脳性麻痺の息子へ…発明次々 諦めない父、卒業式を前に“発明魂”に火 密着ドキュメント【バンキシャ!】
バンキシャはこれまで、大阪府に住む廣瀬さんご家族を取材してきました。障害のある長男・トモくん(12)のため、お父さんはこれまで180を超える発明品を作っています。今週は、トモくんの小学校卒業までの物語。卒業式の日、両親を驚かせたトモくんの行動とは──。【真相報道バンキシャ!】
■脳性麻痺の息子へ…発明次々 諦めないお父さん

バンキシャは3年前から、大阪に住む廣瀬さん家族に密着してきました。長男の朋克くん(12)は、妊娠24週の超早産で誕生。脳性麻痺の影響で、言葉を発したり、体を自由に動かしたりすることができません。
父親・廣瀬元紀さん
「知的な遅れはかなりある。しゃべれないので表現の手段が多くない」

そこで、エンジニアのお父さんが独学で始めたのが“息子のための発明品”作り。その数はもう180以上にもなると言います。
廣瀬さん
「コミュニケーションがとれるようになっていって、本人の意思が明確化されて、すごくわかるようになった」
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地元の公立小学校に6年間通ったトモくん。卒業後は特別支援学校に通うため、大好きな友達と離ればなれになってしまいます。
お父さんは、この学校での経験が、トモくんの成長に欠かせなかったと考えています。
廣瀬さん
「6年間ずっと通わせていただいて、友達も朋克との関わり方もわかってくれている」
校長
「トモくんがいることで、他の子供は育つんです。お互いが良い影響を及ぼすような卒業式だといいなと」
トモくんの卒業式のために、小学校最後の“お父さんの発明”。その日々を追いました。
■トモくんに異変「意識が低下」頭部の切開手術へ

去年12月、廣瀬さんがSNS上で記録していたのは──。
【12/24 17:00】
入院病棟へ。
息子の意識が明らかに低下。
突然、トモくんの体に異変がおきて、頭部の切開手術が行われたという内容でした。
お父さんに、話を聞きました。
廣瀬さん
「怖かったですよ本当に…。(容体が)かなり急変してて(手術は)明日まで待てない。助けてって感じだった」
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お父さんが、ベッドに力なく横たわるトモくんに話しかけます。
廣瀬さん
「大丈夫? トモカツ…」
左手には包帯がまかれています。トモくんの脳には、たまった髄液を流すための管が入っていて、その管に不具合が発生。緊急手術をしなければ命が危なかったといいます。
廣瀬さん
「生かしてくれてありがとうって感謝の思い」
ベッドに横たわるトモくんの小さな手にお父さんが指を入れると、トモくんが、力なく握ります。
廣瀬さん
「握ってくれる。めっちゃうれしい…」
■治療を終え…トモくん自宅に

2月──。
治療を終えて、トモくんが自宅に帰ってきました。
廣瀬さん
「すっかりいつも通りになったね。よかったね」
夕食時、トモくんが、お父さんの発明品の1つに触れると、音声が再生されます。
トモくん《いただきます》
お父さんの廣瀬さん、お母さんの聖子さんとともに食卓を囲みます。廣瀬さんちに、また賑やかな日常が戻ってきました。食事を口にして、トモくんがまたお父さんの発明品に触れます。
トモくん《おいしい!》
聖子さん「ありがとう!」
トモくん《iPad(したい)》
聖子さん「今のは“誤タップ”か? どっち?」
食卓に笑い声が響きます。
■卒業式の予行演習 お父さんの発明意欲に火

卒業式まであと1か月。いつも通りお父さんが作った電動車いすで登校するトモくん。校門のところまで来ると、車いすについた機器を操作し、校長先生に挨拶をします。
トモくん《おはようございます》
校長
「おはようございます。じゃあ、学校へ行こうな」
校門をくぐり、きょうも一日が始まります。
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学校では、卒業式の予行演習が行われていました。トモくんは昇降機を使って壇上に上がります。卒業証書授与の場面で、校長先生がトモくんの名前を呼びます。
校長
「廣瀬 朋克」
トモくん
「………」
見ていたお父さんが、たまらず声をかけます。
廣瀬さん
「返事、朋克、返事」
返事をしたくても、トモくんは返事をすることができません。お父さんの発明意欲に火がつきました。
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ベランダに座り込んで半田付けをするお父さん。その顔は真剣そのもの。聖子さんがキッチンで記者にこぼします。
聖子さん
「ずっと何かを作ってる…」
毎日、深夜までお父さんは試行錯誤を続けます。
廣瀬さん
「ぬいぐるみを“手上げ装置”に使えないかな…」
長いぬいぐるみの腕を機械に取り付けた試作機。お父さんがそのボタンをトモくんに渡して、卒業証書授与の場面のように名前を呼びます。
廣瀬さん
「廣瀬朋克くん」
そして、トモくんがボタンを押すと、返事をするように腕が上がりました。しかし、お父さんはこれでは満足できないようで、改良を重ねます。
廣瀬さん
「これを上に上げると…」
そう言って指でつまんだ小さな箱を傾けるお父さん。すると、箱の動きと連動して、ぬいぐるみの手が上がりました。
──角度で動くということ?
廣瀬さん
「そうですね。要は傾きの量に応じて変えられるので、本人の意思をより反映しやすくなる」
トモくんの気持ちを、そのまま表現してあげたい。その思いで作ったセンサーです。さっそくベルトでトモくんの手首に固定します。そして、トモくんが手を動かすと──。
廣瀬さん「おー!」
聖子さん「おー!」
ぬいぐるみの手が上がりました。
しかし、大きな音が苦手なトモくんは、両手で耳をふさいでいることがよくあります。手首のセンサーでは機能しないかもしれません。そこでお父さんは、顔の動きに合わせて、ぬいぐるみの手が上下するようにしました。
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廣瀬さん
「これやったら、朋克の場合はこの状態で…」
両手で耳をふさいだままの状態で顔を上げ下げし、機械の動作を確認します。
アイディアが浮かべば、プログラミングも、部品づくりも、すべて1人で行うお父さん。
廣瀬さん
「とりあえず思いついたら試す。ハマるやつが100個作って1個当たるかなので、もう100個やるしかない」
そもそも発明品は、トモくんが「こうしたい」という動きをサポートするためのもの。
廣瀬さん
「この先を考えた時に、できるかぎり自分の力で、何かを成し遂げてほしいなっていうのが、すごくあるので、根本としてね」
■卒業式の前日 トモくん救急搬送

