トランプ政権批判ためらわない教皇、「控えめ」一転存在感…教会内保守派の支持も広がる
【ローマ=倉茂由美子】米国出身初のローマ教皇レオ14世(70)は、8日で就任から1年を迎える。
就任当初は慎重な言動で「控えめ」と評されたが、イラン攻撃を巡ってトランプ政権への批判をためらわず、存在感を高めている。前教皇フランシスコの教会改革を踏襲しつつ、伝統を重んじる姿勢から教会内の保守派の支持も広がっている。
イラン巡り応酬
「誰かが批判するのであれば、事実に基づくべきだ。教会が長年、核兵器に反対の声を上げてきたことに疑いの余地はない」。教皇レオ14世は5日、記者団に冷静な口調で訴えた。
発言の矛先にあるのは、トランプ米大統領だ。トランプ氏は数時間前、米ラジオ番組で「教皇はイランが核兵器を保有しても問題ないと発言している」と主張しており、レオ14世は即座に反論した。こうした応酬は約1か月間続き、世界の耳目を集めている。
選出前の注目度が低かったレオ14世は、表舞台や踏み込んだ発言を好まなかった。アドリブを交えた発言が時に物議を醸した前教皇とは対照的と目されていた。だが、トランプ政権の強権手法が強まるにつれ、批判を隠さなくなった。
昨年秋には米国の強引な移民摘発を「非人道的」と非難。2月末に踏み切ったイラン攻撃には、人道的見地に立ち、真っ向から批判した。トランプ氏から「核兵器に弱腰」と責められても、「トランプ政権を恐れていない」と今後も戦闘に反対する姿勢を示した。バチカン関係者からは「言葉が感情的な強さを帯び、イメージが一変した」などと驚きの声が上がっている。
保守派に配慮
教会内部の改革では、前教皇フランシスコの路線を継承しつつ、保守派への配慮もにじませる。
同性婚について、同性カップルに「祝福」を与えるとの前教皇の方針を維持しつつ、「性的問題が教会を分裂させてはならない」と同性婚自体は認めない方針を示す。聖職者による性的虐待問題への対応を進める一方、司祭への女性登用は引き続き認めていない。
前教皇は、質素な暮らしを重視して聖職者用宿舎で暮らしたが、レオ14世は3月から歴代教皇が居住した宮殿に移り住んだ。ローマ郊外にある歴代教皇の避暑地ガンドルフォ城の利用も再開し、ほぼ毎週訪れてテニスなどを楽しむ。
前教皇時代には、開かれた教会に向けた改革が進む一方で、保守派から反発があった。バチカン評論家のヤコポ・スカラムッツィ氏は、「伝統を重んじる姿勢が保守派に安心を与えている」とし、「内部対立を沈静化させたことで、改革は緩やかに進むだろう」と分析している。
