この記事をまとめると

■近年クルマのタイヤ幅は車重増と高出力化で拡大傾向にある

■なかでも極めて太いタイヤを装着したモデルを紹介

■タイヤ幅は性能と思想を映す指標といえる

超極太タイヤのめくるめく世界

 クルマのタイヤ幅は、乗り心地や燃費、グリップ力に直結する重要なスペックのひとつだ。電動化の影響もあって、クルマ全体が重く、ハイパワーになる傾向にある昨今では、ひと昔前ではファットとされていた225〜245mm程度のタイヤを履くモデルも少なくない。

 しかし世界は広いもので、主にスーパーカーのリヤタイヤを中心に、目を疑うほどに太いタイヤを履きこなすモデルも存在する。そこで今回は、一般的な軽自動車のタイヤ幅である155mmの倍以上となる、325mm以上の純正タイヤ幅をもつ量産市販車をいくつかその太さと共に紹介しよう。

365mm:ブガッティ・ヴェイロン スーパースポーツ

 乗用車というカテゴリーで量産市販車最大の純正タイヤ幅を誇るのが、ブガッティ・ヴェイロン スーパースポーツだ。そのリヤタイヤは365-710ZR540Aという特殊サイズ。ミシュランが特別開発したPAXシステム採用の専用タイヤで、時速400km超での走行に耐えるために設計されたものだ。最高速度で走り続けられる時間はわずか15分程度という超高性能品だが、それでもランフラット走行が約200km可能という芸当もやってのける。

 ヴェイロン スーパースポーツは2026年現在、いまだに「市販車でもっとも太い純正タイヤ」の称号を誰にも譲っていない。

355mm:ブガッティ・シロン、ダッジ・バイパーACRなど

 ヴェイロンの後継、ブガッティ・シロンは1500馬力にパワーアップしながら、リヤタイヤは355/25R21というサイズに変更された。シロン・スーパースポーツ300+など派生モデルも同水準の355mmを採用している。

 このサイズでは、ブガッティ以外にも採用車種がいくつか見られる。アメリカからはダッジ・バイパーのエボリューションモデル「ACR」が355/30R19サイズを標準装備するほか、ランボルギーニでもアヴェンタドールSVJなど一部モデルで355mm級のタイヤが設定される。

345mm:エンツォ・フェラーリ、ジャガーXJ220など

 フェラーリのハイパーカーは345mm級に集結している。エンツォ・フェラーリからやその後継のラ フェラーリ、サーキット専用のFXX Kも同様に345幅の設定。ケーニグセグといった一部のハイパーカーにも345幅を採用するモデルが見られる。

 興味深いのが、1992年デビューのジャガーXJ220がここまで太いタイヤを採用していたことだ(345/35R18)。このジャガーのスーパースポーツカーは、その名が示すように最高速度220マイル(≒354km/h)をターゲットとし、その内容はレーシングカーに近いものであった。その足もとを支えるタイヤにも、相応のサイズが求められたというわけだろう。

旧車やSUVにも極太タイヤを装備したモデルが存在

335mm:フェラーリF40、ポルシェ911 GT3 RS(992)など

 なかなか見られないサイズであることは確かなのだが、335mm幅となると一気に装着車種のバリエーションが増える。古くはフェラーリF40やチゼータV16T、ランボルギーニ・ディアブロSVなどがこのサイズのリヤタイヤを履き(すべて335/35ZR17)、現代のハイパーカーにカテゴライズされるクルマでは珍しいサイズではなくなっている。

 ポルシェ911でもっとも過激なモデルであるGT3 RSは代を経るごとにスペックが過激になってゆくが、そのタイヤも例外ではない。GT3 RSが911シリーズのポートフォリオに加わった996世代でもそのリヤタイヤは295幅とファットなものだったが、パワーアップに伴いそのサイズはどんどん巨大に。現行992世代では、335/30R21というサイズまでに至った。

 1964年にデビューした初代911は当初わずか165mm幅のタイヤを装着していたのだから、60年を経てそのタイヤ幅はじつに2倍以上になったのである。

325mm:ランボルギーニ・ウルス、メルセデス・ベンツ Gクラスなど

 325mm帯に入ると、スーパーカー以外でも装着車種が出てくる。まず挙げられるのが、富裕層に大人気のランボルギーニのSUV、ウルスだ。「ペルフォマンテ」などの一部上位グレードのリヤタイヤには、325/35ZR22というサイズが奢られる。

 そしてもう1台取り上げたいのが、メルセデス・ベンツ Gクラスに存在した限定車「G550 4×4 スクエアード」である。ノーマルのGクラスから大幅にリフトアップされた車高に合わせて、超巨大な325/55R22サイズのタイヤを4輪にインストール。これだけの幅でありながら55扁平という分厚いトレッドもほかにない特徴で、その外径は驚異の916mm。トヨタ・ランドクルーザーやランドローバー・ディフェンダー、ジープ・グラディエーターといったゴツく巨大なタイヤを履くモデルたちでも、その外径は800mm台前半に留まるといえば、その巨大さがわかるだろう。

 325〜365mmという数字が並ぶこのランキングを眺めていると、タイヤ幅というのが単なるグリップのための太さではなく、そのクルマの性格や設計思想を端的に示すものだということが見えてくる。

 ちなみに日本車においては、大阪発のEVハイパーカー、アスパーク・アウルの325/30ZR21が最大。これを量産と呼ぶか怪しいとするのならば、2代目ホンダNSXやレクサスLFAに設定された305mm幅のリヤタイヤ(共に305/30R20)が歴代でもっとも太いサイズとなっている。