SNS投稿や海外サイト閲覧で政治リスクをスコア化…中国政府が開発を進める「デモ事前摘発AI」のディストピア
前編記事『求人サイトで工作員が暗躍、1万超の特許を不正取得…中国の暴挙に国際社会から非難が殺到している』で見てきたように、なりふり構わない中国の振る舞いは世界中からひんしゅくを買っているわけだが、足元の国内経済を見ると必死ぶりも納得の惨状が広がっていた。
世界の工場、実はもうボロボロか
中国地方政府の財政赤字が拡大の一歩を辿っている。
中国財政部の発表によれば、地方政府の今年第1四半期の収入が約3兆6600億元(約81兆円)だったのに対し、支出は約6兆5600億元(約145兆円)に達した。 地方政府は使ったおカネの半分しか賄えていない計算だ。
「ない袖は振れない」とばかりに、地方政府が補助金をカットすれば、これまで支援を受けてきた多くの企業が窮地に陥ることだろう。「世界の工場」と呼ばれる中国製造業の足腰は意外と弱いのではないだろうか。
中国でのカネの流れも悪くなる一方だ。中国人民銀行(中央銀行)は6月3日、「公開市場操作(オペ)でリバースレポの資金供給量がゼロだった」と発表した。今回の措置の狙いは、銀行システム内に滞留している資金を実体経済に回すことだ。
だが、効果は期待できないと言わざるを得ない。中国経済はかつての日本と同様、「流動性の罠(金利を下げても投資などが増えなくなっている状態)」に陥っている可能性が高いからだ。
不況のあおりを受ける人たち
6月に入り、大学入試のシーズンに入った中国で異変が生じている。中国教育部が発表した今年の全国統一大学入試(高考)の志願者数は、前年比45万人減の約1290万人と2年連続の減少となった。大卒者の就職難を受けて、若者は別の道を選択し始めている証左だと言われている。だが、不況が続いている限り、「いばらの道」に変わりはないだろう。
生活が厳しいのは若者ばかりではない。中国メディアは最近起きた大事故の犠牲者の多くが中高年であることに注目している。5月4日、内陸部の湖南省で起こった花火工場の爆発事故で37人、同22日、北部山西省で起こった炭鉱事故では82人が死亡している。
犠牲者の多くが農村部の中高年女性だった。彼女たちは農業収入の低下に加え、1人息子の住宅購入や子育て費用を支える事情から、危険な日雇い労働に従事せざるを得なかったという。
AIで反政府デモを抑え込み
ハイテク産業の隆盛に耳目が集まっているが、その陰で恩恵に浴することができず、取り残されていく人々は今後ますます増加することだろう。国民の不満に対処するため、中国政府も備えを強化している。
ニューヨークタイムズは1日、「中国政府は反政府デモに参加する可能性のある人物を事前に摘発するAI技術の開発を進めている事実が確認された」と報じた。
同報道によれば、過去の通信記録やSNS投稿、VPN利用状況、海外メディアの閲覧履歴などを統合し、「潜在的政治リスク人物」にスコアをつける仕組みが検討されていたという。
ハイテクを駆使して危機の芽を事前に摘み取るのは中国政府の常とう手段だ。だが、その手法の有効性はいつまで続くのだろうか。日本にとって厄介者になりつつある隣国の動向について、今後も高い関心を持って注視すべきだ。
著者のこちらの記事もあわせて読む『ブルームバーグもニューヨークタイムズも…海外大手紙が相次いで「低迷」を報じた中国経済の厳しすぎる現状』。
