ドバイで最も有名なフリーゾーンであるJAFZAもDAFZAも、オフィスに行く人は少ないです。ジュベルアリ港はイランの攻撃対象になっていますし、DAFZAは空港のすぐ横。本社から『外出するな』と命令が出ている企業も多い」

ジュベルアリ港は開戦初日にイランの攻撃を受けて火災が発生し、一時的に操業を停止した。ドバイ国際空港は複数回のドローン攻撃で燃料貯蔵施設に火災が起きるなど、計4回のドローン関連インシデントが発生している。こうした状況では、港や空港に近いフリーゾーンへの出勤を躊躇するのは当然だろう。

一方で、日常の買い物や食事には支障がないという。

「スーパーには食料品が普通に並べられていますが、人がいないという状況。この国の食料自給率は10%で、90%を海外に依存していますが、現状問題ないという見込みです。人口が減っている分、当面は供給に問題はない」

UAEが戦前から食料備蓄と物流の多角化を進めてきたことは、UAE高官も公言している。しかし、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、国連世界食糧計画(WFP)が警告するように肥料や物流コストの高騰を通じて食料供給に波及するリスクは無視できない。

◆ビジネスの先が「全く見えない」

残留者にとって最も重い問題は、ビジネスの見通しの立たなさだ。

「観光客は来ないですし、これから夏に突入し、さらに厳しい。これまで好調だった不動産投資にしても、日本のようなUAEから距離のある投資家にとって、なかなか買いたいといった気持ちにはならないはず。状況にもよりますが、少なくとも6ヵ月は厳しいと見ています」

具体的な事例として、日本人顧客を主力とするある企業のケースが語られた。億円レベルのアセットを保有しながらも、主要顧客である日本人が退避したことで操業停止を検討。しかし、スタッフの退職金やアセットの処理に多額のキャッシュが必要なため、それも現状は不可能。であれば、少人数で運営を続けながら様子を見ざるを得ないという。

「事業をたたむにもキャッシュフローが厳しいわけです。であれば、少人数で回すしかないですが、それもいつまで保つかわからない。先が見えない状態は非常につらい」

金融面では、UAE中央銀行が3月17日にコロナ禍以来最大規模の支援策を発表している。銀行に対し準備金の最大30%までの引き出しを認め、資本バッファーの一時解放、紛争被害を受けた顧客へのローン分類猶予などを打ち出した。UAE銀行セクター全体の流動性は約2500億ドルに達するとされ、発表翌日にはエミレーツNBDやアブダビ・イスラミック銀行の株価が6%以上回復。しかし、戦争の終結時期が見通せない以上、こうした措置がどこまで持ちこたえられるかは不透明だ。

◆AI時代初の戦争とフェイクニュースの氾濫

今回の紛争で特徴的なのは、SNS上のフェイクニュースの深刻さだという。

「AIがこれだけ進んだ中での初めての戦争かもしれないです。全く関係ない場所にミサイルが撃たれたかのような動画とか、嘘やフェイクだらけ。公式発表以外は信じるなというのが鉄則です」

UAEではフェイクニュースの流布に対し罰金・懲役の罰則が定められている。UAE政府や民間航空局(GCAA)も、公式チャネル以外の情報に惑わされないよう再三呼びかけている。在UAE日本大使館も「複数の情報源から最新情報を入手するなど特別な注意を払う」よう求めている。この点について、取材に応じた日本人は「UAEが昔からSNS上のフェイクニュース規制に厳しかったのは、結果的に正しかったと証明された」と評価する。

◆崩れた「ドバイ安全神話」、残る者の覚悟

ドバイの安全神話は崩れたように思います。UAEが他のGCC諸国と比べてもやたらとミサイルを撃たれている数が多いのはショックです。ドバイを知らない人が数字だけを見たら、『めちゃくちゃ狙われてる』と思うでしょう。今後も残る傷跡になりますよね」