how height insecurities are connected to daily habits
https://www.psypost.org/new-research-reveals-how-height-insecurities-are-connected-to-daily-habits/
タルボット氏は心理学系メディアのPsyPostに対し、「身体イメージに関する研究のほとんどは体重や筋肉量など、人が変えられる特徴に焦点を当てています。身長はほぼ固定されているにもかかわらず社会的に重要であり、魅力・地位・自己認識と結びついているため、これらとは異なります」と述べています。
特に男性の場合、高身長であることは社会的にポジティブな特徴であると見なされており、背の高い男性は魅力的かつ有能で、リーダー的ポジションに就く可能性が高いとのこと。そのため、理想的な身長に届いていない男性は深刻な不安や劣等感を抱く可能性があります。
女性の場合も高身長が社会的メリットをもたらすことがありますが、そのメリットはジェンダー規範によって制限される傾向があります。「男性の方が女性より背が高いもの」という社会的な期待があり、「男女のカップルでは女性より男性の背が高い方がいい」という暗黙の文化的ルールがあります。こうしたジェンダー規範により、背が高すぎる女性も身体的不満を抱えやすいそうです。
タルボット氏らの研究チームは、身長という容易には変えることができない特徴に不満を感じた時、人々がどのように反応するのかを調べる研究を行いました。研究ではオーストラリアの成人328人を対象に、包括的なオンライン調査を実施。被験者は年齢・性別・民族を回答したほか、身長をcm単位で自己申告しました。被験者の平均年齢は24歳で、約73%が女性であり、全体的な身長はオーストラリア人の平均よりやや高かったとのこと。

被験者が自分の身長についてどのように感じているのかを評価するため、研究チームは「Negative Physical Self Scale-Short Subscale(ネガティブな身体的自己評価-低身長サブスケール)」という質問票を使用しました。この質問票では、「自分は背が低すぎる」といった主張にどの程度同意するかが尋ねられました。
また、研究チームは被験者が身長の問題を補うためにどのような行動を取っているのかを知るため、「身長を高く見せる靴を履くか」「脂肪を減らすためにダイエットをするか」「筋肉を増やすために筋トレをするか」「身長を伸ばすための手術を行った、あるいは検討したことがあるか」「集合写真など身長が目立つ状況を積極的に避けているか」「身長を低く見せるために猫背になるか」といった項目について質問しました。
結果を分析したところ、身長が低い人や自分の身長に不満を持っている人は、全体的にこうした代償行動を多く取る傾向が発見されました。タルボット氏は、「重要なのは身長そのものよりも、身長に対する不満の方であるように見えるということです。自分の身長に不満を持っている人は外見を変えたり、特定の状況を避けたり、身長を高く見せるための戦略を使ったりするなど、さまざまな代償行動をとる可能性が高いことがわかりました」と述べています。
こうした行動パターンは男性の間で特に顕著であり、身長が低い男性は身長を伸ばすための手術を検討したり、体脂肪を減らそうとしたり、筋肉量を増やそうとしたりする傾向が強かったとのこと。研究チームは、男性は社会が求める「男らしさ」の基準を満たすことのプレッシャーを感じており、筋肉質な体になることで身体的な優位性を示し、身長が低いという認識を補おうとしている可能性が高いと指摘しました。
一方、身長が低い女性の場合は背を高く見せるためにハイヒールや厚底靴を履く傾向が強く、これは男性にはあまり見られない行動でした。女性にとって身長を高く見せる靴は一般的なものであるため、極端な手段に頼ることなく身長を高く見せられる可能性があります。また、背の高い女性は猫背になったり、まっすぐ立つことを避けたりする傾向がはるかに高かったそうで、「女性は男性より背が低い方がいい」という社会的プレッシャーを受けていることが示唆されています。

結果を統計モデルで分析したところ、「不満」という感情が実際の身長と代償行動との間の重要な中間ステップとして機能していることも判明。データから「不満」という要素を数学的に取り除いたところ、ダイエットや筋トレに取り組む傾向は身長が低い人よりも、むしろ身長が高い人の方で強くみられることがわかりました。
つまり、単に身長が低いというだけではダイエットや筋トレといった行動にはつながらず、「身長の低さに強い不満を持つこと」が行動のきっかけになっていたというわけです。これは身体イメージに対する精神的苦痛こそが、日常的な行動の原動力であることを示しています。
今回の研究結果で示された関連性はそれほど大きいものではなく、身長は行動に影響を与える要因のひとつに過ぎません。また、ある一時点で収集されたデータのみを用いているため因果関係を証明することはできず、「身長の低い人は誰もが自分の身長に不満を持っており、代償行動を取っている」と結論付けることも不可能です。
タルボット氏らは今後、人々が身長に関する不安にどのように対処しているかについての研究を拡大したいと考えています。「私たちのより大きな目標は、見過ごされがちな身体イメージの一側面である身長への不満をより深く理解することです。現在、身長への不満がソーシャルメディアの利用・自尊心・デートへの自信・生活の質、その他の心理的結果とどのように関連しているのかを調べています」とタルボット氏は述べました。
