Ferrari

写真拡大

フェラーリの株価下落までが世界的ニュースとなったフェラーリ・ルーチェのワールドプレミア。一連の騒動は、キング・オブ・スーパーカーたる彼らの存在感を私たちに再認識させたと言っても過言ではない。

【画像】これまでの「フェラーリ」のイメージと一線を画す話題のニューモデル、「ルーチェ」のワールドプレミア(写真31点)

今回の議論はフェラーリがBEVをラインナップすることの是非と、もうひとつは、このユニークなスタイリングがフェラーリのDNAとマッチするかという2点に絞られると思う。これまで、フェラーリはBEVとしてのエンジニアリングの革新性を皮切りに、アナログとデジタルを融合させたインテリアの魅力を段階的にアンヴェイルするというまことに念入りな情報発信をしてきた。

そして今回が、発信の本丸とも言えるスタイリングのお披露目である。ローマの「カラトラヴァの帆」とも呼ばれるチッタ・デッロ・スポルトにおいて、ついにスタイリングの全貌が明らかになった。ローンチ会場において、ピエロ・フェラーリは臨席せず、会長のジョン・エルカーンがゆったりとしたテンションでプレゼンテーションをスタートさせた。つまり、いつものようにモータースポーツのヘリテイジやエンツォの存在感という定番のイメージは不在であった。

極めつけは、ルーチェのアンヴェイルの瞬間だ。仰々しく一台の車をあたかも”神”のようにアンヴェイルするのではなく、ステージには4台のルーチェが連なって登場し、ゴーカートのようにくるくると走り廻るという演出が行われた。4台のボディカラーも赤、黄、水色、グレーと鮮やかで、グレーを除いて全てソリッド。とってもポップで華やかだ。

これはフェラーリらしい重厚感やモータースポーツマインドとは正反対のもので、思わず微笑みたくなるような、”かわいい”出現であった。筆者も多くのフェラーリのプレゼンテーションに同席してきたが、このようなファニーな演出は初めて。そう、これがフェラーリ以外のファミリーカーブランドの演出であってもおかしくないような、今までと全く異なったテイストだったのだ。

ここまで綿密にルーチェの露出を行ってきた彼らであるから、今までのフェラーリデザインのコンテクストとは全く異なったスタイリングのニューカーを発表することで、どんなリアクションが返ってくるかは、当然ながら想定内であろう。だから、この演出も世界最高レベルのエキスパートが思慮深く仕掛けたものであることは言うまでもない。

ルーチェのスタイリングは敢えて社内デザインではなく、外部の、それも”iPhoneデザイナー”という記号まで付いた外部のクリエイティブ集団であるLoveFromに託したというストーリーが語られている。BEVとして拘るべきドラッグの最適化、居住性とパフォーマンスの両立、そしてドライビングの楽しさなどを機能という面で徹底的に追及されている。「形態は機能に従う」というセオリーをここまで忠実にプロダクト化したのだ。

この徹底ぶりには筆者も少し驚いた。フェラーリは歴史的に見て革新的な要素を積極的に取り入れてきたブランドではなく、スタイリングにおいても機能より情緒を優先してきたからだ。だから、皆がルーチェに驚くのもよくわかる。だが、彼らはプロサングエの延長線のようなデザイン言語を持った車を発表し、サーキットを縦横無尽に攻めまくるようなイメージ動画と共にアンヴェイルすることを選ばなかった。

「名車250 GTOがロングノーズだったのは、大きなV型12気筒エンジンをフロントに収めるという当時の技術的制約があったからだ。しかし、ソニーのウォークマンが従来のラジオに比べて遥かに小さくなったように、中身の技術が進歩すれば、全体の形も劇的に変わるのが必然である。新技術を導入していながら、過去の制約に縛られた古いデザインのまま車を作り続けるのは、そのテクノロジーに対するリスペクトを欠く行為に他ならない」とベネディット・ヴィーニャCEOは筆者へ語ってくれた。