生成AIで書いた就活エントリーシートを企業は見抜けるのか 重要なのは「印象」と「ストーリー」
NTTドコモモバイル社会研究所は6日、生成AIの利用率が2026年2月時点で51%に達したとする調査結果を発表した。就活市場でもエントリーシート(ES)の作成や添削、面接対策、企業研究まで、AIの利用は必須となっている。
では、企業側はAIに整えられた文章や面接戦略をどこまで見抜けるのか。取材を進めると、採用現場で重視されているのは“AIに削ぎ落とされたストーリー性”だという実態が見えてきた。
都内の大学に通う就活生(22)は、「私だけではなく周りの学生たちも大学の講義や就活でAIを活用しているので、悪いこととは思っていません。私は、ESの文章をまとめてもらうだけではなく、面接官からの質問の傾向を予習したり、緊張を紛らわすために使いました。就活では何社も受けるので、特に企業研究は役立ちました」と話す。商社や不動産など10社を受け、ESは全社通過。本命企業の最終選考まで駒を進めている。「AIは電卓みたいなもの。暗算よりも便利だから使っている感覚です」と語った。
一方で、企業側はAI使用そのものを問題視しているわけではない。広告会社の代表を務める男性(40)は「AIを使っていること自体は、大きな問題ではない」と話す。どういうことか?
「ただ、使うのであれば、とことん使いこなさなければ意味がないと思っています。AIはフォーマットに沿って最適化するのは得意ですが、それではただの議事録に過ぎない。要するに、整ってはいるけれど、それ以上の価値がないんです。採用で見ているのは、担当者にウケる形ではなく、自分の頭で問いを持てるかという領域です。そこがなければ、AIを使っても何も残らない」
「STAR面接」で掘り下げ
では、採用の現場では何が見られているのか。面接担当経験のある通信企業の男性社員(36)にも話を聞いた。
「正直、ESの段階ではAIで書かれたものかどうかは見抜けません。優秀な学生ほどAIに『あなたはどこの面接官です』『あなたが採用したくなるようなESを考えてください』『この学生は大学時代にこういうことを頑張りました』といった条件を細かく与えている。だから、当たり障りのない文章ではなく、ちゃんと自分に寄せたESを作ってくるんです」
この担当者が重視するのは、いわゆる「STAR面接」だ。状況(Situation)、課題(Task)、行動(Action)、結果(Result)をたどりながら、「なぜそれをやったのか」「どうしてその行動を取ったのか」を掘り下げていく。
「たとえば『学生時代にどういう役割に力を入れましたか』と聞いて、『バイトリーダーとして売り上げに貢献しました』と返ってきたら、次に『どんな課題がありましたか』『具体的にどう働きかけたんですか』『その結果どうなったんですか』と、経験に基づいていないと答えられない質問を重ねます。エントリーシートではすごくきれいに書いても、その背景にある“なぜ”を聞いていくと、用意してきた言葉だけでは答えられないんです。だからこそちょっと余計に見える情報のほうが、印象には残りやすいと思っています」(同)
さらに重要なのが「ストーリー」だという。
「人は、断片的な情報よりも、背景や物語があるもののほうが記憶に残る。そういう体験を面接官に与えられる学生は強いです。『学生時代にサークルを頑張りました』だけだと弱いけど“なぜその場所を選び、何につまずき、どう乗り越えたか”というストーリーテリングが上手い学生は評価が高い。少し蛇足に見えるような生々しいエピソードや、その人らしい言い回しまで含めた“ストーリー”の操作は、AIで置き換えにくいです。結局仕事って、『こいつに任せて大丈夫か』に尽きるので、STAR質問みたいなフレームワークを使うとかなり見えるようになります」(同)
生成AIは就活を効率化する便利な道具だ。しかし、企業が見ているのは、整った文章ではなく人間にしか生み出せない「蛇足」なのかもしれない。
文/内外タイムス取材班
