「アドレナリン」ってどんなホルモン?効果についても医師が解説!
アドレナリンとは?メディカルドック監修医がノルアドレナリンとドーパミンとの違い・どこから分泌されるのかなどを解説します。
監修医師:
村上 友太(医師)
医師、医学博士。
福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長、東京予防クリニック院長を歴任。現在は神宮前統合医療クリニックなどで脳機能向上、認知症予防を中心に診療している。
【資格・所属】
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本健康経営専門医
「アドレナリン」とは?

アドレナリン(英:epinephrine)は、私たちの体が強いストレス・恐怖・興奮などにさらされたときに働く代表的なホルモン(カテコールアミン)です。主に、腎臓の上にある副腎のうち、内側の副腎髄質から血液中へ放出されます。
アドレナリンが働くと、いわゆる「闘争・逃走反応(fight-or-flight)」として、短時間で体を“緊急モード”に切り替えます。具体的には、心拍数や心臓の収縮力を高める、気管支を拡げて呼吸を助ける、肝臓に働いて血糖を上げエネルギーを確保するなどの作用が起こり、危機に対処しやすい状態を作ります。
一方で、アドレナリンは「出れば出るほど良い」ものではありません。必要な場面では大切な反応ですが、強い緊張が続く生活では、動悸や不安感など「交感神経が張りつめたサイン」として自覚されることもあります。体調の変化が続く場合は、生活習慣の調整だけで片づけず、医療機関で評価することが重要です。
「アドレナリン」と「ノルアドレナリン」の違いとは?

アドレナリンと似た名前の物質に、ノルアドレナリン(英:norepinephrine)があります。どちらもカテコールアミンで化学構造が近い一方、作用の出方(受容体への結びつき)が少し異なります。
・アドレナリン:α受容体・β受容体の両方に広く作用します。状況により血管を収縮させたり、心臓を強く動かしたり、さらにβ2作用で気管支を拡げる方向にも働きます。
・ノルアドレナリン:主にα受容体とβ1受容体に作用し、特に循環では血管収縮(血圧維持)の比重が大きいと整理すると分かりやすいです。
また、ノルアドレナリンは血液中を巡るホルモンとしてだけでなく、脳内では注意・覚醒などに関わる神経伝達物質としても重要です。
「アドレナリン」と「ドーパミン」の違いとは?

ドーパミンは、アドレナリンやノルアドレナリンと同じくカテコールアミンの仲間で、脳内での意欲(やる気)・報酬学習・運動調節などに関わる神経伝達物質として知られています。
生化学的には、アドレナリンとドーパミンは別物というより、次のように合成経路が連続しています。
チロシン →(ドーパミン)→(ノルアドレナリン)→(アドレナリン)
つまり、ドーパミンは、ノルアドレナリン/アドレナリンの材料側にもなる一方で、脳内では独自の役割を担っています。
名前が似ていて混同されやすいですが、
「ドーパミン=主に中枢での学習・意欲・運動調節」
「アドレナリン=主に全身の緊急反応」
と整理すると理解しやすいと思います。
アドレナリンはどこから分泌されるの?

アドレナリンは主に副腎髄質から分泌されます。副腎は腎臓の上にある小さな臓器で、外側の副腎皮質(ステロイドホルモン)と、内側の副腎髄質(カテコールアミン)に分かれています。
副腎髄質は交感神経系と連動しており、強いストレスや危機を感じると交感神経の刺激によりカテコールアミンが血中へ放出されます。副腎髄質から出るカテコールアミンのうち、アドレナリンが多く(目安として約80%)、残りがノルアドレナリンと言われています。
なお、アドレナリンは脳内にも少量存在しますが、全身にホルモンとして作用する主な供給源は副腎髄質と考えてよいと思います。
アドレナリンが分泌されるとどんな効果がある?

