日本の最前線には上田がいる。点を取ることも、点を“取らせる”こともできるFWだ。(C)SOCCER DIGEST

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[国際親善試合]日本 1−0 イングランド/3月31日/ウェンブリー・スタジアム

 スコットランド、イングランドと対戦した森保ジャパンの3月シリーズ。28日のスコットランド戦を1−0で勝利した日本は、31日のイングランド戦も1−0で勝ち切った。文句なしの結果。2連勝で英国遠征を終えた。

 イングランド戦は、前半に三笘薫のゴールで先制。その後は追加点を取れるチャンスもあったなかで、徐々に相手の圧力に押されていく。

 でも、僕はそこまで「やばいな」とは思わなかった。ボールは持たれているけど、“持たせている”感じがあったし、シュートを打たれる場面でも、セットプレーのこぼれ球を拾われてとか、完全に崩されるシーンは少なかったと思う。

 終盤の猛攻にも、集中したディフェンスで対応。鈴木彩艶のファインセーブもあり、ゴールを割らせなかった。凌ぎ切ったね。

 三笘の1点を守り抜いた。この得点は、自陣で奪って、鋭いカウンターから生まれたもの。パーマーを複数人で取り囲んで、ボール奪取に成功。三笘が引っかけて、こぼれたボールを鎌田大地が前にいる上田綺世につけて、上田の落としを受けた三笘がドリブルで前進。左の中村敬斗に展開して、最後は中村の折り返しを三笘が押し込んだ。

 見事な速攻だった。中村の正確なラストパス、三笘のシュート技術は素晴らしかった一方で、一連の流れのなかで僕が目を奪われたのは、上田の動きだ。
 
 速攻が発動した瞬間、上田も駆け上がる。ちょっと右側に膨らむ感じかな。相手の左サイドバック、オライリーも上田を気にしている。

 そして中村が左サイドでペナに入ると同時に、上田はグッと中に入る。オライリーの前に出る。

 この動きがあったからこそ、だと思う。極めて重要なアクションだ。

 オライリーは上田をフリーにさせるわけにはいかない。ついていく。そこで、できたわずかなスペースに、中村がパスを通し、三笘が入り込んでフィニッシュした。オライリーの対応がほんの一瞬、後手に回ってシュートをブロックできなかった。

 上田の最大の持ち味は、点を取ること。でも、彼は点を“取らせる”こともできる。ゴール前の駆け引きを熟知しているからだろう。自分にパスが来たらシュートすればいい。そういうポジショニングだった。パスが来なければ、囮になって味方のチャンスになる。それも分かっていたんじゃないかな。

 記録上は三笘の1点だけど、僕の中では上田に0.5点をあげたいぐらい。それだけ、あの動き出しは価値があったし、日本の攻撃で最前線にいる上田が、どれだけ欠かせない存在かを証明するものだったと思う。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、53歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた“40メートルFK弾”は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。23年に『左利きの会』を発足。

【動画】鮮烈なカウンター、三笘が仕留める!