開幕4日前に支配下入り…指名漏れ経験、中日27歳ルーキーがNPBに行けた理由 2軍球団も好アシスト
27歳のシーズンに育成で中日入り、昇格果たした牧野憲伸
プロ野球は27日の開幕を前に、最後の戦力整備に動く球団があった。中日は昨秋の育成ドラフト1位で指名した牧野憲伸投手を支配下登録。23日にはNPBから公示され、背番号が3桁の「201」から「68」と若くなった。大学を出た後、独立リーグと2軍球団で計4年間腕を磨いてからのプロ入り。ドラフト指名には限界と見られることも多い25歳を超えて、なぜNPBに進むチャンスをつかめたのか。昨季所属したオイシックスの武田勝監督に聞いた。
左腕の牧野は北海道・帯広市の出身。白樺学園高時代にもドラフト候補として注目されたことがある。ただ高3の夏は腰を痛めて本来の投球をできず、甲子園行きも逃した。進んだ富士大では故障や新型コロナ禍があり、部員が200人近い中でうまくアピールできずに公式戦未登板のまま終わった。
卒業してからは独立BCリーグの信濃に進み、最多勝のタイトルを獲得したがそこでもドラフト指名漏れ。最後のチャンスと腹を決め、2024年にNPBの2軍イースタン・リーグへ参加したオイシックスのテストを受け入団した。2年間腕を磨き、ようやく育成ドラフトで指名を受けた。今春、中日では1軍キャンプでアピールを続け、オープン戦では7試合で1セーブ、防御率1.50という素晴らしい成績を残した。
牧野は今年9月には27歳となる、いわゆるオールド・ルーキーだ。昨秋のドラフトでオイシックスからは、他にも知念大成外野手が巨人の育成5位、能登嵩都投手が阪神の5位指名を受けた。知念は今季26歳、能登は25歳になる。皆、一度は諦めかけたプロの世界に飛び込めたのはなぜだったのか。
武田監督は「いつも言うけど、僕は27歳で行ったわけだから」と口にする。自身が立正大を出てから社会人野球のシダックスで5年間プレー。2006年に日本ハムに入団したシーズンには28歳を迎えるという超・遅咲き選手だった。その経験をもとに、言えることがある。
「僕もそうでしたけど、年齢じゃないんだと、上に行きたいという気持ちを前面に出せた選手だったと思うんです。それはもう出したもん勝ちなんですよ。自分の武器を毎試合アピールし続けて、これでダメならもう諦めるくらいの覚悟を持って挑んだ3人だったので。それが評価された結果だと思います。チームにもいい影響がありましたしね」
例えば大学を出て社会人野球で2年プレーすると、プロ入り1年目には25歳になる。この年齢を超えると、ドラフト指名が減るのは事実として存在する。選手もこの“ライン”は頭にある。記者も「もう無理なんですかね…」と進路に迷うドラフト候補を何人も見てきた。ただ25歳が本当にリミットなのかと言えば、そうではない。武田監督は言う。
遅咲きのプロ入り…最後の後押しは配置転換「残された時間で何を」
「そこで自分のような例もあると、伝えることはしましたかね。諦めるのは簡単だけど、やり続けたほうが、行けなかったとしても自分に残るものがあるはずだよと話をしているので。少しは彼らに届いたのかなとは思いますね」
その中で、牧野には首脳陣のアシストがあった。独立リーグ時代から、試合を作る能力には長けていた。オイシックスの1年目は先発ローテーションの中心で、23試合で3勝9敗、防御率4.24。チーム唯一の完封勝ちを記録するなど、序盤はリーグトップクラスの成績を残したが、後半は打ち込まれることが増えた。2年目も先発の一員としてシーズンインしたが、6月にリリーフ転向。140キロそこそこだった球速は「毎月1キロずつ」伸び、最後には153キロまで達した。全力でボールを叩き込む感覚を覚えて欲しいという武田監督の願いを、形にしてみせた。
「こっちもNPBに行って欲しいわけで、残された時間の中で何をできるかというのを考えさせられた1年でしたし、こちらの勉強にもなりました。いい方向にいってくれて本当によかった。調整法も体の管理も変わってくる。そういうのも、上に行くための勉強なんですよ」
今年も、役割を変えることで新しい自分を見つけてほしいと期待する選手がいる。楽天を戦力外となり加入した宮森智志投手は、先発に転向した。2022年にはリリーフとして、プロ初登板から22試合連続無失点という快記録を残したこともある右腕だ。オリックスを戦力外となり獲得した井口和朋投手も先発転向を予定していたが、開幕直後にメキシカンリーグのベラクルス移籍が発表された。
オイシックスにはこのオフ、NPB出身者が増えた。今季は勝率5割と、NPBなど上のステージへ5選手を輩出するという大きな目標を掲げている。指揮官としては、NPB復帰を目指す選手と、ドラフト指名を目指す若手の出場バランスに頭を悩ませる。
「ちゃんとリスペクトしながら、本人たちにしっかり確認していこうと思います。『今週どこ出たい?』とか。逆に出番を決めさせようかと。どの試合に合わせるとかこっちが決めるんじゃなく、逆に彼らにプレッシャーをかけていく方法ですね。そうすれば責任持ってその試合に準備してくれるだろうし、言いわけを作らせない状況を与えた方が意識してくれるんじゃないかなと思って」
チームの勝利を目指す先に、個人それぞれの目標があるのが2軍球団の特徴だ。勝利と成長の二兎を追うシーズンはもう、始まっている。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
