「水素電車」2030年くらいから乗れそうです
「未来の電車ってどんな感じ?」と聞かれたら、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか? リニアモーターカー? 空飛ぶ乗り物?
リアルな未来の一つが「水素で走る列車」です。それは絵空事ではなく、すでにその答えに近づきつつあるんです。
水素を燃料にして電気をつくる列車
ここでいう水素列車とは、水素(H2)を燃料にした「燃料電池」で電気を作り、その電気でモーターを動かして走る列車のことです。
仕組みをざっくり例えるなら、「車内に発電所を積んでいる電車」。
水素と空気中の酸素を化学反応させると電気が生まれ、そのとき出る排気物は水(水蒸気)だけ。走りながら空気を汚さないのも特徴です。普通のディーゼル列車(軽油で動く列車)と比べると、CO2も排気ガスも出しません。脱炭素にもつながります。
また、架線(電線)が必要な電車と違って、線路に電気を通す設備が置けないような路線も走れる。「いいとこ取り」な乗り物というわけです。
以前にギズモードで「超大容量のリン酸鉄リチウム電池」を搭載した中国の純電動機関車を紹介しましたが、アレは貨物用でした。今回取り上げるのは僕らも乗れる旅客用です!
ドイツの鉄道大手がルーマニアに12編成を納入へ
ドイツの大手鉄道車両メーカー、シーメンス・モビリティが、ルーマニアの鉄道改革庁から水素列車12編成の納入契約を受注しました。これはルーマニア初の水素列車であり、東ヨーロッパ全体でも先駆けとなるプロジェクトのひとつです。
採用されるのは「Mireo Plus H」という電車をベースにした2両編成の車両で、最高運行速度は120km/h。1編成あたり固定席131席と折り畳み席5席を備え、最大2編成を連結した運行にも対応します。
乗客向けには、車内外のディスプレイと自動アナウンスによる旅客情報システムも搭載される予定。旅客サービスの開始は2029年を予定しています。
ヨーロッパでは「2050年までに気候変動ガスの排出をゼロにする」という目標を各国が掲げており、鉄道もその例外ではありません。
特に問題なのが、架線のない非電化路線を走るディーゼル列車。田舎や山間部など、電線を引くコストが見合わない路線には今もディーゼル列車が多く残っています。そこに水素列車が入れば、架線工事なしで脱炭素につながります。
日本でも水素電車を開発
こういった流れは海外だけの話ではありません。日本でも、JR東日本がまさに水素列車の開発に取り組んでいます。
その名も「HYBARI(ひばり)」。 2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両を開発し、2030年度までの営業運転開始を目指しています。
最高速度は時速100km、加速度は2.3km/h/sで、1回の水素充填で最大140kmを走ります。現時点の走行距離でいえば、東京から熱海を超えて静岡県に入るくらいという感じですね。今後は搭載できる水素の量を増やし、2〜3倍程度の距離を走れるように改良中だとか。
技術面での注目ポイントのひとつが、水素の貯蔵圧力です。HYBARIは電車として世界初となる70MPa(メガパスカル)という高圧での水素貯蔵を実現しており、これにより走行距離を延ばすことを可能にしています。
ちなみに、ドイツではすでに世界初の商用水素列車としてAlstom社の「Coradia iLint」が運行実績を持っていますが、ヨーロッパの水素列車の圧縮水素タンクは35MPaが主流。その2倍の圧力で水素を詰め込んでいる計算ですね。
日本の車両は欧州より車体サイズが小さいにもかかわらず、これを実現した点が世界的にも評価されています。
開発にはJR東日本の鉄道車両設計・製造技術、JR東日本と日立製作所によるハイブリッド駆動システム技術、そしてトヨタ自動車の燃料電池技術が結集しています。トヨタといえば燃料電池車「MIRAI」の開発で知られており、その技術が列車にも活かされているわけです。 日本の技術が詰まった水素電車が世界を驚かす日がくるかも!
ちなみに、HYBARIの走行試験に乗った人によれば「振動や騒音などの乗り心地は普通の電車とまったく変わらない」とのこと。「駅停車時に水蒸気を放出する“シューッ”という音が聞こえるかも」ということで、鉄道ファンの「音鉄」のみならず、ちょっと楽しみです。
Source:水素ハイブリッド電車「HYBARI」 , マイナビニュース , 日本経済新聞 , 東洋経済オンライン , and E(JR東日本公式メディア) , Interesting Engineering , Siemens Mobility
