実際に数字で見ると、その衝撃は鮮明だ。3月17日時点でUAEに向けて発射された攻撃は計約2000発。UAE国防省は弾道ミサイル300発以上、ドローン1600機以上を迎撃したとしているが、パーム・ジュメイラ、ブルジュ・アル・アラブ、ジュベルアリ港、ドバイ国際空港と、ドバイの「顔」とも言える場所が軒並み被害を受けた。死者8名、負傷者157名(推計)。数字だけを見れば、かつて「世界で最も安全な都市」の一つに数えられたドバイのイメージは大きく毀損されたと言わざるを得ない。

それでも、この街にとどまる理由がある。個人で起業し、サウジアラビアなどのGCC諸国やローカル企業を顧客に持つ人々は「簡単には逃げられない。覚悟が試されている」という。大手企業に守られない立場だからこそ、残り続け、ときにはゴルフや飲み会をしながらも日常を維持しようとする。

「1日に2〜3発ミサイルや迎撃した破片が落ちるのは、もはやイランによる心理戦のようにも感じています。この時点では日常生活に支障はない。だけど10発、20発、50発となれば、当然、生存を意識します。そうなったらさすがに帰らないといけない」

この冷静な線引きが、戦時下のドバイに残る人間の判断基準だ。取材時点では、米国とイランの間で停戦交渉の動きも伝えられているが、双方の主張は食い違い、出口はまだ見えない。各国の思惑が錯綜するなか、ホルムズ海峡の封鎖は続き、湾岸諸国への散発的な攻撃も止んでいない。ドバイの戦時下は、まだまだ終わっていない。

<取材・文・撮影/横山了一>

【取材時期】2026年3月中旬(開戦約3週間後)
【注記】数値データは外務省海外安全ホームページ、UAE国防省発表、Wikipedia(2026 Iranian strikes on the UAE)、CSIS分析等に基づきます。

【横山了一】
フリーランスライター。世界各地を移動しながら、各国の経済・社会情勢を現地目線で取材・寄稿している。現在、中東に滞在中。