アドレナリンは受容体(α・β)を介して、短時間で全身の状態を変化させます。ここでは臨床的に重要な作用を整理します。
血圧・循環機能の向上
アドレナリンは心臓に働きかけて、心拍数や収縮力を高めます。その結果、全身へ送り出される血液量が増え、緊急時に必要な循環を確保しやすくなります。
血管への作用は部位や状況で異なりますが、総じて「危機に対処するために循環を強める方向に働く」と理解しておくとよいと思います。
呼吸機能の改善
アドレナリンはβ2作用により気道の平滑筋をゆるめ、気管支を拡張させます。これにより空気の通り道が広がり、呼吸を助ける方向に働きます。この作用は、アナフィラキシーでアドレナリンが第一選択になる理由の一つでもあります。
エネルギー供給の増加
アドレナリンは肝臓などに働き、グリコーゲン分解などを通して血糖を上げ、素早いエネルギー供給を確保します。短距離走のような瞬発力が必要な場面で、体が動ける状態に切り替わるイメージです。
集中力・瞬発力の向上
アドレナリンは血液脳関門を通過しにくい物質です。脳へ直接作用するというより、末梢の変化(血糖上昇など)や迷走神経を介した経路などを通じて結果として覚醒・集中に影響することがあります。
消化・排泄機能の一時ストップ
交感神経が優位になると、緊急時に優先度の低い機能(消化管の運動など)が抑えられ、口が渇く・胃が重いといった感覚が出ることがあります。これも、危機対応としての生理反応の一部です。
「アドレナリン」についてよくある質問

ここまでアドレナリンについて紹介しました。ここでは「アドレナリン」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
アドレナリンはどういう時に出ることが多いのでしょうか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
アドレナリンは、強いストレス・恐怖・興奮など「体が危機や重要場面だと判断したとき」に出やすいホルモンです。例えば、突然驚いたとき、人前での発表直前、危険を感じた瞬間などに、動悸や手汗として体感されることがあります。
ただし、同じ出来事でも反応の強さは人により異なります。また、動悸や息苦しさが頻繁に起きる場合は、不整脈・甲状腺疾患・貧血などの身体要因が隠れていることもあるため、続く場合は医療機関での評価をおすすめします。
まとめ
アドレナリンは、人間が危機的状況を切り抜けるために備わった重要なホルモンです。心拍数や血圧を上げ、呼吸を楽にし、瞬時に全身のエネルギー供給を増やすことで、私たちに「火事場の馬鹿力」を発揮させます。短時間であれば身体機能を最大限に高めてくれる頼もしい物質ですが、過度なストレスでアドレナリンが出過ぎる状態が続くと心臓や血管に負担がかかり、健康を損なう恐れがあります。
[Image illustrating the “Fight or Flight” response: the adrenal medulla releasing adrenaline into the bloodstream, increasing heart rate, dilating pupils, and expanding airways]
実際、長期間の慢性ストレスは高血圧や不整脈など心血管疾患のリスクを高め、免疫力の低下による体調不良を招くことが知られています。普段から十分な休養と睡眠をとり、適度にリラックスする時間を持つことが、アドレナリンの暴走を防ぐ上で大切です。アドレナリンと類似のホルモンであるノルアドレナリンやドーパミンとの違いを正しく理解し、日常生活では必要以上にアドレナリンを過剰分泌させないようストレス管理を心がけましょう。
一方で、アナフィラキシーショックのような緊急時にはアドレナリンが命を救う特効薬になります。必要なときに適切にアドレナリンを働かせ、不要なときには出しすぎない、というこのバランスが健康維持には重要です。
「アドレナリン」と関連する病気
「アドレナリン」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌系
褐色細胞腫精神科系
パニック障害自律神経失調症アドレナリン(副腎髄質ホルモン)の分泌異常は、血圧や心拍数の急激な変動を招き、深刻な全身症状を引き起こすことがあります。
「アドレナリン」と関連する症状
「アドレナリン」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
動悸心拍数の上昇
血圧の上昇
冷や汗
異常な発汗
不眠
興奮状態
頭痛不安
アドレナリンが過剰に働くと、身体が常に「戦闘モード」のような緊張状態になり、さまざまな身体的サインが現れます。
参考文献
Chapter 4 The adrenal gland. Endocrinology: An Integrated Approach. 2001.
Emotional Modulation of Learning and Memory: Pharmacological Implications. Pharmacol Rev. 2017
Adrenergic Drugs: StatPearls - NCBI Bookshelf. 2025