3月──。
お父さんが作った発明品の中で、トモくんが一番気に入ったのが、トモくん本人の声で返事をする装置。
《へーい!》
初めてトモくんの声を録音し、一緒に作りました。
卒業式に向けて、お父さんにはある思いがありました。それは、6年間一緒に過ごした友達のこと。トモくんのまわりにはいつも友達がいました。
廣瀬さん
「みんな優しいんですよ本当に…。トモくん、トモくんって言って。あの子たちと一緒に卒業するというのは、朋克の将来にとってもすごく大事。あの子たちに育ててもらったし。あの子たちと一緒の場所で卒業できるのは、すごくうれしい。親としても思いますね」
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しかし、卒業式前日の朝、お父さんから連絡が入りました。トモくんが救急車で運ばれたといいます。3か月前と同じ症状。大事には至らなかったものの、入院が必要で、卒業式に参加できなくなりました。
廣瀬さん
「すごくクラスの子たちがいい子だったので、卒業を一緒にさせてあげたかった。最後こんなかたちで、ありがとうも言わずに…本人も悔しいんじゃないかなというのは、なんか、いたたまれないというか、切ない」
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卒業式、当日。
トモくんは、友達と一緒に参加することはできなかった──。
■トモくんの卒業式

それから1週間後。退院したばかりのトモくんに、うれしい知らせが入っていました。
廣瀬さん
「朋克くん、今から学校に行って、卒業式」
この日、欠席した児童のために、卒業式が行われることになったのです。
廣瀬さん
「朋克、最後の…最後の制服やな、これが。長かったね、本当に」
そう話しかけながら、お父さんはトモくんに制服を着せます。
廣瀬さん
「行く?」
トモくん
「うん…」
廣瀬さん
「よっしゃ! 行こうか!」
◇
学校は春休み中。同級生は、みんな1週間前に卒業しました。ところが体育館に入ると、そこにはたくさんの友達の姿がありました。
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──みんなトモくんのために来たの?
卒業した友達
「はい」
体育館の壁に張り巡らされた紅白の垂れ幕や、壇上に掲げられた日章旗、1週間前の卒業式のままの装飾に、廣瀬さんがうれしそうに言います。
廣瀬さん
「卒業式のまんまや、まんま」
そして集まってくれた大勢の友達。
廣瀬さん
「友達がめっちゃ来てくれてる」
聖子さん
「うれしい…うれしいわ」
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そして、みんなが見守る中、トモくんの卒業式が始まりました。
「卒業生が、入場します。拍手でお迎えください」
会場に1人、車いすで入場するトモくん。
「卒業証書、授与」
この日のために、何度も練習をしてきました。トモくんが、昇降機で壇上に上がります。
その様子を見守る廣瀬さんと聖子さん。廣瀬さんはトモくんを見つめ、がんばれ…とつぶやき、何度もうなずきます。
「2組、廣瀬朋克」
トモくんの名前が呼ばれます。するとトモくんは、お父さんが作ってくれた、トモくん自身の声で返事をする発明品のボタンを押しました。
《へーい!》
校長
「トモくん、おめでとう」
校長先生の手からトモくんが卒業証書を受け取ります。その様子を廣瀬さんと聖子さんが見守ります。
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そして卒業式が終わると、みんなで記念撮影。トモくんのまわりに集まった同級生たち。お父さんが明るく声をかけて写真を撮ります。
そしてトモくんは、一番仲がよかった友達に色紙を渡しました。書かれていたのは「ありがとう」の文字。この友達は1週間前、入院中のトモくんに、こんなメッセージをくれました。
6年間ずっといっしょだったね。
ともくん…どこにいてもずっと友達だよ。
大好きだよ
トモくんもお礼の気持ちを、お母さんと一緒に書きました。
友達
「6年間ずっと一緒だったから。初めて会った時はびっくりしたけど、どんどん仲良くなって、毎日一緒に話をするようになった」
もらった色紙を手に友達が、あらためてトモくんに言います。
友達
「トモくん、これ家に飾っとくな」
トモくん
《ありがとう》
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ボタンを押してトモくんが感謝を伝えます。この日、トモくんは、何度も「ありがとう」を伝えました。
友達
「ありがとうトモくん」
トモくん
《ありがとう》
トモくんが涙を拭うような仕草を見せます。
廣瀬さん
「この6年間で、ありがとうを言えるようになったのは、本当に小学校のね……」
トモくん
《ありがとう》
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トモくんを中心に明るい笑顔が広がります。お父さんの発明品と一緒に、トモくんはこれからどんな成長を見せてくれるのでしょうか。
(4月19日放送『真相報道バンキシャ!』より)