岩手県庁

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 日本で一番、経済的に豊かな都道府県は岩手県――。

 国土交通省がこうした調査結果を公表し、県関係者を驚かせている。可処分所得に対して支出が少なく、通勤時間が短いことが理由という。県は首都圏に流出した若年層に調査結果をアピールし、Uターンを促す考えだ。(小川朝煕)

通勤時間短い

 調査は総務省による家計構造調査を基に、国交省が「都道府県の経済的豊かさ」として5年ごとに集計。中央世帯(年間収入の上位40〜60%)の所得から税金や社会保障費を除いた「可処分所得」の平均から、食料費や家賃、光熱水道費を合わせた「基礎支出」と、通勤時間を時給換算した「機会費用」を引いて算出する。

 2021年に公表された前回調査で、岩手県は都道府県別で16位だったが、今年2月公表の調査結果で初めて1位となった。

 国交省によると、中央世帯の可処分所得の1位は大企業が多く集まる東京都(53万6981円)で、2位は広島県(51万3854円)、岩手県(50万2566円)は3位だった。ここから基礎支出を除くと、東京都は16位に順位を落とすが、岩手県は3位を維持する。

 さらに通勤の機会費用を差し引くと、岩手県は30万6817円で全国トップとなり、岐阜県(30万5789円)、広島県(30万2156円)などが続いた。

 上位を占めるのは、いずれも生活費が少なく、通勤時間が短い地方都市だった。一方、可処分所得で全国トップの東京都は22万2264円で34位に。神奈川や埼玉など大都市圏は通勤の機会費用が高く、軒並み下位に沈んだ。

 国交省の担当者は「豊かさを測る指標は、給料の手取りの額だけではないことを知ってもらえたらうれしい」と調査の狙いを語る。

「首都圏にはない時間的な豊かさ」

 だが、県内では人口流出が止まらない。総務省の人口移動報告によると、昨年1年間の県内への転入者は1万5835人(前年比297人増)だったが、県外への転出者は1万9802人(同609人減)に上った。

 県外への人口流出に歯止めをかけようと県は今年度、「いわて若者U・Iターン支援金」を創設した。県外で5年以上暮らした40歳未満を対象に、県内に移住した世帯に25万円、単身に15万円、県外の大学・高校を3年以内に卒業した40歳未満には一律15万円を支給する。

 県定住促進・雇用労働室の担当者は「国交省の調査の結果には驚いたが、県内の魅力をPRして若者の移住促進につなげたい」と意気込む。

 いわぎんリサーチ&コンサルティング(盛岡市)の阿部瑛子マネジャーは、県内に生産拠点を置くトヨタ自動車東日本や、半導体大手「キオクシア岩手」などが可処分所得を押し上げていると指摘。その上で「県内は家賃が低く、職場の近くに住みやすいので、首都圏にはない時間的な豊かさがある。県は今回の結果を、就職を控えた県内の学生らへのアピールポイントにするべきだ」としている。