電子書籍市場の拡大の中、「所有する喜び」を与えられる本。あえて紙で置いておきたくなる装丁とは【デザイナーの装丁惚れ】
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。
この記事の画像を見る

■「所有する喜び」を与えられる本こそ生き残れる
電子の普及に伴い紙媒体は衰退の一途。装丁も低コスト化の要請が多くなり、書籍に関わるデザイナーの思考回路はパラダイムシフトせざるをえない時代です。

このような時代の中、嶽本野ばら氏の書籍は、その装丁自体が一つの表現となって書店で異彩を放っています。こういう造本にこだわった書籍は版元との協調理解がないと完成されないはず、リスペクトです。今回取り上げた『ロリータ・ファッション』は松田行正氏、杉本聖士氏の装丁。一見、白い本。近づいて手に取ってもらえば、そのコンセプチュアルな美しさが際立ちます。装丁者の仕掛けの醍醐味が散見される一冊。解析すると意外に廉価な資材で設計されている、職人技です。

「電子で事足りる」時代だからこそ、あえて紙で。であれば「本を一つの立体物」として捉え、外側から本文に至るまで一貫した造本設計を行うことで、読者が本を手に取った時の体験(手触り、開く時の重み、インクの匂いなど)をデザインし、手放せない本になるように、と装丁者は心がけていきたいものです。「所有する喜び」を与えられる書籍こそ生き残れる。私のところからも今年、そういう本が上梓されます。
選・文:岡 孝治 写真:首藤幹夫
おか・こうじ●女性誌から情報誌まで多数のアートディレクションに携わる傍、児童、人文、文芸と幅広く書籍装丁を手がける。
第43回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。

『ロリータ・ファッション』
装丁:松田行正、杉本聖士
この記事の画像を見る

■「所有する喜び」を与えられる本こそ生き残れる
電子の普及に伴い紙媒体は衰退の一途。装丁も低コスト化の要請が多くなり、書籍に関わるデザイナーの思考回路はパラダイムシフトせざるをえない時代です。

このような時代の中、嶽本野ばら氏の書籍は、その装丁自体が一つの表現となって書店で異彩を放っています。こういう造本にこだわった書籍は版元との協調理解がないと完成されないはず、リスペクトです。今回取り上げた『ロリータ・ファッション』は松田行正氏、杉本聖士氏の装丁。一見、白い本。近づいて手に取ってもらえば、そのコンセプチュアルな美しさが際立ちます。装丁者の仕掛けの醍醐味が散見される一冊。解析すると意外に廉価な資材で設計されている、職人技です。

「電子で事足りる」時代だからこそ、あえて紙で。であれば「本を一つの立体物」として捉え、外側から本文に至るまで一貫した造本設計を行うことで、読者が本を手に取った時の体験(手触り、開く時の重み、インクの匂いなど)をデザインし、手放せない本になるように、と装丁者は心がけていきたいものです。「所有する喜び」を与えられる書籍こそ生き残れる。私のところからも今年、そういう本が上梓されます。
選・文:岡 孝治 写真:首藤幹夫
おか・こうじ●女性誌から情報誌まで多数のアートディレクションに携わる傍、児童、人文、文芸と幅広く書籍装丁を手がける。
第43回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。

装丁:松田行正、杉本聖士
