【漫画】本編を読む

 老いた親との旅には、ひとり旅や友人との旅とはまた違った尊さがある。『小鳥をつれて旅にでる』(赤夏/主婦の友社)は、その価値をしみじみと感じさせてくれるコミックエッセイだ。

 著者の赤夏さんは年に複数回も国内外をひとり旅する、旅のプロ。本作で描かれているのは、人生初となった母との長期旅行の様子だ。

 赤夏さんの母親は何十年もの間、夫のモラハラに耐え、“家庭”という鳥かごの中で暮らしてきた女性。だからこそ、著者は母親が楽しめそうな旅を全力で考え、決行した。

 私という子どもがいなければ、お母さんはもっと早く離婚という手段を選べたのではないか…。そんな気持ちを抱えながらの親子旅は、ただほっこりするだけでなく、親と子の絆を考えさせられもする。赤夏さんは、どのような思いで本作を制作し、母との長期旅行で何を思ったのか。話を伺った。

――本作を描こうと思われた経緯を教えてください。

赤夏さん(以下、赤夏):母との関東旅行と、それに喚起された感情などを描いておきたいと思っていたところに、編集者さんから家族をテーマにしたエッセイのお声がけをいただいたんです。

 旅行記としてだけでなく、母への様々な感情を軸にした作品を描きたかったので、ありがたかったです。

――赤夏さんはこれまで創作漫画を描かれてきましたが、本作は実話。描く際に意識されたことも普段とは違ったのではないでしょうか?

赤夏:創作漫画と異なり、自分の筆が実在の人物を傷つけるものになりかねないので、実在する人物をキャラクターとして描くことには、非常にセンシティブなバランスが必要でした。

――たしかに、そのバランスは大事ですね。

赤夏:あと、まず自分にとってエッセイとは何かを明確にしました。家族をテーマにしたエッセイは私にとって、「自分の視点で世界や出来事の一部を切り取った、フィクションとノンフィクションの境を漂うようなもの」だと定義付けたんです。

 その上で、どういうスタンスで読者に作品を受け取ってほしいか伝えるための“あとがき”を第1話のネームより先に作成しました。

取材・文=古川諭香