「薬物事案で逮捕の大物芸能人」マンションにガサ入れ…!警察官が目の当たりにした「ゴミ屋敷」惨状
前編記事では、最前線で重大事件と対峙し、幾人もの芸能人を挙げてきた元警視庁警部補の小比類巻文隆氏が芸能人が違法薬物を使用していた芸能人を逮捕する手順について語った。
そして、本記事では何度も薬物事案で逮捕されている大物芸能人のマンションにガサ入れした際の思い出を語る。
「清掃にいくらかかるんだよ……」
それで歌手の自宅マンションにガサ入れをしたんですが……言葉を失いましたね。海沿いに建つ高級マンションが「ゴミ屋敷」になっていたんです。
最上階の3部屋全部をその歌手が借りていました。マンションのベランダには仕切りがありますよね。非常時に蹴破って隣の部屋に逃げるための仕切りです。あれが全部ぶち抜かれていて、ベランダで全部屋に行き来できるようになっていたんですが、どの部屋も物で溢れていた。
そのうち一部屋を飼い犬専用にしていたようで、足の踏み場がないほど糞が転がっていました。吐き気がしましたね。
忘れもしないのが、真ん中の部屋。
ローション風呂があったんですよ。
バスタブの3分の1くらいまで乳白色のローションが注がれていて、中に黒いバイブが沈んでいました。思い出しただけで食欲が失せる光景でした。
ガサ入れにはそのマンションを管理している不動産会社の人間も同行したんですが、「あーあ、こんなにしちゃって」「なんだよ、これ」と嘆いていた彼が犬の糞だらけの部屋を見て、
「清掃にいくらかかるんだよ……」
と、絶句していたのを覚えています。
「薬物とセックス」といえば、私には四谷警察署での勤務経験もあるんです。
四谷署の管内には新宿2丁目があって、同性愛の薬物常習者の捜査をした際に被疑者が「性欲は強くなればなるほど同性に向かう」と言っていたのが印象的でしたね。その彼によれば「男女のセックスには″駆け引き″がある。男同士だと余計な″駆け引き″がないぶん、行為に集中できるんだ」とか。″駆け引き″が何なのかはわかりませんでしたけど。
泣く子も黙る麻薬Gメンだが、逮捕を見送ったケースも少なくない。いまもテレビで活躍している美形タレントもその一人だ。
薬物常習者の男を現行犯逮捕したら、その場にタレントの方がいたんです。
ただ、さっきの米倉さんじゃないけど、男はパンツの中に大麻を仕込んでいた。それだと共同所持で挙げるのは難しい。
当時はまだ、大麻の使用罪はなく、やるなら所持罪で持って行くしかなかった。尿検査をして反応が出たところで、逮捕はできないのです。車内をくまなく捜索しましたが、共同所持を裏付ける証拠は発見できなかった。だから、タレントの逮捕は見送りました。
芸能人を挙げれば手柄になる、バリューがあるから、無理筋でも逮捕する――現役時代、私が最も憎み、禁じていた行為です。要件を満たさぬ逮捕は私の信条に反するのです。
「六本木でドラッグパーティが開催されている」という情報を掴んだときもそうでした。いまもご活躍のロック歌手とヘビー級の格闘家が参加しているという話で、パーティにコンパニオンとして参加していた女の子をパクったんですよ。その子は、その場で覚醒剤を打たれて覚えてしまった。
渋谷で彼女を逮捕したときにはもう、ボロボロになっていました。ヤクザから覚醒剤をもらってセックスする日々を送っていた。携帯を見せてもらったら、具体的な参加者の名前こそ出てこなかったんですが、「六本木で何月何日にパーティの仕事」というメモが残っていた。
私たちが調べたドラッグパーティの日付と一致していました。だから、開催自体は間違いないと思ったんですが……その子がドラッグで壊れすぎていたんです。
証言に信憑性――というか、証拠能力を持たせられないくらいボロボロになっていて「これでは裁判を維持できない」と諦めざるを得なかった。
本人が知らないだけで命拾いしている芸能人は無数にいるんですよ。
『FRIDAY』2026年3月27・4月3日合併号より
(次号、「密輸、スパイ……闇組織との死闘」篇に続く)
