赤色矮星の周囲では「半径の谷」が消失する? 太陽系外惑星の最新研究成果
マクマスター大学の博士課程学生Erik Gillisさん、同大学助教のRyan Cloutierさん、それにマサチューセッツ工科大学の博士研究員Emily K. Passさんの研究チームは、銀河系で最もありふれた恒星である赤色矮星(M型星)の周囲における、太陽系外惑星のサイズ分布に関する新たな研究成果を発表しました。
研究チームによると、ある特定のサイズの惑星が極端に少なくなる「半径の谷(Radius Valley)」と呼ばれる現象が、質量の小さな赤色矮星の周囲では見られないことが判明したといいます。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astronomical Journal」に掲載されています。

スーパーアースとサブネプチューンの間にみられる「半径の谷」
これまでに6200個以上が確認されている太陽系外惑星は幾つかの種類に分けられますが、今回の研究で注目されているのは「スーパーアース」と「サブネプチューン」です。この2種類は太陽系には存在しませんが、太陽に似た恒星の周囲ではよく見つかっています。
スーパーアースは、地球よりも大きなサイズで質量も地球の10倍ほどの、主に岩石でできているとみられる惑星です。一方のサブネプチューンは、海王星に似ているもののそれよりは小さな惑星で、主に厚い水素やヘリウムのガスで覆われていると考えられてきましたが、近年では豊富な水に覆われているとする説も有力視されています。
これまでの研究によれば、太陽に似た恒星の周囲ではこれら2種類の惑星が多く存在する一方で、その中間のサイズ(半径が概ね地球の1.5〜2倍程度)を持つ惑星は極端に少なくなることが知られていました。惑星のサイズと数をもとにグラフを作ると、2つの山の間に谷があるように見えることから、この現象は「半径の谷」と呼ばれています。
ただ、天の川銀河に属する恒星のうち、太陽に似た星は“少数派”です。大部分を占めるのは太陽よりも小さくて低温の赤色矮星なのですが、これら“多数派”の星々の周囲でも同じ現象が起きているのかどうかは、暗い赤色矮星の観測が難しいこともあり、長年の疑問となっていました。
TESSのデータが明かしたサブネプチューンの欠如
研究チームは赤色矮星にも半径の谷が存在するのかどうかを確かめるために、NASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査衛星「TESS」の観測データを使用して、半径が太陽の8%〜40%程度の赤色矮星(中期から後期)8134個を対象にした大規模な調査を行いました。
その結果、対象の赤色矮星の周囲にはスーパーアースが数多く存在する一方で、サブネプチューンはほとんど存在しないことが明らかになったといいます。具体的には、スーパーアースがサブネプチューンを5.5対1の割合で上回るという、大きな差がみられたのです。
このことから研究チームは、これまで他の惑星系でみられた半径の谷は赤色矮星の周囲には存在せず、惑星の分布はサイズが大きくなっていくにつれてなだらかに減少していくことがわかったと結論付けています。

新たな惑星形成モデルの支持と今後の展望
この結果は、惑星形成理論に新たな視点を提供するものとなりました。研究チームによると、赤色矮星の周囲ではサブネプチューンが極端に少ないことは、恒星の質量が小さくなるにつれて半径の谷が消えることを予測した惑星形成モデルに一致するといいます。
「水に富んだペブル(小石サイズの粒子)降着モデル」と呼ばれるこのモデルは、惑星の材料となるペブルが効率よく集積して岩石惑星や水に富んだ惑星が形成されていくとするもので、2種類の惑星の境界線は中心の恒星が軽いほど曖昧になり、結果として半径の谷が消えていくと説明しています。
つまり、今回の研究において赤色矮星の周囲で確認された少ないサブネプチューンは、分厚いガスの大気に覆われた惑星ではなく、水が豊富な惑星である可能性が示唆されます。Gillisさんは「惑星や生命の起源を理解するには、惑星がどのように形成され、何でできているかの完全な全体像が必要です。この研究は私たちをその目標に近づけるものです」と述べており、今回の成果は惑星の多様性を理解するための重要なピースとなり得ます。
今後は、James Webb(ジェームズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡などを用いた惑星の大気の詳細な観測を通じて、水が豊富な惑星であることが実際に確かめられるかどうかが期待されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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