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都市の成長に不可欠な「マンション」と「データセンター」の建設。それらの建設について周辺住民の理解を得ることは難しく、反対運動に発展するケースも少なくありません。とはいえ建築基準法に適合していれば、建設が進む場合がほとんどです。日照・景観・騒音・地盤沈下など、建設によって起こり得る様々な生活環境への悪影響について、土地の所有者や住民はどのような対策を取ることができるのでしょうか。マンションとデータセンターがそれぞれ抱える問題点について、マンション管理士の松本洋氏が解説します。

「合法なら止められない」…建設ラッシュに揺れる住民たち

都市部では、マンション建設とデータセンター建設が同時進行し、既存住民との摩擦が各地で表面化しています。

人口集中とデジタルインフラ需要の高まりが背景にある一方、日照・景観・騒音・地盤沈下といった生活環境への影響は無視できず、住民の不安は根強いものになりました。

ところが、建築基準法に適合していれば計画を止めることは難しく、制度と住民感情のギャップが問題を複雑にしているといえるでしょう。

「断固反対」の旗が立っても、結局マンション建設が進む理由

新規マンション建設を巡る反対運動は珍しくありません。建設予定地周辺には「断固反対」の旗が立ち、住民が声を上げる光景は数えきれないほど繰り返されてきました。

しかし、最終的には建設が進むケースが多いです。興味深いのは、現在そのマンションで暮らす住民の多くが、自らの住むマンションの建設時にも同様の反対運動があったという事実を知らないという点でしょう。なかには「お互い様だ」と語る居住者もおり、都市部の開発が循環する構図が浮かび上がります。

大規模建築では、地盤沈下や外壁のひび割れなどのリスクがあるため、施工業者が既存建物の事前調査を申し入れることがあります。写真撮影や地盤確認は将来の損害賠償リスクに備えるものですが、住民の不安を完全に払拭するには至りません。

また、日照や眺望の損失は住戸の向きや階数によって影響が大きく異なるため、管理組合全体で反対運動を組織することは難しく、影響を受ける一部住民が独自に団体を結成して交渉するケースが一般化しています。

トラブルを未然に防ぐ…住民が講じる「自主防衛策」

こうしたトラブルを未然に防ぐため、土地所有者や自治会が協力し「景観協定」を締結する例が増えています。

「景観協定」は、外壁色、駐車場配置、照明、シャッターのデザインなど、法令では定めきれない細部まで合意に基づき制限できる点が特徴です。マンションの大規模修繕で外壁色を変更する際にも協定が制約として働く場合があり、住民が主体的に景観を守る仕組みとして注目されています。

騒音・排熱・地盤沈下…データセンター建設への懸念

2000年以降、国内のデータセンターは増加を続けています。

騒音・振動・排熱など一定の環境負荷が許容されるため、建設地は準工業地域が中心です。しかしながら、この用途地域はマンション立地とも重なりやすく、近接建設による摩擦が急増しています。

住民説明会では、「高層化による日照・眺望の喪失」「冷却装置の稼働音(60〜85dB)」「排熱による局地的温度上昇」「大量の地下水利用による地盤影響」などの懸念が寄せられます。

特に水冷方式では地下水利用が地盤沈下を誘発する可能性が指摘され、実際に日野市では住民反対を受けて計画が一部変更されました。

一方で、データセンターを歓迎するマンションもあります。既設施設を視察した住民からは「騒音は一般的なビルと大差ない」「人の出入りが少なく治安面で安心」といった評価も。

ただし、資産価値への影響を懸念する声は強く、理事会が賛否で分裂するケースもあるようです。

マンションとデータセンターで異なる「土壌汚染規制」

データセンターは居住用途ではないため、土壌汚染調査の義務はマンション建設ほど厳しくありません。工場に近い扱いとなるためです。

一方、マンション建設では工場跡地などを利用する場合、健康リスク排除のため厳格な調査が求められます。この規制の差が、同じ準工業地域でも住民の安心感に大きな違いを生むのでしょう。

行政に求められる今後の対応

住民が議員に働きかけても、対応には温度差があります。「基準に適合していれば仕方がない」とする議員もいれば、住民の声を受けて行政と調整を行う議員もいます。住民の期待と不満が、議員の姿勢に左右される構図です。

今後は、住環境への影響を考慮した基準整備、住民との対話を重視したプロセス、既存条例の活用・改正による迅速な対応が求められるでしょう。

条例制定には時間を要しますが、既存制度を基礎にすれば短期間での対応も可能です。

まとめ:建築基準法では守りきれない「生活の質」

マンション建設とデータセンター建設は都市の成長に不可欠ですが、住民の生活環境に直接影響を与えます。建築基準法だけではカバーしきれない“生活の質”をどう守ればよいのでしょうか。

住民・行政・事業者の三者が向き合うべき課題は、今後さらに重みを増していくでしょう。

松本 洋

松本マンション管理士事務所代表