「往復5時間かけて通勤」という地獄に…郊外に〈5,300万円・庭付き一戸建て〉を買った37歳会社員。生活を一変させた、会社からの「まさかのお達し」

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コロナ禍をきっかけに広がったリモートワーク。しかし近年は「出社回帰」の流れが強まり、フルリモートを前提に家を購入した会社員の中には、「想定外」と深刻に悩んでいる人も。往復5時間を通勤に費やす佐藤さんの事例から、住宅ローンを抱えたまま揺れる家族の現実を見てみましょう。

5,300万円・庭付き一戸建てを購入も、まさかの展開

「思い切って買った家でしたが、まさかこんなことになるなんて」

そう肩を落とすのは、都内の小さなIT関連企業に勤める会社員・佐藤健一さん(仮名・37歳)。佐藤さん一家は3年前、郊外に念願のマイホームを購入しました。価格は約5,300万円。都心よりも広い土地と、ゆとりある間取りに惹かれて決めた戸建てでした。2人の子ども部屋も確保でき、庭では子どもが遊べます。

当時の決断を後押ししたのが「フルリモート勤務」でした。コロナ禍以降、佐藤さんの会社は在宅勤務を基本とする働き方に移行。出社は月に数回程度で、通勤の必要はほとんどありませんでした。

「それなら郊外でも問題ないよね、と夫婦で話して。子どもも小さかったので、広い家でのびのび育てたいと思ったんです」

こうして郊外に建てたマイホームで、新しい生活が始まりました。ところが昨年、状況が一変。会社から突然、「原則出社」への方針転換が発表されたのです。理由は社員同士のコミュニケーション不足や若手育成の難しさなど。業界全体でもリモート中心の働き方を見直す動きが出始めていました。

しかし、佐藤さんにとって通勤距離が大きな問題になりました。自宅から会社までドアツードアで片道およそ2.5時間。往復で5時間近くになります。

「実際にフルで通ってみましたが、正直きつかったですね。朝6時半には家を出て、残業すれば帰宅が23時を過ぎることもある。『それぐらい耐えている人はいる』と言われても、僕は毎日続けるのは厳しいと思いました」

佐藤さんは会社と相談し、当面の間は週3日出社、残り2日は在宅という形で勤務しています。それでも通勤の負担は大きく、出社の前日は会社から1時間圏内にある実家に泊まり、そこから通勤することも少なくありません。通勤規定上はグレーだと理解していても、体力的に仕方がない選択だといいます。

「いざというときは売る」と思っていたが…そうもいかない現実

パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」によると、2025年7月のテレワーク実施率は22.5%と、前年同期とほぼ同水準。リモートワーク自体は定着フェーズに入っているとみられます。

一方で、「リモートワークの頻度が減った」と回答した人は35.8%にのぼり、増えたとする回答を大きく上回りました。企業側で「出社回帰」の動きが広がっていることがうかがえます。

「出社回帰がここまで広がるなんて、当時は想像もしていませんでした。もちろん人生何があるかわからないので、『いざとなれば売って引っ越せばいい』とは、家を買う前に妻とも話していました」

佐藤さんは振り返ります。しかし、実際にその「いざ」が訪れると、そう簡単には動けませんでした。

「職場の近くに引っ越せば、子どもは転校になります。広い家を前提に家具もそろえてしまったので、都心近くの住宅では入りきらないかもしれない。転職すれば、年収が下がる可能性もあるわけで……」

35年ローンで組んだ毎月の返済は、ボーナス払いを含めて決して軽いものではありません。

「この生活は長く続けられないと思っています。ただ、どの選択をしても何かを諦めなければなりません。いざというときのことを突き詰めて考えていなかったのは痛恨です」

働き方が変われば、住まいの前提も揺らぎます。マイホームは人生の拠点である一方で、簡単には動かせない大きな資産でもあります。フルリモートを前提に選んだ家が、数年後には通勤の重荷になる――。住宅ローンという長い契約の中では、働き方の変化すら想定外とは言い切れないのかもしれません。