快進撃ヤクルトは“本物”か 数字で見る池山新体制の変化 昨年から何が変わったのか

池山新体制のヤクルトが昨年との“違い”を見せているのは明らかだ(C)産経新聞社
開幕前は大方の評論家が最下位に予想していたヤクルトが上位をキープしている。25試合を消化した時点で16勝9敗の貯金7。スワローズ・ファンですら予期していなかったであろう快進撃で、池山隆寛新監督の手腕を絶賛する声がやまない。
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しかしながら、シーズンはまだ始まって1か月余り。通常、真のチーム力を測るにはどんなに少なくてもシーズンの約4分の1に当たる35試合、できれば約3分の1近い45試合程度は見る必要がある。この時点ではまだ、“本物”と断言するには時期尚早だ。
中日に連敗したとはいえ、チームが勝ち星を先行させているのは確かだし、昨年とは明らかに変わっている部分もいくつか挙げられる。
まずは、一番の不安要素と見られていた先発投手が充実している点だ。昨年は防御率3.89でリーグ最下位だったのが、今季はここまで3.10。開幕前は計算できそうなのは吉村貢司郎と小川泰弘くらいと考えられていたが、山野太一が昨年後半からの好調を持続、ここ数年不振だった奥川恭伸に復調の兆しがあり、ベテランの高梨裕稔もヤクルト加入後ではベストと言える状態だ。
さらには先発に転向した松本健吾、新人の増居翔太も好結果を残しており、3試合先発すると出場選手登録を一旦抹消する「3勤1休ローテーション」も奏功している。けが人の多い傾向があるチームなので、疲労を溜めず、年間を通じて働いてもらうためには必要な措置だろう。
そしてリリーフ陣の防御率は実に1.66でリーグトップ。昨年の3.12(リーグ5位)も先発に比べれば悪くはなかったが、さらに良くなっている。新外国人ホセ・キハダが10試合連続セーブ成功と、クローザーに定着したおかげで、星知弥が中継ぎに回りブルペン全体の層が厚くなった。そしてこちらも先発と同様に、酷使を防ぐために計画的に運用されている。7試合無失点だったヘスス・リランソの故障は痛手だが、肘や肩ではなく長期離脱とはならない見込みだ。
攻撃面で話題になっているのは犠打の少なさで、25試合を消化した時点でわずか2回。昨年は125回と、ほぼ1試合に1回だったから異常と言っていいほどで、もちろんリーグ最少だ。
また、1番打者には長岡秀樹を固定。昨年の1番の出塁率は.291で7・8番の打者よりも低く、岩田幸宏や並木秀尊、すでにチームを去った太田賢吾(引退)や濱田太貴(現・阪神)らが代わる代わる打っていた。今季の長岡の.315も、リードオフマンとしては優秀な数字とは言えないけれども、昨年よりは上がっている。
2番に入っているのはチーム一の強打者ドミンゴ・サンタナ。昨年もサンタナは15試合で2番を打っていたので、新たな試みというわけではないが、今年は完全に固定され、2番の出塁率は昨年の.297から.375へ大幅に上昇している。
「犠打を使わない」「強打者を2番に置く」は、どちらもメジャーリーグで主流のスタイルだが、ヤクルトの場合は必要に迫られた面もある。野手の故障者が多く、理想的なラインナップは組めない状態で、実際打率.244は4位に過ぎない。そこで出塁率が高め、すなわちアウトになる確率の少ない打者を上位に集中させ、なおかつ犠打を使わずアウトを献上しないようにすることで、持ち駒の最大化を図っているのだ。
今のところ、新首脳陣が打ち出した施策は多くが的中している。けれども投手陣は、軒並み昨年より成績が良くなっているが、全員の実力が一斉に向上するということはありえないので、現状は出来すぎと見なすのが妥当だろう。ヤクルトが今後も上位を守り続けるには、投手力が落ち始める時点で、内山壮真や山田哲人らが復帰して打者が援護できるかどうかにかかっている。
[文:出野哲也]
