日本の大学入試において、国立大学の理工系学部を中心に「女子枠」の導入が拡大している。女子枠とは、女子比率が低いといわれる理工系学部などで、多様な人材を育成するために女子限定の定員を設ける入試制度。旺文社教育情報センターの資料によれば、この女子枠を導入する国立理系学部は、2023年度の4校から、2026年度には35校と9倍近くにまで増加している。この変化に対し、SNSでは「機会の平等性を奪うものではないか」「学問は実力主義でいいと思う」といった疑問の声も上がっている。「ABEMA Prime」では、この女子枠の是非をめぐり、導入を推進する大学教授や、廃止を求める学生団体の代表らを交えて議論が行われた。

【画像】理工学部1年生の女性学生の推移

■なぜ女子枠が必要なのか

 女子枠が必要だと考える大分大学の信岡かおる教授は、その背景について次のように述べる。

 「理工系分野で多様な人材が求められているのは間違いない。現実には女性が少ない状況が長く続いている。私個人の体験としては、高校生の時に進路を選ぶときに最初に工学部を選択肢から外した。周囲の影響で進路が自然に絞られていく感覚があった。理工系に女子が少ない原因が、単純な個人の選択だけではないと認識されてきたことが大きいと思う。大学としても、どういう人材を社会に輩出していきたいか示す動き、1つのメッセージだと捉えてもらえば、少し理解が深まるのではないか」。

 女子が少ない工学部には、ロールモデルがいないことも課題にあげる。

 「外国籍の先生に『どうしてこんなに日本人は、女子の理工系が少ないの』と聞かれることがある。私自身は学生の時、医療系学部で女子が大多数だったが、就職して工学部に来たら、女子が全然いない環境で、ロールモデルがいなかった。相談相手もいないし、困った時にどうしたらいいかもわからない。もちろん男性の先生でも相談に乗ってくれる人はたくさんいるが、自分の将来がイメージできない」。

 女子枠設置後の変化について実感もある。「女子枠ができたことで『理工学部でも女子を迎え入れてくれるんだね』というイメージができて、オープンキャンパスの時など『受験を考えているんですけど』という女子がかなり来てくれるようになった」と、理工系に関心を持つ女子を増やすためのアクションとしての効果を語った。

 コラムニストの河崎環氏は、圧倒的に男子が多い理系学部の現状を、大学が打開しようとする動きだとして理解を示す。

 「この理系問題は、そもそもどんなに一生懸命に枠を作っていたとしても、女子がそもそも理系に行ってくれないので、大学も散々困っていることから始まっている。女性を差別しているわけでもなく、来てほしいのに志望をしてくれない」。

 一方で河崎氏は、女子枠での合格者が出ることで、男子の不合格者が増える可能性について「大学入試という1点のみにフォーカスした時、そこに割りを食った男子の存在がある」と認めた。

■女子枠は多様性と逆行?

 公平な入試選考を求める学生の会の代表を務める、東京科学大学2年・カトウヒロシさんは、文部科学省との意見交換を踏まえ「文部科学省の説明では、あくまで設置の主体は大学側にあるという説明を受けた。ただ実態としては、何かしら大学側に設置を促しているところがあるのではないか」と、制度の広まり方に疑問を呈している。

 また、カトウさんの活動をサポートする筑波大学院生の國武悠人さんは、公平性の観点から強く反論する。「国立大学というところに論点を絞ると、そもそも憲法違反の疑いがあると、日本の法学者が数多く指摘している」と法的懸念を述べた。

 さらに、「女子枠を作ることが、むしろ多様性を排除しているのではないかという懸念を持っている。女性というだけで特別枠を用意することは、資本家で親が大卒で、女性だからその枠を使える。逆に離島に住んでいて、親は大卒ではなく、すごく貧しい、でも男性というだけでアクセスできる大学への合格可能性が減る。これが果たして本当に多様性なのか」と、経済格差や地方格差が無視されるリスクを強調した。

 TikToker・YouTuberのYuna氏は、アメリカの事例を交えて次のように語る。「アメリカの(女子)大学生が当たり前のように理系に入るのは、明らかに(卒業後の)給与が高いことや、『エンジニアってかっこいいよね』というモデルケースもあり、社会的風潮があるから。どうしても日本だと、ネイリストになりたい、アパレルをやりたい、ケーキ屋さんになりたい、ということも多い。女性が望んでいない枠を増やして、本当に合格を望んでいる男性の枠を減らすのは、誰の得になるのか」。

 女子枠について両論が語られたことを踏まえ、EXIT・りんたろー。は、女子枠を設けず「やはりテストの点数でやる方がいい。それが1つの平等だ」と実力による平等を重視した。また兼近大樹は「そもそも大学は別に行かなくてもいいところ。大学の授業というサービスを受けたいから、みんな試験を受けている。試験をパスした人が、その後に大学側が勝手にサービスの差をつけていたらアウトだが、逆に言えば大学からすれば『こういう人に来てほしい』としている。納得いかない人は、受験しなければいいだけではないか」とも述べていた。
(『ABEMA Prime』より)