朝ドラ『風、薫る』…早くも《ワースト更新》がウワサされるワケ
実在する看護師を題材にした『風、薫る』
『じぇじぇじぇ』『はて?』『ほいたらね』などの流行語を生み出し、たびたび社会現象を巻き起こしてきた“朝ドラ”ことNHKの「連続テレビ小説」シリーズ。
『おしん』『澪つくし』『ひらり』『ふたりっ子』といった名作がブランドを確立し、1990年代後半にやや低迷期があったものの、2010年の『ゲゲゲの女房』をきっかけに再浮上。『あまちゃん』『ごちそうさん』『花子とアン』以降は20%近い高い視聴率をマークするドラマが続き、近年では『虎に翼』『あんぱん』もヒット。中高年層をメインに、お茶の間に大きな話題を振りまいてきた。
ところが2025年春に終了した橋本環奈主演の『おむすび』は、期間平均世帯視聴率13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で朝ドラ史上最低視聴率を更新。視聴率が取りづらい現代劇だったとはいえ、輝かしい朝ドラの歴史に泥を塗ってしまう形になった。
そして、この春から放送が始まったばかりの『風、薫る』にも危機感が漂っている――。
連続テレビ小説114作目となる『風、薫る』は、明治時代に看護師という職種の確立に貢献した大関和と鈴木雅という実在の女性をモチーフに、2人のヒロインが患者や医師と向き合いながら成長していく王道ストーリーだ。
ヒロインを務めるのは『光る君へ』『国宝』などに出演した一ノ瀬りん役の見上愛、『御上先生』の生徒役が好評だった大家直美役の上坂樹里。朝ドラでは17年ぶりとなるダブル主演に注目が集まっていた。また、主題歌も今をときめくトップアーティストMrs. GREEN APPLEが担当することが決まり、その期待値は高かった。
早くもワースト更新がウワサされるワケ
ところが、その予想は大きく裏切られた。
初回世帯視聴率が、朝ドラでは歴代ワースト2位の14.9%でスタートすると、第1週平均14.3%、第2週平均13.6%と下降路線を辿ったのだ。
第3週こそ13.8%と微増しているが、SNSやドラマ評価サイトでは「感情移入できない」「脚本がツッコミどころだらけ」「おむすびを超える駄作では?」「見ていて辛くなるので離脱」といった辛辣なコメントが並んでおり、ワースト記録を更新するのではないかとウワサされている。
それではなぜ同作はここまで低調なスタートを切ったうえに、世間からの評判や期待値が低いのだろうか? ドラマ業界で働くさまざまな関係者に生の声を聞いた。
「なじみの薄い実話をテーマにしたのが苦しかった」
そう口火を切ったのは、民放キー局でドラマプロデューサーを務めるA氏だ。朝ドラを欠かさず見てきた彼は重苦しい口調で語ってくれた。
「朝ドラヒットの条件は“史実”をベースにしていること。『ゲゲゲの女房』『あんぱん』『ばけばけ』などはモチーフになった人物に関する予備知識があったので、視聴者は安心してストーリーに入り込むができた。
その意味では、確かに『風、薫る』も史実ベースではありますが、今回のモデルは看護の歴史に関心のある人を除けば広く知られた存在とは言いがたい。
その影響で主人公の生い立ちや性格、家族関係をすんなりと把握することができなかった。ましてダブルヒロインなので、登場人物が多すぎて混乱してしまったのが本音です。
メイン視聴者である中高年層や出勤・通学前に“ながら見”しているような方々は、ストーリーについていけず、キャラクターに感情移入することができなかったんだと思います」
序盤の重すぎるテーマに離脱
「朝から暗い気持ちになってしまったことも大きい」
このようにA氏は続ける。
「明治時代が舞台ということもあって、序盤からコレラの流行、貧困問題や差別、望まぬ見合い結婚、家庭の破綻といった重々しいテーマが立て続けに描かれた点も低視聴率の要因でしょう。
コロナ禍を経て、看護や医療従事者の歴史に光を当てたいという意図や信念は伝わって、それ自体は素晴らしいと思いますが、序盤は焦らずに主人公たちのピュアな会話劇や人間模様に焦点を当ててほしかった。
戦時下を舞台にしていた『虎に翼』や『あんぱん』も目を背けたくなるような悲惨なシーンが序盤で続きましたが、各キャラクターを魅力的に描き、中和させることができていた。現状の『風、薫る』ではそれが機能していないんですよね……」
実在した“明治のナイチンゲール”の生い立ちを忠実に描こうとした意欲作だったが、テーマばかりに固執しすぎたことが結果的に初速の盛り上がりを奪ってしまったようだ。
後編記事『やはり朝ドラは《知名度》が重要なのか?業界人が語る『風、薫る』が支持されない理由』では、引き続きドラマ業界で働く関係者の生の声をお届けする。
