広がらなかった「未来の新交通」モノレール…採算性に問題、「丘の上を飛んでいる感覚」で海外では注目
1本のレールで列車が走る「モノレール」は高度成長期に日本に本格導入され、「未来の新交通」と期待が高まった。
しかし、採算性などから広がらず、都市交通として運行しているのは7都市(総延長約109キロ)にとどまる。一方、独自技術で乗り心地が向上した「日本式」は世界から注目され、中東や中米にも輸出されている。
またがる「跨座式」ぶら下がる「懸垂式」
日本モノレール協会などによると、モノレールは、19世紀前半の英国で木製レールの両側に貨物をぶら下げ、馬にひかせたのが発祥で、欧米で改良が進んだ。初の都市交通路線は、鉄製車輪を使って1901年にドイツで開業した路線とされる。
車両が軌道桁(レールが敷設された橋桁)にまたがる「跨座(こざ)式」と、ぶら下がる「懸垂式」に大別される。跨座式は57年にドイツで、懸垂式は60年にフランスでそれぞれ実験線が敷かれた方式が、近代モノレールの基本型となった。
海外の動きに触発され、日本でも起業家らが事業化を試みる動きは戦前からあった。
国内の都市交通第1号となったのは東京モノレールで、東京五輪の開幕を翌月に控えた64年9月に開業し、今も都心と羽田空港を結んでいる。
モノレールが走行するのは、道路の中央分離帯の上などのため、必要な用地面積を抑えられ、自動車を妨げることもない。タイヤはゴム製で小回りが利いて勾配に強く、騒音も小さい。
高度成長期は全国的に道路渋滞が深刻で、東京の成功を機にモノレールの開発機運が高まった。神奈川県の湘南地域、北九州市などで導入が続いたが、66年に開業した兵庫県姫路市の市営モノレール(営業距離1.6キロ)は赤字が膨らみ、74年に運転を休止し、79年に廃止となった。
国土交通省によると、整備費用はモノレールが1キロあたり100億〜150億円なのに対し、専用軌道を走行する次世代型路面電車(LRT)は20億〜40億円。運輸評論家の堀内重人さん(59)は「モノレールはタイヤ交換などの維持費もかかり、予想されたほどには全国に広がらなかった」と話す。
現在運行する7都市でも経営事情は様々だ。大阪モノレールや東京・多摩都市モノレールは当初債務超過だったが、利用者増などに伴って黒字に転じ、今後、延伸される予定だ。一方、「懸垂型として世界最長」のギネス記録に認定された千葉都市モノレール(同15.2キロ)は「投資に見合った十分な効果が得られない」として延伸計画を2019年に断念した。
日本で発展した「日本跨座式」と呼ばれるモノレールは、ドイツで開発されたタイプから、タイヤの直径を小さく、車両の床面を高くするなど改良を施したもので、大阪、北九州、沖縄などで運行されている。21世紀に入ると、中国内陸部の工業都市・重慶市を始め、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ、韓国南東部の大邱(テグ)、シンガポールのリゾート地、セントーサ島にも導入された。
モノレールが走る重慶の街は、近未来を描いたアニメ「重神機パンドーラ」の舞台のモデルにもなった。約10年前に現地を訪れた原作者の河森正治さん(66)は「モノレールによって街に立体感が出ており、乗ると丘の上を飛んでいるような感覚になった」と振り返る。
中米のパナマでは、市街地やパナマ運河下のトンネルを横断する路線(約25キロ)が21年に着工し、28年の完成を目指して建設中だ。総事業費の8割近くは日本の円借款で賄われ、国際協力機構(JICA)は「日本の技術が高く評価されている」としている。
